「HACHIBAN-RAMEN」がラーメンの呼び名になるくらい8番らーめんがタイで成功した話

2020.09.22

第2回

野菜にお金を払う価値を分かってもらえなかった

タイの〈8番らーめん〉の様子

―― バンコクの一等地で〈8番らーめん〉がどのように出店したのか教えてもらいました。

 

商品について次は聞かせてください。

 

タイで販売するに当たりメニュー開発はどのような方針で進めていますか? 現地のニーズを取り入れる一方で8番らーめんのオリジナリティーも求められると思うのですが。

 

中島:大前提として、日本の8番ラーメンの味をそのままタイへ持ち込むようにしています。

 

日本とタイでは当然ですが味の好みが違います。いったんは日本のメニューをそのまま持ってきた上で、タイハチバンの現地スタッフとディスカッションして調整しています。

 

―― 具体的にはどのように調整されましたか? 看板メニューの野菜らーめんの味付け・量・トッピングなどを例に教えてください。

 

中島:麺(めん)の量をまず変えました。タイの野菜らーめんは日本の2/3の量になっています。野菜もスープも麺(めん)に合わせて減らしています。

 

―― なぜ減らしたのでしょう?

 

中島:1回当たりの食事量が日本人とタイ人とではかなり違うからです。日本と同じ量では食べきれないケースが多いです。

 

―― タイの方は小食なのですか?

 

中島:食習慣の違いです。1日3食が日本では基本かと思いますが、1日5食の人がタイでは多いです。日本みたいに1食ずつしっかり食べるのではなく間食みたいな感じで気が付くと何かを食べています。

 

ショッピングモールにしても屋台にしても食べ物を売っているお店が多いです。歩いていて目に付いたものを軽く食べる人が多いですね。

 

ただ、最近ですと3食の人も増えているようです。1日5食の習慣は変わりつつあるようです。

〈トムヤムクンらーめん〉が一番人気

―― 1日5食も口にすると全く知りませんでした。そんなタイにおいて「8番」の人気メニューはなんでしょうか?

 

中島:タイだからこそのメニューが一番人気で〈トムヤムクンらーめん〉ですね。

 

タイの名物として有名なトムヤムクンをスープのベースに、有頭エビ3尾・フクロタケを添えた細麺(めん)のラーメンです。酸味・辛味・香りが絶妙に絡み合った独特の味が特徴でクセになります。

 

〈トムヤムクンらーめん〉提供:株式会社ハチバン

―― タイっぽくて食べてみたいですね。人気の理由はどこでしょうか?

 

中島:国民食という点が大きいです。国民食である上に、日本人の私が食べてもおいしいからしっかり受け入れられている。村中さんも多分好きですよね?

 

村中:「トムヤム」大好きです。1回だけタイへ行って食べました。おいしかったです。あれだけ食べに行きたいです(笑)

 

―― タイでの100店舗出店を記念してトムヤムクンらーめんを期間限定で日本でも過去に販売したと聞きました。反応はいかがでしたか?

 

村中:お客さまによって好き嫌いがはっきりと分かれました。独特の香りがするとんがった商品なので苦手な方からは「臭い!」とのお声もいただきました。好きな方のリピート率は一方で高かったようです。

 

日本で販売した時期は10年くらい前です。パクチーとかスパイシーな食べ物が最近ははやっていますし、あらためて販売したら反応は違うかもしれません。

野菜らーめんがタイで人気が出なかった

 

―― タイで人気のメニューについて聞きました。日本で人気なのに逆にタイで売れなかったメニューはありますか?

 

中島:言いにくいんですが、野菜らーめんが初期はあまり人気出なかったですね。

 

―― なんと。看板メニューじゃないですか。どうして人気が出なかったのでしょうか。

 

中島:タイだと野菜があまり貴重ではありません。お金を払う食べ物ではないのですね。例えば、屋台で食事を頼むと無料でキャベツが付いてきたりします。

 

野菜に対してお金を払う価値そのものを分かってもらえなかった点が大きかったのかなと思います。

 

―― 野菜らーめんは8番らーめんの看板商品だと思います。野菜の付加価値が低い中でも販売するために実施した対策や工夫はありますか?

 

中島:対策とまでは言えないのですが、8番らーめんと言えば野菜らーめんですので、そのメッセージだけは変えずにいきました。

 

―― それを聞けてすごく安心します。北陸人としては。

 

中島:タイハチバンの社長やマーケティング部長もその辺はすごく理解してくださって、メニューの一番目立つ場所に野菜らーめんの写真を載せてくれました。「これが8番らーめんだ」とプライドを持ってやっています。

 

―― タイでは人気メニューだけど日本では難しそうなメニューは逆にありますか?

 

中島:どうでしょう。個人的な意見を言うと〈鴨煮らーめん〉ですかね。

 

牛を食べない人がタイでは多いですが、鶏と豚は好きな人がすごく多いです。その国民性を意識した鴨煮らーめんや〈照り焼きらーめん〉のメニューがあります。

 

照り焼きはともかく鴨煮の方は日本に持っていったらどうなるのかなと思います。

 

編集長のコメント:1日5食の食習慣だとか野菜にお金を払う価値が理解されないだとか海外進出特有の苦労に8番らーめんも直面してきたのですね。8番らーめんがタイで生み出した意外な文化について次の第3回では話が及びます。)

レモングラス・唐辛子・コリアンダー・ナンプラーなどで鶏がらのだし汁に風味をつけ、具材のエビやフクロダケを煮た、酸味・辛味の効いたスープ。

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