雪国北陸の雪かき・雪下ろし方法と道具:自衛隊が語る雪対策と地元民の知恵

2021.01.11

第2回

命綱の結び方

 

富山市の中心部にある〈HOKUROKU〉事務所から見えるまちの建物の屋根には1m以上の雪が積もっています。

 

北陸各県の特別豪雪地帯に指定される山間部ではもっと積雪があるため屋根の雪下ろしが急務になっているみたいです。

 

富山県南砺市には妻の実家があります。家族の見守りの中で義理の父が屋根へ上り雪を下ろしたとの連絡もありました。

 

内閣府の情報によれば、除雪中の事故として屋根からの転落が多いといいます。

 

似たような状況として、用水路や融雪槽に雪を投げ入れようとした際に作業者が転落する事故も起きています。

 

融雪槽への転落は、発見までに時間がかかるため死に至るケースも多いとされています。

 

転落を避けるためには、自分の体をどこかに命綱でつなぐ必要も出てきます。しかし、専用の道具がない場合、どのように命綱を用意すればいいのでしょうか。

ロープがあれば事足りる

動画投稿サイト〈YouTube〉に自衛隊が投稿した動画〈自衛隊式!正しいロープの結び方③「命綱の結び方」〉によると「ロープが1本あれば事足りる」との話。

 

「ロープがあれば事足りる」と簡単に書きましたが私の家にはロープはありません。あくまでも、ロープが身近にある人向けの技術です。

 

 

ロープを命綱にする手順は以下のとおりです。

  1. 確実に体を固定できる何かを探す
  2. 固定できる何かと体をもやい結びする
  3. 何かと結んだロープの反対端と自分の体を緩くもやい結びする

もやい結びとは、船をもやう(船と船をつなぎ合わせる)結び方です。

 

HOKUROKUの取材でかつて漁師町を取材した時、運河の護岸に漁船がつながれていました。今思えば、もやい結びだったのでしょうか。

関連:ヒットメーカーの漁師さんが地域の魚から価値を生む「ブランディング」の方法

係留されている漁船は、水面の揺れとともに、きしむような音を響かせていました。それでも、太いロープで確実につなぎとめられているので護岸から船体が離れません。水の流れに引っ張られても解けないのですから命綱として強度を十分に計算できます。

 

もやい結びの方法。〈いらすとや〉より

自衛隊 LIFEHACK CHANNELにも、もやい結びの方法が公開されています。イラストで理解しにくい人は併せて参考にしてください。

 

 

晴れの日に行う雪下ろし、および除雪に注意

屋根の雪下ろし、および融雪槽への除雪には注意点が他にもあると内閣府が情報を発信しています。

  • 2人以上で作業する(何かが起きた場合すぐに救助に入れるように)
  • 携帯電話を持つ(助けを呼べるように)
  • 作業の開始時、終了時、および疲労時は特に注意する(集中力、および注意力が下がるため)
  • 建物の周りに雪を残して屋根の雪下ろしをする(転落した際のクッションになるように)
  • 低い建物の屋根であってもヘルメット、および命綱を用意する(集中力、および注意力が下がるため)
  • 晴れの日に行う雪下ろし、および除雪には注意する(雪が緩んでいる)

HOKUROKUの編集者・中嶋麻衣さんの家も富山の雪深い地域にあります。除雪のために彼女の父親が今回の豪雪では久々に屋根へ上ったのだとか。その父親から、

 

「全ての雪を下ろすとすべる。数十センチの雪をかわら屋根に残しながら不要な雪を下ろす」

 

と教えてもらったそうです。暮らしのノウハウが親子間で口伝される、雪国ならではの光景だと思いました。それだけ、価値のある情報だとも言えそうです。

 

大坪副編集長のコメント:多くの人の暮らしが今回の豪雪で深刻な影響を受けました。しかし、普段からすると考えられないようなコミュニケーションが至るところで生まれている気もします。

 

スタックした車を見知らぬ人同士が助け合ったり、荒れた歩道を行く歩行者同士がねぎらいの言葉を交わしたり。

 

大変な目に遭っている人には怒られてしまいそうな発言ですが、こういう状況を「災害ユートピア」と呼ぶそうです。ささやかながらプラスの側面が豪雪にもある、そんな気持ちになりました。

 

自動車に積もった雪の取り除き方を次回ではまとめます。)

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