ふーぽ編。ローカル・WEBマガジン・レポート

2022.04.14

第4回

そんないいこと言ってましたっけ

 

―― ジビエの記事を見てあらためて思ったのですが、思いを込めたちょっとややこしめの記事でも、ふーぽの語りはすごく優しいですよね。

 

なまじっか情報発信に経験があると、どうしても格好付けてしまうというか、気取ってしまう部分が出てきてしまいます。

 

〈HOKUROKU〉でもその点は、すごく気を付けています。私自身がどっちかと言うと、知っている分野では小賢しく格好付けてしまう人間なので。

 

プロデューサーの明石という人間がその辺を注意深く見てくれています。

 

一方で、ふーぽの場合は安易にはしゃいでいる感じでもありません。

 

ボリュームのある読者の厳しさ・怖さをきちんと知っていると伝わってきます。

 

こうした記事づくりの質のコントロールについても教えてください。

 

例えば、ふーぽの場合は、記事の質を担保する、信ぴょう性とか正確性を担保するために、どのようなプロセスを用意しているのですか。

 

堀:その点については、この2人(光眞坊さんと三村さん)が結構厳しくて。

 

 

外部の方が書いてくださった記事でも「今回のこれはちょっと駄目だ」とぴしっと伝えます。

 

大部数を印刷する紙の雑誌とは違って、質の担保に関して、めちゃくちゃ高いところは求めていません。

 

しかし、最低限の質はどんな場合でも保たなければいけないという共通理解がメンバーの根底に、言われてみると確かにあると思います。

 

―― 最低限の質とは例えばどんな点でしょうか。

 

光眞坊:ユーザーさんが疑問に思いそうな部分を解決しない記事は出せません。自分で読んでいて引っ掛かる部分は読者も引っ掛かるはずです。

 

疑問に思うところは誰が相手でも突っ込みます。

 

木曽:夜中とかにも「ここ違っているよ」と社内のスタッフからチャットで指摘が入るくらいですから。

 

―― 堀さんは前に、HOKUROKUの取材で読点の話をしてくれた時、このチーム内の赤入れについて言及していましたよね。

 

編集長の立場でありながら、自分の書いた記事には遠慮なくどんどん赤入れするように、他のメンバーに繰り返し伝えていると話がありました。

関連:新・文章読本。分かりやすく美しい「読点」の打ち方・使い方の作法

赤入れは喜ぶべき話、赤入れによって自分の原稿が改善されていくプロセスを喜べるカルチャーを編集部につくっていると。

 

堀:そんないいこと言ってましたっけ(笑)

 

ただ、赤が入れば入るほどうれしいという状況は、私自身が率先して示しているつもりです。

 

光眞坊:確かに、赤入れをしてくれた人には「助けてくれてありがとう」と思います。

 

三村:私も、しっかり見てくれているんだなと思います。原稿に赤入れが入っていないで戻ってくると、むしろ不安になるくらいです。

 

―― 一方で、質を担保した上でコンスタントに記事を出し続ける作業は、はたから見て思うよりも大変な作業だと思います。

 

スケジュール管理はどうしているのですか?

 

木曽:月間スケジュール表で結構厳密に管理してます。イベント情報は来たやつからどんどん入れて、読み物については、毎日1本は絶対公開するようにしています。

 

三村:その上で、読み物に関しては同じジャンルばかり並ばないように内容の並びも注意しています。例えば、食べ物の記事が3本も4本も続かないようにするだとか。

 

 

―― スケジュールはどのくらい先まで埋まっているのですか?

 

三村:今からだと翌月いっぱいまで予定が並んでいます。

 

―― 予定される記事もすでに用意できているのですか?

 

三村:はい。

 

―― すごいですね。HOKUROKUの場合は半年くらい先まで何をやるか構想・計画はありますが、原稿がそろっているという意味では常にぎりぎり状態なので大違いです。

 

三村:ただ、スケジュールが一応決まっているだけで、時事性の高い記事や急いで出した方がいい記事が後から入ってきたら、順番を差し替えて対応しています。

「こういうのに載ったよ!」とはしゃいでいる

―― 編集長の堀さんは「ふーぽをもっとメジャーに」と繰り返し口にします。

 

メジャーになるためのサイトの宣伝方法というか、認知度のアップのための工夫も教えてください。

 

例えば、外部配信先として「スマニュー」と契約するとか、セオリーが幾つもありますよね。

 

読者のために説明しておくと「スマニュー」とはスマートニュース株式会社(東京都)が提供するニュースアプリの略語です。

 

有名新聞社からローカル・ウェブメディア、それこそ芸能人のブログに至るまで、いろいろな記事を一堂に会して転載するサービスです。

 

読者にとっては一度に複数のメディアの記事を手軽に読めるメリットがあり、メディアにとっては多くの人の目に自分たちの記事を露出するチャンスを得られます。

 

堀:「スマニュー」とはすでに提携しています。

 

〈Yahoo! JAPAN〉に記事提供もしていました。

 

もちろん、SEO(検索エンジン最適化)もやっていて、例えば「恐竜」だとか検索に強そうな観光系のジャンルでは、外部の専門家のサポートを受けながらSEO(検索エンジン最適化)に強い記事もつくっています。

 

明智光秀のドラマが始まると知ったら、福井にある明智光秀ゆかりの地に関する記事を書いておくとか。

 

プラスして、タイムリーな記事も作成しています。

 

例えば「コロナ」の時は、感染対策をどうしたらいいかといった情報も出しましたし、家の中で楽しめるコンテンツの方向を模索もしています。

 

三村:「おうちで遊べる手づくり楽器」の記事だったり、屋内施設の利用情報だったりも出しました。

 

堀:アマビエブームの最初期には、アマビエを福井で研究していた人を早々に取り上げたりもしています。

 

その記事はバズって、取材対象者がいろんなメディアで取材を受けるようになりました。NHKの〈日曜美術館〉にもふーぽの画面が取り上げられた時にはガッツポーズだったな。

 

木曽:そう思うと、ふーぽの認知度アップの方法として、他のメディアに掲載してもらった時に、ミーハーな感じを全面に出して「こういうのに載ったよ!」とはしゃいでいると思います。

 

事務所の様子

 

出川哲郎さんが番組のロケ撮影で福井に来た時にも「何か問題があればお問い合わせください」と注意書きを載せた上で、撮った写真を勝手にサイトに掲載していました(笑)

 

―― グレーなはしゃぎ方ですね。

 

肖像自体を商品にしたり、勝手に広告に張ったり、その写真だけを差別化に使ったりしていないので、基本的には問題ないと解釈される事例です。

 

しかし、私の知る限り、そこまでミーハーにはしゃいでいるメディアは珍しい気がします。

 

はしゃぐ人たち

 

堀:テレビなどの大きなメディアとの付き合い方で言えば、何かの情報を提供する際には「ふーぽ提供」と番組内で書いてもらい、その露出を見てスタッフで喜んでいます。

 

実は他にも、ふーぽの普及のためにいろいろ策はあるのですが、営業の木曽くんが優秀なので、忙しすぎて社内リソースが今は足りていない状況です。

 

もっとメジャーにしたい、そのための体制が整っていないので、じくじたる思いです。

 

―― 越前市や越前町、鯖江市を舞台に年に1回開催される工房見学イベント〈RENEW〉がありますよね。全国各地から今では人が集まるイベントになっています。

関連:RENEW × 立山Craftに聞く。地域を盛り上げる「人気イベント」の開き方

ですが、集客に打ち出の小づちはない、地道にいろいろな方法を積み重ねていくしかないと、イベントを主催する〈TSUGI〉の新山さんが言っていました。

 

堀:ああ、新山さん。彼らは、本当に地道に継続していてすごいですよね。

 

―― メディアとイベントの違いはありますが、ふーぽも同じようにセオリー通りの集客方法を抜かりなく全て地道にコツコツ続けているとの話ですね。

 

お見事です。

 

副編集長のコメント:HOKUROKUの坂本編集長も赤入れが入らないとムッとします。

 

一方、翌月いっぱいまでコンテンツのストックがある安定感はHOKUROKUと大きく異なっているのでぜひ見習いたいです。

 

次回は最終話。ふーぽをこれからどうしていきたいのか聞きます。)

校正・校閲の作業で誤りを指摘したり、加筆や修正指示を記入したりする作業。一般的に、赤いペンで書き込むため「赤入れ」と呼ばれる。

スマートニュース株式会社が提供するニュースアプリの略語。

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