移住者たちの川柳。第1回<金猫賞>の発表の話。

2020.10.23

vol. 05

愛をもってうがち、ユーモラスに切り取る。

bacchaさんによる写真ACからの写真

最後は<金猫賞>の発表です。ここでドラムロールの音でも流れるような仕組みを将来的に用意できればよいのですが、今回は無音で続けます。

 

受賞作はこちらです。

「越してきてしごと聞かれる夫のね」

(そっちねさん)

今回の金猫賞は、この川柳を選びました。

 

ご近所さん、あるいはママ友との会話のワンシーンでしょうか。

 

「なんで移住してきた(引っ越してきた)の? ご主人の仕事の関係?」という地元の人たちの好奇心から生まれる問いに、ちょっとした皮肉を、ニコニコしながら投げ掛け返す川柳です。

 

その皮肉には、「別にどうだっていいじゃない。よほど引っ越してくる人が珍しいの?」という思いがあるのだと思います。あるいは「夫が働き、妻はその夫の仕事についていくだけ」という硬直化したジェンダー(性)による役割分担の根強さを北陸の地に感じたのかもしれません。

 

しかし、その気持ちを直接投げ返すだけでは、不毛な分断の社会になってしまいます。

 

双方が「言われてみれば変だね」と笑い合える、そのような川柳本来の役割を、この作品は見事に果たしていると思いました。

 

全体的な印象で言えば、上5、中7、下5の音が奇麗に整っています。

 

上5と中7で状況が提示され、下5の「夫のね」で奇麗に着地しつつ、意外な展開が提示される、その着地の確かさと展開の意外さが読後の余韻を生んでいます。

 

さらに、この川柳からも、<銀猫賞>の発表で紹介した「吐く」意識が、強く伝わってきます。

 

根っこの部分で、「もう、うんざり」という怒りのマントルが緩やかに、しかし確実に対流している様子が感じられます。

 

しかし、その怒りも、中7の「しごと」といった平仮名表記や、下5の「夫のね」というチャーミングな言い回しで、中和されています。

 

その結果、風刺の雰囲気が担保され、単なる怒りの吐露ではない、伝統短詩という1ランク上の感情表現に昇華している印象があります。

 

移住者らしい、しかも生活者としての視点からつくられた、素晴らしい川柳だと思いました。

<招き猫賞>もね。

<銅猫賞><銀猫賞>、さらに金猫賞の発表は、以上になります。

 

引き続き、銀猫賞のshirokumaさん、金猫賞のそっちねさん、第2回以降の投稿も楽しみにしています。

 

ちなみにまだあと2つ、今回は投稿がありました。

「晴れた日が続くと逆に鬱になる」
(mariko)

「つごう良く関東関西使い分け」
(hakase)

どちらも力作で、入選作と甲乙つけがたいレベルです。

 

さらにこれらの作品が、他の作者の投稿を呼び込んだという側面もあるはずです。

 

そこで今回は第1回を記念する意味も込め、特別に<招き猫賞>を贈ります。

 

金銀銅の受賞者にはそれぞれ、正賞として表彰状、副賞として編集長をキャラクター化したオリメタダシステッカーを送付します。招き猫については、オリメタダシステッカーを送ります。

 

「こんなに入選率が高いなら、送ってみようかな」という皆さん、その通りです。今がまさにチャンスですので、どしどし投稿を待っています。

「なんでそうなる?」と思う話。

最後に、第2回の川柳のお題を発表します。募集期間は細かく決まっていませんが、川柳の集まり方も見ながら、現実的には2020年(令和2年)の終わりまでと考えています。

 

お題は、「なんでそうなる?」と思う話。

 

本来の川柳のお題(前句)はもともと、7音・7音の14音字でつくられていたと学んだので、14音でつくってみました。

 

北陸らしい時事ネタ、暮らしや土地の習慣の中から「なんでそうなるの?」という話を、移住者らしい視点と愛をもってうがち(突き抜き)、ユーモラスな言葉で切り取ってください。

 

(応募はこちらから。)

 

点者としての力量も、このコーナー自体のレベルも、回を重ねるごとにパワーアップしていきたいと思います。その変化を、作者の皆さんも一緒に楽しんでくださいね。

 

文:坂本正敬
編集:大坪史弥、坂本正敬
編集協力:中嶋麻衣

復本一郎著『俳句と川柳 「笑い」と「切れ」の考え方、たのしみ方』(講談社)
田口麦彦著『地球を読む 川柳的発想のススメ』(飯塚書店)
楜沢健著『川柳は乱調にあり 嗤う17音字』(春陽堂)
吉田健剛著、森田雅也監修『古川柳入門』(関西学院大学出版会)
杉山昌善著『今日から始める現代川柳入門ードラマチック川柳のすすめ』(有楽出版社)

この記事を書いた人

坂本 正敬

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