移住者たちの川柳。第1回<金猫賞>の発表の話。

2020.10.22

vol. 04

川柳は「詠む」ではなく「吐く」らしい。

acworksさんによる写真ACからの写真

いよいよ、各賞の発表ですが、ここでちょっと告白しなければいけません。

 

川柳は句の興行で人気を博した柄井(からい)川柳さんの名前から生まれたと言いました。

 

柄井川柳さんが開催した第1回の興行には、207句が集まり、入選句が13句だったと記録が残っています。

 

では、生まれたてのWebメディアである『HOKUROKU』が開催した第1回の<移住者たちの川柳>は、どのくらい句が集まったのか。ずばり、5句でした。

 

「おいおい、5句で金獅子賞の発表かよ」

 

と、ずっこけながらの突っ込みが入りそうですが、点者の筆者は、至ってやる気満々、胸を張りたい気分です。

 

素人が立ち上げた川柳大会のまねごとに、5人が句を寄せてくれたわけです。

 

その中から<銅猫賞><銀猫賞><金猫賞>が選ばれるので、入選率(勝句率)はすさまじく、投稿すれば入選する、いわば「入れ食い」状態。

 

読者との一体感は、なかなかですよね。当初の「双方向を実現する」という狙いは、小規模ながら、ある意味で生々しく果たされるわけです。

 

同時に柄井川柳さんが無名の状態でよく、207句も集めたものだと、実務者としてのすごみも理解できました。

 

当面は、この207を目標に、第2回以降の移住者たちの川柳を続けていきます。

銅猫賞の発表。

壮大な前置きは終わりにして、そろそろ入選作を発表します。まずは<銅猫賞>の発表です。

 

今回はお題(前句)を設け、そのお題に対して5音・7音・5音の17音字で、川柳をつくってもらいました。

 

第1回のお題は「北陸のカルチャーショック」。北陸に移住してきた人たちに、その暮らしの驚きを17音で詠んでもらいます。

 

まずは第3位の銅猫賞に、こちらを選句しました。

「雪道を黙って進む小学生」

(九州→北陸のカルチャーショック)

雪の中を一列になり、黙々と進む小学生の姿に、道行く生活者として心を打たれた瞬間の心情を詠んだのではないでしょうか。

 

もしかすると、その列の中には自分の子どもも含まれているのかもしれません。

 

学校へ向かって黙って歩く小学生を見守る、地域に引っ越してきた私。生活者の視点から、何気ない風景の中に北陸の風土と北陸人の人柄を見抜いて感動している。そんな移住者らしいまなざしが、とても素晴らしいと思いました。

 

この川柳は、最後の「小学生」が7音になっています。しかし、上5、中7とリズム良く音が続き、最後は7音ながら「小学生」と世界が収れんしているため、構成にはまとまりが感じられます。

 

また、「雪道や」などと切字を使って世界観を独立させる俳句とは違い、川柳らしく「雪道を」と表現しています。「進む」というシンプルで優しい言葉を使う素直さも、川柳らしいと評価しました。

 

俳号(ペンネーム)からも推察されるように、恐らく九州の温暖な地方から雪深い北陸に引っ越してきた作者なのでしょう。

 

そろそろ、北陸に冬が始まります。また、各地で子どもたちの色とりどりの傘やかっぱを見られる季節が来ます。

 

その何気ない日常の風景にも、移住者からすると風韻が感じられる、その実例を見させてもらいました。

 

九州→北陸のカルチャーショックさん、また、次の回も投稿をお待ちしています。

銀猫賞の発表。

次は銀猫賞の発表です。受賞作は、次の作品です。

「川べりでチャックを下ろす放尿犯」

(shirokuma)

この川柳は、shirokumaさんが移住したまちの川べりで日常的に見る、放尿の常習犯に対する不満の吐露に違いありません。

 

作者の生まれ育った土地では信じがたいような悪習が、移住先では手つかずで見過ごされている、その文化的なギャップを目の当たりにしたショックを、見事に川柳で表現しています。

 

この作品の入選ポイントは、「吐く」意識です。

 

川柳は「詠む」ではなく「吐く」行為だと語る専門家も居ます。

 

「吐く」とは例えば、体制側のスローガンに吐き気を催した川柳作家が、異論や反論を言葉にして吐き出し、体制側の意図をひっくり返してしまうような意味の「吐く」です。

 

移住者たちの川柳に投稿する移住者にとっての「体制側」に、昔からの悪習に甘んじる地元住人が入ってくる場合も、当然あるわけです。

 

この「吐く」姿勢は、同じ伝統短詩であっても、俳句や短歌ではなく、川柳の独壇場とも言えるかもしれません。

 

とはいえ、作者の川柳に、責任追及の過激さは感じられません。

 

あくまでも放尿犯と一定の物理的な、あるいは心理的な距離を保ちながら、「やれやれ」というあきれた気持ちを、「チャック」という平易な言葉を使って茶化しています。

 

「ジッパー」でもなく、「ファスナー」でもなく、「チャック」の響き。

 

どこか(幼いとまでは言えないまでも)小学生の男子を連想させるような言葉を使って、放尿犯の幼児性を笑っている、そんな川柳だと思いました。

 

ちなみに「放尿犯」は7音で、5音・7音・7音と、一見バランスが崩れているように思えます。

 

しかし、川柳においては中7の収まりが、全体のバランスを決めると言われています。

 

銅猫賞の「小学生」と同じく、「放尿犯」と7音になっても、上5、中7の世界観が、「放尿犯」という言葉で見事に収れんしている印象を受けます。

 

その意味で、全体のバランスも保たれている、素晴らしい川柳だと思いました。

 

(次はいよいよ最後のページ。金猫賞の発表と、次回のお題の発表です。)

この記事を書いた人

坂本 正敬

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