同調圧力が強いので。北陸に大事な「考える技術」(デザイン思考編)

2021.05.11

vol. 01

表に立つデザイン。裏方のプログラミング。

ちょっと前書き。

こんにちは。〈HOKUROKU〉ウェブディレクターの武井靖です。

 

前編のプログラミング的思考編に続き、デザイン思考編の取材・執筆も担当します。

 

前編で訪れた富山県射水市の中太閤山小学校では、プログラミング教育の様子を取材しました。

関連:同調圧力が強いので。北陸に大事な「考える技術」(プログラミング的思考編)

聞けば学校では、プログラミングそのものを教えるというより、プログラミングをツールにトライアル・アンド・エラーを繰り返させて、考える習慣だったり、創造性だったりを磨く機会を与えているのだとか。

 

言い換えれば、プログラマーが業務で行っている論理的で構造的な考え方、プログラミング「的」思考を、学びの中心としているわけです。

 

今回は同じ考える技術でも、話の中心にデザイン的な考え方が出てきます。

 

デザインと言えば、裏方で何かの流れをつくるプログラミングと違い、表に立ちUI(ユーザー・インターフェース)の部分で活躍する分野です。

 

ユーザー・インターフェースとは、何らかの機器が人と直接的に触れ合う接点を意味します。

 

例えば、私たちが暮らしの中で当たり前に使っているスマートフォン。

 

〈iPhone〉が歴史の始まりと思われがちですが、iPhone以前にもスマートフォンはありました。代表例は〈BlackBerry〉です。

 

初代〈iPhone〉(左)と〈BlackBerry 8707h〉(右)写真:Wikipediaより。

 

BlackBerryは当時、画期的な存在でした。従来の携帯電話とは異なり、携帯電話と同じ大きさの端末で、パソコンのようなインターネット利用が可能となったのです。

 

しかしBlackBerryの端末はあくまでもパソコンの延長で、多くのキーが並べられ、画面が小さかったり、ボタンが押しにくかったりと、使い勝手が悪く、一般的には広がりませんでした。

 

ユーザー・インターフェースとはこの場合、キーだったり、小さい画面だったりと、利用者が直接見て触れる部分になります。

 

その状況を一変させた商品が、iPhoneです。スマートフォンから多くのキーが排除され、画面が大きくなり、視認性と使い勝手が格段に良くなりました。

 

素晴らしい製品なのに多くの人に手に取られないBlackBerryの課題を、デザイン的なアプローチによってiPhoneがユーザー・インターフェースを変えて解決したのです。

 

もちろんiPhoneだけではなく、デザイナーたちはデザインの力で似たような問題を次々と解決しています。

 

キー(ボタン)を排除し画面を大きくして、視認性と使い勝手を格段に良くするような発想は、どのように生まれるのでしょうか。

 

今回のデザイン思考編では、このデザイナーたちの考え方の根っこに迫ります。

さまざまな取り組みの上流に立って、大枠からプロジェクトをデザインし続ける。

この問題について聞く相手として、誰が適任者なのでしょうか。北陸には素晴らしいデザイナーがたくさん居ます。

 

今回の特集では、北陸に根差しながら、デザイン思考で地域に大きなインパクトを与えている人に話を聞きたいと思いました。

 

しかも前編のプログラミング的思考の取材相手が富山でした。同じ北陸でも富山以外を拠点にしながら活躍するデザイナーがいいなと思いました。

 

なにしろ「HOKUROKUって、北陸とか言いながら、富山寄りだよね」と創刊以来、ずっと言われ続けているので。

 

富山以外の北陸で、地域の課題にデザイン思考でアプローチするデザイナーと言えば、真っ先に思い浮かぶ人が居ます。

 

福井県鯖江市にあるTSUGI代表の新山直広さんです。

 

新山直広さん。

新山さんと言えば、紙やウェブのデザインの他、〈RENEW〉という工房見学イベントをはじめ、福井のプロダクトを全国に伝える行商限定ショップ〈SAVA!STORE〉、集う人の目的に応じて多様なスペースとして利用できる〈PARK〉など、さまざまな場をデザインしています。

 

 

特にRENEWは、北陸のクリエイターならほとんどの人が知っているイベントで、毎年4万人近くを動員します。

 

紙だけ、建築だけなど、特定の業種に偏るわけではなく、さまざまな取り組みの上流に立って、大枠からプロジェクトをデザインし続ける新山さんこそ、今回の特集の取材相手に適任のはず。

 

しかし残念ながら、HOKUROKUの編集メンバーは誰も新山さんを知りません。

 

そこで編集部にも知り合いが多く、富山県南砺市で「職人に弟子入りできる宿」をコンセプトに、宿泊業や飲食業を展開する建築家の山川智嗣さんに相談して、紹介してもらいました。

関連:GNLの明石さん×BnCの山川夫妻と考える。「愛される場所」のつくり方。

一方で前編からの流れも考えると、取材の場にはプログラミング的思考のプロフェッショナルも必要なはずです。

 

もちろん筆者もプログラマーですが、より広く、より深い知見を得るために、金子雄一さんに声を掛けました。

 

金子雄一さん。写真:金子さん提供。

金子さんは、全世界で利用されているフリーソフトのリモートデスクトップアプリ〈Brynhildr(ブリュンヒルデ)〉を個人で開発したすごい人。

 

2012年(平成24年)には米マイクロソフト社がワールドワイドで展開するMVP(Most Valuable Professional)アワードのリモートデスクトップ・サービス部門で、日本人初の受賞者となりました。

 

さらに、400万ダウンロード突破の高品質通話アプリ〈SkyPhone〉の開発・サービス提供を手掛ける株式会社クアッドシステム(富山市)の代表取締役でもあります。

 

取材では、HOKUROKUのウェブディレクターである筆者(武井)とフォトグラファーの山本哲朗が、福井の鯖江市にある新山さんの会社TSUGIに足を運びました。

 

富山に居る金子さんには、オンラインでつながってもらいます。

 

結果として遅刻する形になりますが、HOKUROKU編集長の坂本正敬にも〈ZOOM〉で座談に参加してもらいます。

TSUGIのある河和田地区は、伝統工芸が集積するユニークな土地。

筆者は富山の西側に暮らしているせいもありますが、福井の嶺北(北部)に位置する鯖江市まで、高速道路で移動すると、すごく近く感じました。

 

TSUGIのある河和田地区は、のどかな風景の中に、越前漆器、越前打ち刃物、越前焼、越前箪笥などの伝統工芸が集積するとてもユニークな土地です。

 

過去にはHOKUROKUでも、河和田地区にある土直漆器に取材で訪れました。

関連:北陸3県で考える「コーヒー・タンブラー」のある暮らし。(調査編)

その時の取材では、近隣の山から水蒸気が上がっていたと、取材を担当したHOKUROKU編集長の坂本が言っていました。

 

取材で訪れた福井県鯖江市。

漆器の産地は、うるしを固める工程の関係上、湿度が大切だと聞きます。近隣の山から立ち上る水蒸気を想像し、風土や環境が工芸を支えているのだと、考えを深めた思い出があります。

 

TSUGIの入る建物。

カーナビがTSUGIに近付いたと知らせてくれます。注意深く周りを見ながら進みますが、看板や社名は見当たりません。

 

地図上で示された建物の入り口には〈錦古里漆器店〉の文字があります。

 

誤解を恐れずに言えば、建物はすごくレトロな外観です。全国に名を知られるクリエイティブカンパニーの社屋という印象ではありません。

 

正直に言えば「間違えたか?」とすら一瞬思いました。

 

しかし横の案内表示板を見ると〈TOURISTORE〉と書いてあります。

 

 

TOURISTOREはショップ・漆器工房・観光案内所・デザイン事務所・レンタサイクルなどが入る、福井のものづくりとデザインを体験できる小さな複合施設です。

 

インタビューはこの建物の中で行われました。

 

取材では漠然と話し合っても盛り上がりに欠けそうだったので、3つのテーマをお題に、デザイン思考・プログラミング的思考の接点と違いを探るつもりで用意してきました。

 

 

オフィスの一角に通され、それぞれに自己紹介を終えると、いよいよインタビューのスタートです。まずは地方の課題である人口減少をテーマに話を聞きました。その様子を、次の回からお届けします。

 

(編集長のコメント:TSUGIのある鯖江市について、ちょっとだけ補足します。北陸に暮らしていても、鯖江=眼鏡というイメージで終わっている人も少なくないと思います。

 

鯖江市を含む河和田地区は、伝統工芸の産地が全国的に見てもびっくりするくらい集まっているエリアです。

 

かつてHOKUROKUでは、金沢市に移転してきた国立工芸館の館長を取材しました。

関連:国立工芸館の唐澤館長に聞く。北陸の「工芸を巡る旅」のすすめ。

文章には詳しく書かれていませんが、その時も越前和紙や越前漆器・越前打ち刃物などの伝統工芸が集積する河和田地区について話が及びました。

 

伝統工芸を愛好する人たちにはもともと知られていた河和田地区。

 

この一帯で受け継がれてきた工芸にデザインの視点を加え、持続可能な「次」の地域づくりを目指すTSUGIの活動を1つの大きなきっかけにして、同地が全国的に注目を集めてきたのですね。

 

そんなTSUGI代表の新山さんに今回は会いに行きました。ぜいたくにも、その会話に北陸トップレベルのプログラマーである金子さんにも参加してもらいます。

 

その座談の様子が次の回からスタートします。ぜひ続けて読んでみてくださいね。)

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