世界の豪雪都市に学ぶ|雪国暮らしと雪遊びの楽しみ

2021.02.08

No. 01

世界で最も雪が降る都市は日本列島の日本海側に

2021年(令和3年)初めの富山市の様子。撮影:坂本正敬

 

アメリカ東部のペンシルベニア州には1962年(昭和37年)創業の気象情報会社AccuWeather社があります。

 

日本のウェザーニューズ社(本社:千葉県千葉市)のお手本のような存在で、世界の気候に関する情報をテレビ・ラジオ・新聞・ウェブメディアで発信し続ける民間総合気象情報サービス会社です。

 

そのAccuWeather社は「人口10万人以上が暮らす都市で最も降雪が多いまちはどこか」を独自にリサーチし2016年(平成28年)に公表しています。

 

あくまでも、人口10万人以上が存在する都市の中で最も降雪が多い場所はどこかという内容で、アメリカのアラスカ州にあるデナリ山など、手つかずの自然が残る豪雪地などは対象から除かれています。

 

以上を踏まえて「世界の豪雪都市トップ3は?」と聞かれたらどこを思い浮かべますか?

 

「北欧の都市のどこか?」

「カナダとかの都市じゃない?」

 

などの意見が出てくるかもしれませんが、世界で最も降雪が多い都市ランキングの第3位に、われわれの暮らす北陸の都市が入っています。

 

さらに言えば、日本の都市がトップ3を独占しています。第1位は青森市、第2位が札幌市、第3位が富山市です。

 

同調査のトップ10まで見ると第8位には秋田市も入っています。

世界の豪雪都市ランキング(AccuWeather社調べ)

1位:青森市

2位:札幌市

3位:富山市

4位:St. John’s(カナダ・ニューファンドランド&ラブラドール州)

5位:Quebec City(カナダ・ケベック州)・Syracuse(アメリカ・ニューヨーク州)

7位:Saguenay(カナダ・ケベック州)

8位:秋田市

9位:Rochester(アメリカ・ニューヨーク州)

10位:Buffalo(アメリカ・ニューヨーク州)

このランキングは、AccuWeather社の気象専門家チーム提供のデータ、日本の気象庁のデータ、カナダのThe Weather Networkからのデータを利用して作成されています。

“All research was conducted utilizing data and referrals from AccuWeather’s team of meteorologists and from information obtained from the Japan Meteorological Agency and The Weather Network.” (AccuWeather社のホームページより引用

そのため、日本、カナダ、アメリカの都市がランキングに多く含まれている点が気になります。他の調査方法では、異なる結果が出るだろうと予想されます。なにしろ、北欧諸国、ロシアなどの都市が入っていないので。

 

ただ、全く間違った情報とは言えないはず。日本列島の日本海に面した都市は「雪が多い」のではなく「世界的に見ても雪が多い地域」と十分に考えられるはずです。

どうせなら楽しんでしまえ

上述のランキング結果は偏っていると先ほど指摘しましたが、カナダとアメリカ東部のランクインした都市も「世界の豪雪都市」の呼び名にふさわしいまちばかりです。

 

〈HOKUROKU〉編集長の私、坂本も、実際に取材で訪れた経験のある都市ばかりなので、ランキング結果には肌感覚で大いに納得できます。

 

特に、ランキングの第5位に入っている、カナダの東部ケベック州の州都ケベック・シティなどは、豪雪都市の呼び名にふさわしいまちです。

 

フランスからの入植者の影響が強く、英語圏のカナダ国内にありながらフランス語が公用語のユニークな歴史都市で、54万人以上が暮らしています。北陸の金沢市や富山市以上の人口が暮らす 大きなまちとも言えます。

 

にもかかわらずこの都市には、たくさんの雪が降ります。

 

このまちに初めて取材で訪れた時、豪雪のため、取材スケジュールがめちゃくちゃになりました。

 

ケベック・シティの旧市街地。雪が降る冬は、石畳の路地や歴史的な建物の立ち並ぶまちの雰囲気がより幻想的になる。撮影:坂本正敬

飛行機のフライトがキャンセルになり、道路の交通標識が雪で埋もれ、路線バスが立ち往生しました。北陸の冬よりもさらに冷え込み、その日は確か、-15℃まで下がりました。

 

タクシー運転手も現地ガイドも「今日の雪はすさまじい」と口をそろえて言っていました。

 

にもかかわらず、北陸の金沢市や富山市と大きな違いがあるように感じます。この都市に暮らす人たちは底抜けに明るいのです。

 

ケベック・シティを州都とするケベック州に暮らし、フランス語を母国語として話す人たち(ケベコワ)の楽しそうな暮らしぶりには、取材で滞在した1週間ほどの間に、カルチャーショックをとことん受け続けました。

 

北陸の人たちにとって雪深い冬は我慢の季節ではないでしょうか。しかし、ケベックの人たちは異なるスタンスで冬と向き合っています。

 

「雪が降るのは仕方ない。どうせ避けられないのなら楽しんでしまえ」

 

という人生哲学が市民の意識に深く根付いていて、子どもはもちろんいい大人も、暮らしの中で雪のある生活を心底楽しんでいるのです。

 

ケベック・シティ郊外に冬季限定で登場する〈アイスホテル〉撮影:坂本正敬

その姿は、カルチャーショックを通り越して、感動的ですらありました。

 

いきなり、全く同じようには振る舞えないかもしれません。ただ、彼ら・彼女らの人生哲学には参考にできる部分が多いのではないかと滞在中にずっと考えさせられました。

 

「気質が違う」「我慢強さが私たちの良さ」と異なる意見を口にする北陸人の顔も思い浮かびます。

 

しかし、北陸と同じくらい雪が降り、北陸以上に気温が下がる環境で楽しく暮らしている人たちも世界には現にいるわけです。

 

ケベック・シティ郊外の凍った湖の上で犬を散歩する市民

そこで今回は、ケベック・シティに暮らす人たちの雪国暮らしを参考に、雪国暮らしと雪遊びの楽しみを考えてみました。

 

雪をただひたすら「邪魔もの」と扱うのではなく「天の恵み」と考える愉快な気持ちを北陸に暮らすわれわれもちょっとくらい持とうじゃないか、そんなメッセージを込めて特集をつくっています。

 

都市生活を北陸で送る人たちはもちろん、子育て中の人、北陸でまちづくりをする人もぜひ、最後まで読んで参考にしてみてください。

 

大坪副編集長のコメント:世界の都市の降雪量ランキングに北陸の都市がランクインしている事実をご存じでしたか?

 

雪を邪魔ものとして捉えるか生活を豊かにする資源として捉えるかで暮らしは大きく変わりそうです。

 

北陸の都市と人口規模がそこまで変わらないケベック・シティから雪と共に生きる都市のあり方を次回以降で学びます。)

金沢市は46万人、富山市は42万人ほど。

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