北陸のまちには「世界で最も」雪が降る。
富山城址公園。撮影:坂本正敬。
アメリカ東部のペンシルベニア州には1962年(昭和37年)創業の気象情報会社・AccuWeatherがあります。
日本のウェザーニューズ社のお手本のような存在で、世界の気候に関する情報をテレビ・ラジオ・新聞・ウェブメディアで発信し続けている民間総合気象情報サービス会社です。
その米AccuWeather社が「人口が10万人以上存在する都市で最も降雪が多い場所はどこか」を独自にリサーチしました。
調査対象はもちろん日本を含む全世界です。
あくまでも人口10万人以上が存在する「都市」で最も降雪が多い場所はどこかという内容ですね。
アメリカ西部ワシントン州にあるデナリ山など、人のほとんど住まない山奥の豪雪地などは対象から除かれています。
米AccuWeather社は調査の結果を受けて、最も降雪が多い世界の都市ランキングをつくりました。「世界の豪雪都市トップ3は?」と聞かれたらどこを思い浮かべますか?
「北欧の都市のどこか?」
「カナダとかの都市じゃない?」
などの意見が出てくるかもしれませんが、世界で最も降雪が多い都市ランキングの第3位には北陸の富山市が入っています。
しかもトップ3を日本の都市が独占しています。第1位は青森市、第2位が札幌市、第3位が富山市です。
同調査のトップ10まで見ると第7位には秋田市も入っています。
2021年(令和3年)初めの富山市の様子。撮影:坂本正敬。
要するに、日本列島の日本海に面した都市は「雪が多い」のではなく「世界で最も雪が多い」のですね。
〇世界の豪雪都市ランキング(米AccuWeather社調べ)
第1位・・・青森市
第2位・・・札幌市
第3位・・・富山市
第4位・・・St. John’s(カナダ・ニューファンドランド&ラブラドール州)
第5位・・・Quebec City(カナダ・ケベック州)・Syracuse(アメリカ・ニューヨーク州)
第7位・・・Saguenay(カナダ・ケベック州)
第8位・・・秋田市
第9位・・・Rochester(アメリカ・ニューヨーク州)
第10位・・・Buffalo(アメリカ・ニューヨーク州)
どうせなら楽しんでしまえ。
世界に目を転じると、カナダとアメリカ東部の都市が日本以外では並んでいます。
例えば4位には、カナダの東端ニューファンドランド・ラブラドール州の州都であるセント・ジョンズが入っています。
セント・ジョンズは入り江に面した傾斜地にイギリス人が入植しカラフルなまち並みを築きました。カナダ最東端にして「最古」とも言われる美しい場所です。
セント・ジョンズ。撮影:Loozrboy〈flickr〉より。
ランキングの第5位には、同じくカナダの東部ケベック州の州都ケベック・シティも入っています。
ヨーロッパ人の中でもフランスからの入植者の影響が強く、カナダでありながらフランス語が公用語というユニークな歴史都市です。
ケベック・シティのまち並み。撮影:坂本正敬。
今回のお手本は、そのケベック・シティに暮らす人たちの雪国暮らし。
その理由は、第3位にランクインした富山市と人口が似ているからです。他のランクインした都市はどこも10万人ちょっと。しかしケベック・シティには54万人以上が暮らしています。
北陸の金沢市や富山市と人口が似たような1 まちでありながら富山市と同じく世界で最も雪が降るまちランキングの上位に入っているわけです。
ケベック・シティを州都とするケベック州に暮らし、フランス語を母国語として話す人たちを「ケベコワ」と呼びます。
関東で生まれ育ったHOKUROKUの編集長の私・坂本が北陸へ引っ越して10年くらいが経過し、ちょうど雪国生活も板に付いてきたころ、この「ケベコワ」を取材する経験がありました。
彼ら・彼女らの冬に対するスタンスを目の当たりにした私は、カルチャーショックを受けました。彼ら・彼女らの暮らしぶりは物珍しさを超えて感動的ですらあったのです。
ケベック・シティと同じケベック州のモントリオールの様子。撮影:坂本正敬。
北陸の人からすると雪深い冬はきっと「我慢」の季節です。しかし「ケベコワ」たちは異なるスタンスで冬と向き合っていました。
「雪が降るのは仕方ない。どうせ避けられないのなら楽しんでしまえ」という人生哲学が市民一人一人の意識に深く根付いていて、子どもはもちろんいい大人も暮らしの中で雪のある生活を楽しんでいるのです。
ケベック・シティ郊外に冬季限定で登場する〈アイスホテル〉。撮影:坂本正敬。
全部とは言いません。丸ごと同じようにとも言いません。しかし彼ら・彼女らの人生哲学には北陸でも参考にできる部分が何かしらあるのではないかと現地で過ごしている時に感じていました。
このように書くと筆者の脳内には「You may say I’m a dreamer.」(夢みたいな話ばかりするやつだなとあなたは言うかもしれない)というジョン・レノンの歌声が聞こえてきます。
「気質が違う」「この我慢強さが私たちの良さなのよ」と異なる意見を口にする北陸の人の顔も何人か思い浮かびます。
しかし北陸と同じくらい雪が降る暮らしの中で雪を生かし楽しく暮らしている人たちも世界には現に居るわけです。
ケベック・シティ郊外の凍った湖の上で犬の散歩をする市民。
雪をただひたすら「邪魔もの」扱いするのではなく「天の恵み」と考える愉快な気持ちを北陸に暮らすわれわれがちょっとくらい持っても罰はあたらないのではないか、そんな風に思います。
なにしろ、これほど雪に恵まれたまちは世界になかなか存在しないのですから。
(副編集長のコメント:世界の都市の降雪量ランキングに北陸の都市がランクインしている事実をご存じでしたか?
雪を邪魔ものとして捉えるか生活を豊かにする資源として捉えるかで暮らしは大きく変わりそうです。
北陸の都市と人口規模がそこまで変わらないケベック・シティから雪とともに生きる都市のあり方を次回以降で学びます。)
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