落ちてきたんですよ、クリスマスの日に
―― 創刊後は、どのような発展や変化を遂げてきたのですか?
堀:「あそこの空き地に何かできたみたいよ」程度の超身近な話・ちょいネタでもいいから、ミーハーで生っぽい記事をどんどん出して、ユーザーに毎日1回開いてもらう努力を続けてきました。
―― 生っぽいとは、ライブ感があるだとか、時事性・速報性があるだとかの意味ですね。きっと。
堀:一方で〈月刊fu〉からの転載で、質の高い記事も出していきます。
新店情報やイベント情報など速報性のある記事と、じっくり読まれる質の高い記事、その両方を出すようになりました。
収益性という意味では、広告などでふーぽの単独収益が上がるようになっていきましたし、みんなにふーぽが見られるようになると、行政の評価も高くなって、ふーぽを生かした企画で行政のウェブだとかパンフレットの仕事などもうちが受託できるようになりました。
ただ、行政の記事広告がいっぱい並んでしまっても駄目だと思っています。
女性・男性問わず、福井県の人に1日1回開いてもらうために有益な情報をもっと載せたい、公園まとめだとかイベント情報まとめみたいなコンテンツが主役である点は変えてはいけないと思っています。
―― 素朴な疑問なのですが、こうしたイベント情報はどうやって集めるのですか?
光眞坊:イベント情報が月刊fuにも掲載されているので、その情報を転載する方法が1つです。
また、投稿フォームもあって「無料掲載しますよ」と訴えています。
「福井 イベント」と検索するとふーぽのイベント情報がかなり検索上位に今では出てくる状態なので「うちのイベントを掲載してほしい」という引き合いがかなりあります。
堀:あと、行政などももう分かっていて、自治体で企画するイベントがあればふーぽに載せようという感じになってくれています。
―― 最初からこんなに情報が集まってきたわけではないですよね。
光眞坊:今ほどではなかったですが、最初からこのイベント情報は頑張ろうと思っていました。毎週末必ずアクセスされるコンテンツになると分かっていたので。
―― 情報の信ぴょう性はどうやって担保するのでしょうか?
それこそ、ありもしないイベント情報を私がフォームに打ち込んだとしたら、その「イベント情報」も掲載される可能性があるのですよね?
光眞坊:いえ。なんでもかんでも投稿された情報を掲載するわけではありません。
「5人以上集まったら開催します」といったイベントや、何かの有料セミナーなど、明らかに営業的なものは載せないと事前に断りも入れています。
その上で、公式サイトやSNS(会員制交流サイト)の情報を入れてもらうので、一度は検索します。
主催者さんの情報をかなり細かく入れられるので、そうした情報も併せて確認します。
入り口にハードルを設けて精査もするので、営業的な情報が次第に投稿されなくなってきました。
―― 桜の開花情報だとか、公園・プール情報だとか、いろいろなまとめ情報が他にもあります。
こうした内容は、イベント情報まとめと違って読者からの投稿型ではないと思います。
これらの情報はどのように集めているのですか?
三村:自分たちで情報を取ってきます。
光眞坊:例えば、プールまとめは、公式サイトに載っていない情報まで取材して聞き出しました。
おむつの子どもでも入れるのかとか、何を貸してもらえるとか。
三村:ホタルまとめもあります。
ふーぽのホタル観賞スポットまとめ。パソコン画面のスクリーンショットを挿入
―― ホタル情報のまとめっていいですね。単なるまとめ情報でも味わいが違います。
堀:桜のまとめの場合は、県内のどこどこが何分咲きといった感じで、週に2回くらい速報を流します。
そうした日常の変化を自分たちのお出掛けついでに撮影しておくと、例えば、行政から受けた観光パンフレットづくりの素材としても流用できたりします。
手間はかかりますが、結果として回収できているかなと思います。
―― ローカル・WEBマガジン・レポートの連載では、各メディアの編集担当者に対して「自分たちらしいコンテンツは?」と必ず聞いています。
初めてふーぽを見た人に、まず何を見てもらいたいのかといった質問があったとすれば、まとめ情報をふーぽらしいコンテンツと思って問題ないでしょうか。
(一同、うなずく)
―― 営業の立場からはどうでしょうか? 木曽さん。
木曽:僕もそう思います。
一般ユーザーにとってもすぐに役立つ大事な情報ですし、企業さんとか行政とかにも好評です。ある意味で、ふーぽの営業ツールにもなってくれています。
例えば、しっかりした観光のまとめ記事を一度つくれば、2021年度版など年々更新してストックしていけるので、サイト管理をちゃんとしているとのアピールにもなります。
堀:繰り返しになりますが、ふーぽとしては1日1回開いてもらえる動機づくりが大切だと思っています。
数字が出れば企業や行政の評価も高くなりますし、ふーぽに知見もたまっていきます。
「とにかくもっとメジャーになりたい」との思いがあって、そのための体制づくりを今はしているところです。
その意味で、多くの人に読んでいただけるまとめ記事は、確かにふーぽらしいかもしれません。
声を大にして「おもしろい」言いたい
―― ポータルサイトという立ち位置、メジャーの立ち位置を考えると、まとめ情報がふーぽらしいコンテンツだと分かってきました。
一方で、堀さんの言葉にもありましたが、質にこだわった、思いを込めた記事もあるとの話です。
読み物としてふーぽらしい、ぜひ読んでもらいたいといった記事や連載はありますか?
堀:他のメディアでは絶対にここまで掘り下げないだろうという記事もあるので、その方面でも紹介したいですね。
光眞坊:それなら紹介したい記事があります。
三村:私と光眞坊、このヤマドリの記事は一押しです。声を大にして「おもしろい」と言いたい。
―― なんの記事でしょうか?
堀:ちょっと前に坂本さんにも言いましたが、割と山奥の方に私は住んでます。
その家に落ちてきたんですよ。クリスマスの日に。
―― 何がですか?
堀:ヤマドリが。ハヤブサか何かが獲物を運ぶ途中に落としたらしくて。
三村:こちらでございます。
(三村さんが手元のパソコンで記事を見せてくれる)
堀:家でくつろいでいると、ハヤブサか何かの猛禽類が獲物の野鳥を家の軒先に落としてしまったみたいなのですね。
私が発見した時はちょうど落ちてきた瞬間で。もう息はしていなかったのですが、まだ温かかったんです。
奇麗な模様だと思って子どもと一緒に図鑑で調べるとヤマドリという鳥で、肉がおいしいと書かれていました。
その記述を見て妻が「食べてみる?」と言い出し、毛をむしって調理を始め、最後は家族で食べました。
私は、手を合わせて念仏を唱えるだけでしたが、その一連の出来事を記事にしました。
―― すさまじい記事ですね。
食肉解体したヤマドリの胃の中を調べると、ムカゴが出てくるなどのエピソードも書かれているじゃないですか。
福井の自然の豊かさを結果として伝える記事になったのではないでしょうか。
落ちてきた野鳥をすぐに調理して食べてしまおうとする福井県の人たちの一面も伝わってきます。
堀:福井の県民性とまで解釈されると誤解が生まれるかもしれませんが(笑)
もちろん、爆発的に読まれる記事ではありませんし、たまにちょっと上がってくるくらいです。それでも、このように思いを持って書く記事もあります。
―― 日常の驚くべきエピソードをすぐに記事化できる企画力・編集力を内部に持っているといった意味でも、この「ジビエ」記事はふーぽらしい記事と言えるかもしれませんね。
ビジネスモデルやテクノロジーを重視したウェブメディアの場合、記事を書いた経験のない人が編集長や組織の代表を務めているケースも今では普通にありますからね。
堀:木曽なんかもすごく顔が広くて、さまざまなまちづくり活動にかかわりつつ、営業なんだけれど自分でも書く力があります。
木曽:野菜ソムリエの資格を持っているので、野菜について書く記事は楽しいですね。
―― だからそんなにお肌が奇麗なのですね。
堀:もともと大きなスーパーの店舗責任者をやっていたんですよ。本当に多才です(笑)
普段の木曽さん
木曽:富山でも働いていましたよ。
―― この話も掘り下げたいでねえ。
ただ、今回の本題とずれるので、別の機会にまた話を聞かせてください。
スーパーマーケットを深堀りする特集をHOKUROKUでは予定していますから。
なんであれ、対極にあるふーぽらしい記事を紹介してくれてありがとうございました。
(副編集長のコメント:ヤマドリの記事は必見です。地方だからこそできる目線とコンテンツですね。
次回は、記事の質をどうやってコントロールしているか教えてもらいます。)
オプエド
この記事に対して、前向きで建設的な責任あるご意見・コメントをお待ちしております。 書き込みには、無料の会員登録、およびプロフィールの入力が必要です。
オプエドするにはログインが必要です。