雪かきの作法
自衛隊法第83条に基づき、福井県知事・富山県知事から自衛隊に対して災害派遣要請がされました(※執筆時点の内容です)。
北陸に向かう自衛隊の車両をテレビの報道で見た時、正義の味方が現れた感じがして「ああ、これでもう大丈夫」と安心できました。さすがですね。
ただ、素朴な疑問として、豪雪地帯で災害救助にあたる自衛官はどのように雪かきをしているのでしょう。訓練を怠らない彼ら・彼女らであれば雪かきにも素晴らしいノウハウがあるはずです。
北陸に暮らす人たちがその技術を身につければ、雪国の生活にもゆとりが出てくるに違いありません。さらに言えば、地域の子どもたちが熱狂するくらいの巨大なかまくらやすべり台をつくる際にも役立つはずです。
キューブ状の雪の塊を水平に投げる
以上のような考えから自衛隊について調べてみると、暮らしに役立つサバイバル技術について自衛隊が盛んに情報発信していると気付きます。
書籍としては、
防衛省・自衛隊著〈自衛隊防災BOOK〉(マガジンハウス)
が出版されています。自衛隊、および自衛官を身近に感じてもらう広報活動の一環として
〈自衛隊 LIFEHACK CHANNEL〉(YouTube)
も開設されていました。
雪国の暮らしに即戦力で役立つ情報もたくさん見られます。「雪かきはどうしているの?」という先ほどの素朴な疑問に正面から答える動画「自衛隊式!雪かきの作法」もありました。
豪雪地帯での災害や大規模な事故の救助活動の際に、スピーディーかつ効率の良い組織的な雪かきを自衛隊隊員は求められます。当然ながら、雪かき用の道具・方法に関する決まりがあるのだとか。
〈HOKUROKU〉の記事に埋め込んだ上の動画によると、自衛官が現場で使用するシャベルは少なくとも2種類存在すると分かります。
- 先のとがった小型シャベル・・・細かい作業、および硬い雪を崩す時に使用
- 大きな角型シャベル・・・雪かきに使用
角型シャベルによる雪かきについては次のようなノウハウも紹介されていました。
- シャベルを雪面に4回突き刺して真四角の区切り線を付ける
- 四角く区切ったキューブ状の雪の塊をすくい上げる
- 地面に沿うように2m先を目がけて水平に投げる
HOKUROKU編集長の私・坂本も、壊滅的な状況を見せる駐車場の除雪と、近所の大きな公園へ子どもを連れて行く際のルート確保で、このノウハウを実践してみました。
結論から言えば、抜群の効果と効率性を発揮してくれました。
キューブ状の雪を細かくすくって水平に投げる方が足腰に負担が少なくスピーディーに作業を継続できると試してみればすぐに分かります。
1回の雪かきで無理せずに、キューブ状に区切ってから雪かきすると、強度に劣るプラスチック製のシャベルでも、破損のリスクが少なくなります。
自衛官のような屈強な人たちはもちろん、高齢の人や足腰の健康に不安がある人こそ、自衛隊式の雪かきは適していると思いました。
駐車場と歩道の境界に積み上がった雪、屋根から落ちた家屋の周りの雪山、融雪装置の水を吸った雪など、重たく締まった雪を処理する場合にも見事な効果を発揮します。
次のページ以降では、細かい技術ごとに情報をまとめています。早速試してみてください。
言葉の定義に関する補足(お急ぎの方は飛ばし読みを)
ちなみに。今回の特集では、雪かきに使用する除雪道具を「シャベル」と統一して表記します。
「スコップ」と「シャベル」の意味が関東と関西で違うと、この文章を書くにあたって初めて知りました。
関東で生まれ育った私にとって、土を掘るまたは雪かきをする際の大きい道具はスコップです。園芸用・砂遊び用の小さい道具がシャベルです。
しかし、関西の人からすれば真逆らしく、園芸用・砂遊び用の小さい道具がスコップ、土を掘るまたは雪かきをする大きい道具がシャベルなのだとか。
テレビ金沢などの番組情報によると北陸では、両者が入り混じって使われているとの話。
スコップはオランダ語で「schop」。シャベルは英語で「shovel」です。染谷裕の論文〈類義語の混乱 : 「シャベル」と「スコップ」の昭和史〉によると幕末にはどちらも日本に入っていた言葉だと言います。
〈Cambridge Dictionary〉蘭英辞典を見ると、オランダ語の「schop」には、英語の「shovel」「spade」の両方の意味が含まれると書かれています。
そうなると、スコップもシャベルも同じ意味になってしまいます。どう解釈すればいいのでしょう。
細かい話は別の機会で調査します。今回の特集では、自衛隊の表記に従い、雪かきに使用する柄の長い除雪道具を(先端の形状にかかわらず)「シャベル」と表記します。
(大坪副編集長のコメント:本題とは関係ない補足、失礼しました。屋根の上など高い場所での雪かき、および雪下ろしで必要な命綱の結び方を次は紹介します。)
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