世界の豪雪都市に学ぶ。暮らしの「雪遊び」

2021.02.09

No. 02

いい大人がそりすべりしている

撮影:坂本正敬

 

この連載第1弾のタイトルには「雪遊び」という言葉があります。雪遊びと言われたらどんな遊びを思い浮かべますか?

 

雪合戦・雪だるまづくり・かまくらづくり・そりすべりなどでしょうか。

 

2021年(令和3年)初めの大雪直後も、まち中にある公園内の傾斜や河川敷きの土手の傾斜を利用して、子どもたちが楽しそうにそりすべりをしていました。わが子も一緒です。

 

しかし、これらの遊びは見方によって「子ども向け」とも言えるかもしれません。子ども抜きで、若いカップルがデート中にそりすべりをしたという話を聞きません。

 

世界の豪雪都市ケベック・シティ(カナダ)に行くと一方で、まちのど真ん中でいい大人が行列をなしてそりすべりを楽しんでいる光景に出くわします。

 

まちのシンボルのような空間に大人も楽しめる本格的なコースをつくってそり遊びする伝統が100年以上も前から続いているからですね。

 

そりすべりを見守りながら、順番待ちをする大人たち。撮影:坂本正敬

ケベック・シティで言うと、Fairmont Le Château Frontenac(フェアモント・ル・シャトー・フロントナック)というホテルの目の前にある展望広場に全長100mを超す巨大なそりが登場します。

 

Fairmont Le Château Frontenac(フェアモント・ル・シャトー・フロントナック)の目の前にある展望広場。写真右手の建物がホテル。撮影:坂本正敬

この遊びの始まりは1884年(明治17年)。地元の人たち・観光客に関係なく、圧巻の展望を眺めながら時速70kmにも達するそりすべりを多くの人が今でも楽しんで騒いでいます。

 

スタート地点に立つと、大西洋に流れ込むセント・ローレンス川が向かって右手に一望できます。まちのシンボルであるFairmont Le Château Frontenacも左手に見えます。

コースのスタート地点付近からの写真。Quebec Cityの公式ホームページより引用。https://www.quebec-cite.com/en/what-to-do-quebec-city/snow

歴史あるまち並みが眼下に広がり、その景色に向かって専用のそりをすべらせると自然に笑顔になり、腹の底から声が出てきます。

 

そりが減速を始めるころには順番を待つ人たちの笑顔が目に入り、二言三言の会話が生まれます。

 

ケベック・シティは10,300kmほど北陸から離れています。その異国の地でそりすべりした直後に「北陸の都市の冬にはいい大人が大声で笑って叫べる仕掛けが少ないな」と感じました。

県庁所在地のど真ん中に巨大なそりのコースをつくるなんてどう?

ケベック州最大のまちモントリオール。手前の低い建物が密集するエリアが旧市街地。撮影:坂本正敬

大人向けのそり遊びは、ケベック・シティだけに見られるアトラクションではありません。同じケベック州にある隣まち・モントリオールでも体験できます。

 

モントリオールの旧市街地にあるジャック・カルティエ広場では〈モントリオール・アン・ルミエール〉という冬のフェスティバルが開かれます。全長110mの巨大そりコースがその期間中には広場に登場します。

 

「完全に観光客向けじゃないの?」と思うかもしれません。しかしそり遊びを体験した時にコースが隣りだった若い女性たちに声を掛けると彼女らは地元の人だと知りました。

 

もちろん、北陸の都市が何もやっていないわけではありません。

 

福井駅前にあるハピリンの屋根付き広場〈ハピテラス〉にはスケートリンクが登場します。富山市も、中心部の〈グランドプラザ〉にスケートリンクができて毎年多くの人を集めています。

 

「まち中にスケートリンク」という発想は(担当者に確認していませんが)、米ニューヨークのロックフェラーセンターを筆頭に、緯度の高い各国の都市で楽しまれるまち中でのスケート遊びからヒントを得ているのかと思います。

 

カナダのオンタリオ州トロント郊外にある〈カナダズ・ワンダーランド〉のスケートリンク。撮影:坂本正敬

ならば、同じように、世界の別の成功事例から学び、北陸の県庁所在地のど真ん中に、時速70kmのスピードが出る巨大なそりのコースをつくるなんてアイデアがあってもいいのではないでしょうか。

 

副編集長のコメント:スノーボードやスキーなど冬のアクティビティは郊外でしか楽しめない印象が強いのではないでしょうか。

 

ケベック・シティやモントリオールの暮らしを見ているとまち中でも十分に楽しめる可能性が感じられます。

 

とはいえ、巨大なそりのコースをすぐにつくれるわけではありません。北陸でもやろうと思えばすぐにできそうな「大人の雪の遊び方」を次回はお伝えします。)

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