すみません。HOKUROKUを「Wikipediaに掲載」しちゃいました

2020.08.24

vol. 01

大胆になれ

※写真はイメージです。撮影:Kevin Doncaster(flickrより)

北陸3県のウェブメディア〈HOKUROKU〉の編集部には熱心なwikipedian(ウィキペディアン)が居る。

 

「ウィキペディアンってなんだ?」という人も、インターネット上に無料公開されているオンライン百科事典〈Wikipedia(ウィキペディア)〉の名前くらいは恐らく知っているだろう。

 

Wikipediaに熱心に書き込んで日々項目を増やし、すでに書き込まれた項目の内容に疑義を差し挟みながら修正を試みる人たちをWikipediaを編集する人・wikipedian(ウィキペディアン)と呼ぶ。

 

むろん「無償」である。誰からも頼まれていない。

 

何の見返りもなく自発的な意志をもって動いている。仕事の手を止め、料理や家事を脇におき、あるいは愛するわが子を寝かしつけた後の貴重な時間を使って執筆と編集に時間を割く人たちだ。

 

「Wiki crack(ウィキ中毒)」といったスラングも英語ではある。もちろん日本だけではない。世界中で今日も「ウィキ中毒」の人たちがWikipediaを編集している。

生まれたばかりのウェブメディアを「百科事典」に載せる必要ある?

従来の紙の百科事典とWikipediaは成り立ちを大きく異にしている。それくらいは筆者(HOKUROKU編集長・坂本正敬)も知っている。

 

各分野の権威者・専門家たちによる責任執筆制をとっていない点が最大の違いだ。いわゆる「一般人」が知恵と知識を寄せ合って編集する百科事典である。

 

誰でも書けるし誰でも修正できる。

 

Wikipediaの画面をスクリーンキャプチャーし挿入

そのボランティアの書き手たちは筆者にとって、これまでは見も知りもしない誰か・実体を持たない架空の存在だった。

 

言うまでもなく自分の身の回りに居るとは考えもしなかった。

 

しかし、気が付けばHOKUROKUの編集部内にwikipedianが複数居た。しかもお互いがその事実を楽しそうに自慢しているのだ。

 

そのうちの一人でHOKUROKUのプロデューサー・明石博之が、ある日の編集会議で「編集長にはWikipediaにHOKUROKUの項目をつくってほしい」と言ってきた。

 

「生まれたばかりの小さなウェブメディアの項目を百科事典に載せる必要なんてある?」と筆者は率直に遠慮した。

 

オールドファッションな(古風な)筆者には「百科事典=書くに値する項目を掲載する」という考えがある。「HOKUROKUなんてまだ始まったばかりだし」という謙虚な気持ちが正直にあったのだ。

宣伝的な記述を消さなければならない

調べてみるとWikipedian(ウィキペディアン)の間でも新しい項目づくりには異なる考えがあるらしい。

 

「紙じゃなくてウェブなんだから、紙幅に制限もないし何でも載せればいいじゃん」という考えの人(inclusionist)と、「取捨選択がWikipediaのクオリティにつながる」と項目のえり好みをする人(deletionist)で意見が割れている。

 

生まれて間もないHOKUROKUのWikipedia掲載は後者の人たちから怒られてしまう恐れが十分にある。

 

Wikipediaの画面をスクリーンキャプチャーし挿入

ただ、誰かの名前を検索した時にWikipediaのページがあると「へえ、この人はWikipediaにも載るくらいの人なんだ」と、ちょっと見方が変わる。

 

SEO(検索エンジンの最適化)の観点から考えても意味があるらしい。

 

「本当は宣伝的な記述は掲載が認められないけれどね」

 

とHOKUROKUプロデューサーはくぎを刺す。それでもHOKUROKUの項目をウィキペディアにつくって、何かデメリットはあるのだろうか。恐らくないはずだ。

 

ページ作成のプロセスをコンテンツ化すれば、これからwikipediaで項目を立てたい人の参考にもなるかもしれない。

 

お笑い芸人の江頭2:50もYouTubeチャンネルで自身について書かれたWikipediaの内容を修正していた(とてもハートフルな内容だった)。

 

かつて〈百科全書〉の編さんを通じて自然界と人間社会を含んだ世界全体を記述しようと試みたドゥニ・ディドロ(1713~84)に憧れを抱く物書きの端くれとして、百科事典づくりに携わってみたいという思いもある。

 

Wikipediaの根本的な原則に「大胆になれ」という考えもあるらしい。

 

以上のような経緯と動機から「すみません。HOKUROKUを『Wikipediaに掲載』しちゃいました。」の特集は始まった。

 

「すみません」とはもちろん「取捨選択がWikipediaのクオリティにつながる」と項目のえり好みをする人(deletionist)たちへの「ごめんなさい」である。

 

副編集長のコメント:次は、第2回。そもそもWikipediaとは何なのか、おさらいします。)

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