移住者にも地元民にも。自衛隊式「雪かき」の作法。

2021.01.11

第1回

雪かきの作法。

写真:<Photo AC>より。

北陸でも自衛隊法第83条に基づき、福井県知事、富山県知事から自衛隊に対して、災害派遣要請がされました。

 

テレビの報道で自衛隊の車両が北陸に向かっている姿を見た時、正義の味方が現れた感じがして、「ああ、もうこれで大丈夫」と安心できました。さすがですよね。

 

ただ、素朴な疑問として、豪雪地帯で災害救助にあたる自衛官は、どのように雪かきをしているのでしょうか。日々、訓練を怠らない彼ら・彼女らであれば、雪かきのような何気ない動作にも、素晴らしいノウハウがあるはずです。

 

その技術を北陸の普通の人たちが身に付けられたとすれば、もっと雪国の暮らしにゆとりが出てくるに違いありません。さらに言えば、地域の子どもたちが熱狂するくらいの巨大なかまくらやすべり台をつくる際にも、役立つはずです。

四角く区切ったキューブ状の固まりをすくい上げ、地面と水平に投げる。

以上のような考えから自衛隊について調べ始めると、近年、自衛隊は暮らしに役立つサバイバル技術についての情報を、書籍や動画投稿サイト<YouTube>を通じて、盛んに発信していると気付きます。

 

例えば書籍では防衛省・自衛隊著<自衛隊防災BOOK>(マガジンハウス)が出版されていますし、YouTubeでは自衛隊、および自衛官をもっと身近に感じてもらうための広報活動の一環として、<自衛隊 LIFEHACK CHANNEL>が開設されています。

 

この中には、雪国の暮らしに即戦力で役立つ情報もたくさん見られます。例えば、先ほどの素朴な疑問「雪かきはどうしている?」に正面から答えてくれる動画<自衛隊式!雪かきの作法>もあります。

 

自衛隊は当然、豪雪地帯での災害や大規模な事故の救助活動の際に、組織的でスピーディーかつ効率の良い雪かきが求められます。そのため、作業の際には雪かき用のシャベル、雪かきの方法に、やはり決まりがあるのだとか。

 

<HOKUROKU>の記事に埋め込んだ上の動画によれば、自衛官が現場で使用するシャベルは、少なくとも2種類存在していると分かります。

  • 小型で先がとがったシャベル・・・細かい作業や硬い雪を崩す時に使用する。
  • 大きな角型シャベル・・・雪かきに使用する。

角型シャベルによる雪かきについては、次のようなノウハウも紹介されています。

  1. 雪面に真四角を描くように、シャベルを4回突き刺し、頭部(すくい部)の面積と同じ大きさくらいの区切り線を付ける。
  2. 四角く区切ったキューブ状の固まりを、シャベルですくい上げる。
  3. 高く投げ上げず、地面に沿うように、2m先を目掛けて水平に投げる。

このノウハウにのっとって、実際に筆者(HOKUROKU編集長の坂本と言います)も、家の前で壊滅的な状況を見せる駐車場の除雪と、さらに家から近所の大きな公園に子どもを連れて行くためのルート確保で、試してみました。

 

今まではシャベルの頭部(すくい部)にこんもりと雪を乗せ、上腕の力こぶをフル稼働させて、足腰に負担を強いながら雪かきをしていました。

 

しかし、キューブ状の雪を細かくすくって水平に投げる方が、足腰に負担が少なく、長時間、スピーディーに作業を継続できると感じました。

 

自衛官のような屈強な人たちはもちろんですが、かえって高齢の人、足腰の健康に不安がある人にこそ、自衛隊式の雪かきが適しているのかもしれません。

 

さらに言えば、欲張って雪をすくうと、プラスチック製のショベルの場合は、壊れてしまいますよね。

 

キューブ状に区切って雪かきすれば、ショベルの頭部(すくい部)が破損する心配も少なくなります。

 

新雪はもちろんですが、駐車場と歩道の境界、屋根から落ちた家屋の周りの雪山、融雪装置の水を吸った雪など、重く締まった雪を処理する場合にも、自衛隊式の雪かきは見事な効果を発揮してくれました。

 

写真:Photo ACより。

本題よりも長い補足です。不要な人は容赦なく読み飛ばしてください。

ちなみに、この文章を書いていて、物書きを本職とする筆者として恥ずかしい限りですが、関東と関西で「スコップ」と「シャベル」の意味が違うと知りました。

 

関東で生まれ育った筆者からすれば、大きいやつ「スコップ」>小さいやつ「シャベル」です。しかし関西の人たちからすれば、小さいやつ「スコップ」<大きいやつ「シャベル」なのだとか。

 

肝心の北陸では、テレビ金沢などの番組情報によると、両者が入り混じって使われているとの話です。

 

写真:Photo ACより。

もともとスコップはオランダ語で「schop」、シャベルは英語で「shovel」です。染谷裕著の論文「類義語の混乱 : 『シャベル』と『スコップ』の昭和史」によれば、どちらも幕末には入っていた言葉だと言います。

 

HOKUROKUの翻訳監修をするアメリカ人のRory Baskinさんに聞くと、英語「shovel」は「長い柄+先のとがった金属の頭部(すくい部)からなる道具(※筆者が日本語訳)」を意味します。

 

英語には「spade」という似た言葉があり、 そちらの意味は「短い柄+頭部(すくい部)が角型の道具」を意味するそう。まさに日本で言えば、農機具のすきの形をした道具です。

 

しかし、<Cambridge Dictionary>の蘭英辞典を見ると、オランダ語の「schop」には、英語の「shovel」「spade」の両方の意味が含まれるらしいです。

 

この辺りの紛らわしさが、日本に「輸入」された後に、混乱や揺れをもたらしたと考えられます。

 

さらに言えば、英語には「scoop」(読みはスコップではなく、スクープ)という別の似た言葉もあります。Rory Baskinさんによれば、

 

「スプーンに似た道具で、短い柄と深い頭部(すくい部)がある。アイスクリーム用の道具が一番いい例かも(※筆者が日本語訳)」

 

との話。<B-R サーティワンアイスクリーム>で、店員がアイスクリームをすくってくれるあの道具こそが、「scoop」です。

 

国内では時代の流れとともに、オランダ語の存在感が英語に追いやられ失われていったと考えられます。

 

その過程で、本来「schop」だったはずの「スコップ」が、英語の「scoop」と混同され、関西で「スコップ」=「園芸や子どもが砂場で使う小さい道具」と定着した一因になったのかもしれません。

 

いずれにせよ今回の特集では、自衛隊の表記「シャベル」に従いました。

 

(編集部コメント:本題とは関係のない、長すぎる余談、失礼しました。次は屋根の上など、高い場所での雪かき・雪下ろしで必要な、自衛隊式・命綱の結び方を紹介します。)

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