法律家の「謎解き」。弁護士Iからの挑戦状。(ふるさと納税編)

2020.08.19

第3回

徹底抗戦。

※写真はイメージです。Woody Hibbard〈flickr〉より。

事の経緯その2。

泉佐野市の「目に余る」行動に対して、総務大臣の助言だけでは足りないと考えた国は2018年(平成30年)の冬、〈ふるさと納税〉制度の趣旨をゆがめられないように制度を見直す方向性を示す。

 

2019年(平成31年、令和元年)の2月8日、新しい制度のふるさと納税の対象となる自治体を「基準に適合すると総務大臣が指定した自治体に限る」との地方税法改正案を内閣は閣議決定する。

 

内閣から国会へ法案は提出された。

 

過度な返礼品の提供や宣伝広告する一部の自治体にふるさと納税が集中している状況を正すため、国会の審議では制度を見直すと説明された。

 

同年3月27日に法案は成立し、「基準に適合すると総務大臣が指定した自治体に限る」との指定制度が同年6月1日から施行された。

著しく多額の寄付金を受領した自治体。

新制度のふるさと納税に参加するためには3つの基準を満たす必要がある。

  1. 総務大臣の定める寄付金の募集の適正な実施に係る基準
  2. 返礼割合は3割以下
  3. 地場産品として総務大臣が定める基準

ふるさと納税本来の趣旨を取り戻すため、法的な拘束力を持つ制度をつくろうとしたわけである。

 

ここから問題は始まった。

 

1の基準(募集適正基準)において総務大臣は次の細かな条件を定めた。

 

「2018年11月1日から指定の申出書を提出する日までの間に、ふるさと納税の趣旨に反する方法により寄付金の募集を行い(中略)著しく多額の寄付金を受領した自治体でないこと」

 

要するに、著しく多額の寄付金を過去に集めてきた泉佐野市を締め出す内容である。

 

「これからの返礼品ではやり過ぎは駄目」と新ルールをつくっただけでは終わらず、総務省の「助言」に「お利口に」従ってきた自治体だけが新ふるさと納税に参加できると新ルールには付されたのだ。

 

新しいふるさと納税から同市を締め出すために「今まで趣旨に沿った方法で寄付金を募集してきた自治体に限って、これからもふるさと納税制度の適用を認める」と定めたとも考えられる。

 

「お利口に」してこなかった泉佐野市は苦境に立たされる。

いよいよ舞台は法廷へ。

2019年(平成31年・令和元年)新しいふるさと納税の制度に泉佐野市が申請すると、上述の基準に適合しないなどの理由で案の定参加が認められなかった。

 

不服に感じた泉佐野市は国と地方の争い事を解決する国地方係争処理委員会に審査を申し出た。

 

「不指定の決定は違法の可能性がある」として泉佐野市の主張を委員会はほぼ受け入れ、同年9月3日に総務大臣に再検討を勧告する。

 

泉佐野市の言い分が正しいと判断されたのだ。

 

ところが同年の10月3日、国地方係争処理委員会の勧告を総務省は拒絶する。「制度の趣旨を踏まえれば過去の寄付集めを考慮して当たり前だ」と主張し、徹底抗戦の構えとなった。

 

国に対して不指定の取り消しを求め泉佐野市は同年11月1日に提訴する。いよいよ舞台は法廷へ移っていった。

 

(編集長のコメント:次は第4回。伊藤建からの出題に続きます。)

内閣総理大臣を中心に内閣の会議で行った意思決定

2000年(平成12年)総務省に設置された合議制の第三者機関。https://www.soumu.go.jp/main_content/000548518.pdf

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