「これ、どこのタンブラーですか?」と質問される気持ち良さって、たまらない。きっと。
土直漆器(鯖江市)の<URUSHI MOBILE TUMBLER>。
福井ロフトなどを見学していると、福井県の鯖江市にも人気のタンブラーを手掛ける会社があると、情報が入ってきました。
福井の鯖江と言えばメガネが有名ですが、鯖江には越前漆器11の産地もあります。その伝統技術をコーヒー・タンブラーづくりに生かした、土直漆器(鯖江市)の<URUSHI MOBILE TUMBLER>があると知りました。
最初、公式ホームページで見た時に、「まさに、こういうタンブラーを探していた」と思いました。編集部に情報をシェアしても、「これなら持ちたい」と気持ちの良いリアクションが返ってきます。
プロダクトとして持ちたいかどうかが大事だとすれば、URUSHI MOBILE TUMBLERは写真の段階で成功しています。
鯖江市の様子。
同製品を立ち上げた土直漆器の土田直東さんにも、会いに行ってきました。
取材当日、鯖江は曇っていました。近所の山からは水蒸気が立ち上っています。漆は湿度が高いほど固まりやすくなるため、産地として湿度の高さは大事なのだとか。
聞けば、越前漆器は産地として日本最古の1500年近い歴史があるそう。その産地の中でも土直漆器は歴史の若い会社だと、2代目社長の土田直東さんが教えてくれます。
土田直東さん。
URUSHI MOBILE TUMBLERをリリースする土田直東さんは、世界的な大手レコードショップの社員として東京で働いた後、父親の仕事を継ぐために、鯖江にUターンした人です。
「外の世界を知る私のような経営者が、どんどん面白いチャレンジをして、若い人に漆器の世界に対する憧れを持ってもらいたい」
との願いもあって、URUSHI MOBILE TUMBLERを始めたのだとか。
プロダクトの開発の経緯は、慶応義塾大学のメディアデザイン研究科から、伝統の技術を生かして海外に物を売っていきたいと、鯖江市に声が掛かったところから始まります。
産地としてさまざまな課題を抱えていた同市の越前漆器が手を挙げ、クラウドファンディングを経て、商品化に至りました。
飽和状態のタンブラー業界の中で「違い」を実現。
カメイ・プロアクト社(東京都)の<Thurmo mug>に、土直漆器が伝統の技術で漆塗りを行う。タンブラーの色彩は経年変化をして深みを増す。
URUSHI MOBILE TUMBLERは、北陸の、日本の風土に似合うタンブラーとして、1つの理想的な形を示した商品なのかもしれません。
飽和状態のタンブラー業界の中で、真空二重構造のタンブラーに漆塗りを用いた製品は、類似品との差別化を見事に実現しています。
現に、ユーザーが<スターバックスコーヒー>などに持ち込むと、店員から「これ、どこのタンブラーですか?」などと質問を受けるそう。この質問は、使っている本人としてはうれしい限りですよね。
そのやり取りがきっかけで店員との会話が弾み、使っている人のステイタスにもなって、満足度にも直結しているみたいです。
価格帯は1万円前後12と決して安くはありません。それでも月に500~600個、年間で7,000~8,000個のペースで売れているとも言います。
最初は海外の人に向けて売り出す予定だったそうですが、意外にも都市部に暮らす30~40代の日本人に売れているみたいです。
贈答用としても好まれていて、企業が自社のネームを入れてイベントでギフトにするといったニーズもあると土田さんは言います。
<KeepCup>も同じですが、デザインが人の手に取らせる原動力になっている、その見本となるような商品が、北陸3県にもすでにあると分かりました。
コーヒー専用の容器として用途を考えてみる。
土直漆器の外観。この中の一角でもURUSHI MOBILE TUMBLERは販売される。他、都内や関西のショップ、Thurmo mugのルートでも取り扱われる。
ただ、URUSHI MOBILE TUMBLERは、コーヒー専用のタンブラーとして用途が限定されているわけではありません。
例えば、土田さんは毎日このタンブラーでお酒を飲んでいると言います。真空二重構造のため氷が溶けにくく、お酒が美味しく飲めるのだとか。
一般的にタンブラーは、コーヒーに限らずさまざまな飲み物に適している容器ですから、お酒も楽しめるとなれば、使い勝手の良さを裏付ける証拠になります。
しかし、今回の特集テーマに寄せて、コーヒー専用の容器として用途を限った時、真空二重構造の保温機能は裏目に出る可能性もあるはずです。
水筒にコーヒーを入れて持ち運んだ結果、酸味や雑味が増してしまった経験はありませんか? コーヒーは長時間、高い温度で保管すると、雑味や嫌な酸味が増すと知られています。
また、価格的に1万円前後という値段設定も、日常的な利用をイメージした場合、ちょっと高すぎるというハードルもあるはずです。
容器としての背の高さも、スクリュー式のふたについても、コーヒー専用という用途に限って見れば、商品選びの際に注意が必要かもしれません。
例えばKeepCupの場合は、現場に立つバリスタが開発した経緯もあって、カフェのカウンター内でストレスなく使えるように、エスプレッソ・マシンの抽出口に直接セットできるサイズ感を意識しています。
さらに混雑時のバリスタの手間を考え、容器のふたも、ねじ込み式ではなく、押してはめるタイプが選ばれています。
思わず手に取りたくなるデザインが大前提にあって、その上でバリスタにも使い勝手がいい機能を持っている、そんな容器の有無が、北陸3県でコーヒー・タンブラーのある暮らしを広める鍵を握っているのではないかと、分かった気がしました。
(編集部コメント:「調査編」は以上です。この先は、HOKUROKUオリジナルのドリンク容器づくりについて考えます。時期については未定ですが、続きを楽しみにしてくださいね。)
文:坂本正敬
写真:山本哲朗
編集:大坪史弥、坂本正敬
The KeepCup Story: How They Became the World’s #1 Reusable Cup
https://www.upcyclestudio.com.au/blogs/sustainable-living/the-keepcup-story-how-they-became-the-world-s-1-reusable-cup
KeepCup founder on revolutionising coffee culture
https://www.ft.com/content/3df1d006-de86-11e8-9f04-38d397e6661c
'He said it was the stupidest idea he had ever seen'
https://www.bbc.com/news/business-52366981
'Stupidest idea ever': KeepCup founder Abigail Forsyth on how the reusable cup nearly didn't happen
https://www.abc.net.au/news/2017-05-18/abigail-forsyth-how-the-keepcup-nearly-did-not-happen/8537150
マイボトル運動を実施しています! ー 福井県
https://www.pref.fukui.lg.jp/doc/junkan/reduce/mybottleundo.html
1からわかる!プラスチックごみ問題(1) ー NHK
https://www3.nhk.or.jp/news/special/news_seminar/jiji/jiji17/
平成 28 年度沿岸海域における漂流・海底ごみ実態把握調査業務報告書 ー 三洋テクノマリン株式会社
http://www.env.go.jp/water/marine_litter/report_h28/enganmain1.pdf
漂流・漂着ゴミに係る国内削減方策モデル調査 福井県地域検討会報告書(案) ー 環境省
https://www.env.go.jp/water/marine_litter/model/kentou/region/fukui06/mat03_3.pdf
缶コーヒーのコク感アップと、おいしさを維持する実用技術を開発
https://www.kirin.co.jp/company/rd/result/report/report_019.html
使い捨てコーヒーカップよ、さようなら! 世界で広がるリユース&リサイクルの新しいかたち
http://www.thinktheearth.net/jp/sp/thinkdaily/news/living/1292coffeecup.html
オプエド
この記事に対して、前向きで建設的な責任あるご意見・コメントをお待ちしております。 書き込みには、無料の会員登録、およびプロフィールの入力が必要です。
オプエドするにはログインが必要です。