雪国の「冬服コーデ」の正解を長靴から逆算して考える

2021.01.27

vol. 02

色の面積が大きいデザインの服がいい

 

―― いよいよ僕の自前の長靴を使っておしゃれをする、言い換えれば今ある長靴から逆算してファッションを考える本題へと入りたいと思います。

 

〈HOKUROKU〉の〈Twitter〉でアンケートを事前に取ったところブランドを気にして長靴を購入している人は少数派でした。

 

「とりあえず履ければよい」と考えている方もさらに言えば多いようです。

 

 

こだわった長靴をおしゃれに履こうと思う少数の人と、とりあえず履ければいいと思っている大多数の人。この2者の間には大きな溝がありそうです。今回の特集では少しでもこの溝を埋められればと思います。

 

そこで「とりあえず履ければいい派」の大多数の読者に向けて「こだわりを持たずに買った手持ちの長靴でもできる、おしゃれな長靴コーディネートの組み立て方」を聞かせてください。

 

藤田:分かりました。

 

履き口の高いロングの長靴

―― 長靴を大きく分けると、履き口の高さ・色でまずは分けられると思います。履き口はひざの下ぐらいまでの高さのあるロングなタイプ・くるぶしからすねぐらいまでの高さのショートなタイプがあります。

 

履き口の低いショートの長靴

今まで長靴を僕は持ってなかったんですが、今回の北陸の豪雪ではロングの長靴をさすがに買いました。

 

選んだ商品は、近所の靴屋の一番手前に並んでいたサイズの合う長靴です。お店に入ってから購入するまでに10分もかかってないと思います。

 

筆者の長靴

この何の気無しに買った長靴に対してどんなコーディネートを考えていったらいいでしょうか。

 

私物でいろいろな洋服も持ってきました。コーディネートのポイントを教えていただければと思います。

 

藤田:分かりました。概論として履き口の高いロングなタイプは体に対し長靴の占める面積が大きくなります。つまり長靴のインパクトが強くなりがちです。

 

なので、長靴のボリュームを全体で中和させるようなコーディネートがいいと思います。

 

その上で各論に入ると、大坪さんの長靴の場合はコーディネートの前に、この長靴に付いているひもを細いひもに替えたら格好いいと思います。

 

長靴にひもがついている

―― それはなぜでしょう。現状だと何が悪いのでしょうか。

 

藤田:現状だと、ちょっと露骨に言えば、ごめんなさいね。完全に「おっさん」臭いです。

 

ちょう結びが目立つんですよね。ひもの存在感がすごいので僕だったらこのひもを取って履きます。もう少しワイルドな感じになる気がします。

 

パーカーでも、フードのひもを取る人が居るじゃないですか。ひものあるなしでだいぶ雰囲気は変わります。この方が、ちょっと脚も長く見えると思います。

 

―― じゃあ、取ってみましょうか。

 

 

取れました。

 

 

すっきりしていいですね。脚が長く見える気もします。

 

ただ、自分で言うのもなんですが、ひもがついてる長靴ってそんなに数は多くないと思います。もう少し一般的なポイントも知りたいです。合わせるパンツの色などはどうでしょうか。

 

 

藤田:パンツの色はそんなに悪くないと思います。黒い長靴に対して明るい色でいいと思います。

 

パンツの場合、すそは長靴の中に入れる場合がほとんどだと思います。そうなるとパンツの形はなるべく細身のタイプを選んだ方がいいですね。

 

素材としてはデニム生地もいいと思います。生地が硬いのですそを長靴に入れてもそんなにぶかっとしません。細身のパンツは体にフィットするので冬場でもあまり寒くないと思います。太めのパンツを履くと結構寒いです。

 

―― なるほど。ポイントとしてまとめると、長靴を履く時は細身のパンツを合わせた方がいい。またお勧めとしてはデニム生地のパンツがいいという話でしょうか。

 

藤田:そうですね。防寒の観点からもスタイルの観点からもお勧めです。

冬服の長靴の正解(その1)

防寒も考えて長靴を履く時は細身のジーンズを履く。

カントリーやアウトドアをルーツに持つ

―― 次に、上着はどうでしょうか。

 

藤田:先ほども少し言いましたが、長靴のボリュームを全体で中和させるコーディネートがいいと思います。合わせる上着は長めのスタイルが格好いいんじゃないでしょうか。

 

―― このロングコートは例えばどうでしょうか。このロングコートを今日は着てきました。

 

 

藤田:長めのスタイルと言いましたが、ちょっとこれは合わないですね。

 

長靴はブーツ、つまりカントリーやアウトドアをルーツに持つアイテムなので、アーバンな雰囲気の服はあまり合わせない方がいいと思います。

 

例えば、アースカラーだったりとか、アウトドアを感じさせるデザインだったり。そういった洋服の方が長靴には合わせやすいと思います。

 

―― 具体的にはどんな洋服がよいでしょう?

 

藤田:うちのスタッフの相賀くんが着ているアクティブな印象のジャケットは合います。

 

〈the Measuring order salon〉のスタッフで靴磨き職人の相賀善博さん

このジャケットは、イギリスの〈Barbour(バブアー)〉というブランドの洋服です。

 

イギリスのアウトドアブランドで、もともとは、船員や漁師・港湾労働者など労働者のための服装というルーツがあります。

 

その意味で、ブーツをルーツとする長靴とも相性がいいのです。女性でも着ている人が最近は増えました。Barbourは個人的にお勧めです。

 

―― 洋服のルーツと長靴のルーツを合わせる考え方が大事なんですね。

冬服の長靴の正解(その2)

長靴と洋服のルーツを合わせる。

その意味で言えば、コートを脱いで下に着ているセーターと長靴を合わせた方が、カントリーな雰囲気が出てバランスが良いと思うのですが。どうでしょうか。

 

 

藤田:そうですね。確かに方向性としてはそのとおりなのですが、率直に申し上げれば現状でそのセーターから「長靴が楽だから上も楽しよう」っていう感じがすごく伝わってきます。その気の緩みが上半身に出ている感じがします。

 

―― 実は、おっしゃるとおりで。今の状態って「長靴だしこれでいいか」という服装なんですよ。このような感じで毎日の服を選んでいる人は僕に限らず居るのではないでしょうか。

 

藤田:セーターの色がまず良くないと思います。ちょっと言い過ぎかもしれませんが「実家のお父さん感」が満載です。この色のセーターを着るのでしたら白のシャツとかを着た方が格好いいと思います。

 

もっと言えば、パンツの色は良かったのですが、セーターも同じ色味になっている点が良くないです。

 

上下でメリハリをつけ、ちょっと明るい色があってもいいかなと思います。今のパンツとセーターの組み合わせはそれこそ「冬の北陸の空」のようです。

 

―― 冬の北陸の空ですか(笑)

 

藤田:冬になると暗い色でコーディネートしている人が北陸にはすごく多いんです。まるで北陸の空みたいで。

 

現状のスタイルでいくなら小物で明るいアイテムを入れてもいいと思います。バッグとか今の時期だとマフラーだとか。

 

あとは、着こなしでもちょっと変わるかなと思います。例えば、ちょっと袖をまくってみたり。上半身のぼさっとした感じが少しすっきり見えますね。

 

シャツも着るならきちんとパンツの中に入れたほうがいいかも。

 

筆者のシャツの着こなしをアドバイスする藤田さん

―― 長靴でもちゃんと気を張るっていうことは大事ですね。ポイントとしてまとめると長靴を履くならだらしなくしないっていうのは大事かもしれないですね。

全体で3色、多くて4色

―― アウターはどうでしょうか。今日持ってきたラインアップで言えば赤色のダウンジャケットがあります。

 

藤田:そうですね。一般的に言えば、長靴のカントリーな感じに合うアウターで明るい色も入るといいですよね。赤色のダウンは悪くないと思います。

 

 

―― いかがでしょう?

 

 

藤田:さっきのコートよりは、こっちの方がいいと思います。アウトドアな雰囲気が出て長靴とも合います。あえて明るい色を選ぶコーディネートもいいと思います。

冬服の長靴の正解(その3)

アウトドアな雰囲気の明るい色のアウターを選んでみる。

先ほどのセーターを脱いで、お持ちのダッフルコートを着てみてもいいと思います。今着ているネイビーのシャツよりも濃いネイビーがグラデーションになって上半身がもっとスッキリと見えるかと思います。

 

―― じゃあ、着てみますね。

 

 

―― なるほど。同色同士を合わせるのは良くないのかなと思っていましたがスッキリしました。

 

藤田:色を使いすぎるのも良くないです。全体で3色、多くて4色です。

 

かつ、はっきりした色を長靴の時は使った方がいいです。

 

長靴は面積が大きいです。長靴の色に負けない色の面積が大きい服を着るといいと思います。

冬服の長靴の正解(その4)

長靴の色に負けないように洋服は色の面積が大きいアイテムを合わせる。

 

さらに、コートのボタンを締めてみてもいいと思いますよ。

 

 

―― 何の気なしに選んだ長靴ですが、だんだん愛着が持てるようになってきた気がします。

 

藤田:良かったです。ただ、振り出しに戻るような話で申し訳ないですが、大坪さんの長靴の場合、履き口がもっと高い方がいいと思いますよ。

 

藤田さんの長靴

履き口の高さによって長靴は見え方がかなり変わります。ちょっと僕のHUNTERの長靴も履いてみてください。

 

―― では、ちょっと失礼して履かせていただきます。

 

 

藤田さんの長靴の方が確かに、ちょっと長いですね。いかがでしょうか。

 

 

藤田:そうですね。今の長さならだいぶ、ちょっと露骨な言い方をすれば「おっさん感」が軽減された気がします。

 

―― 履き口の高さがちょっと違うだけで見え方が確かに変わりますね。

 

 

藤田:履き口の高さが1~2センチ増すと逆に除雪など作業のしやすさが落ちてしまうかもしれません。

 

なので、作業用の長靴とおしゃれに履きたい長靴とで履き分けた方がいいのかなと思います。

香林坊で会議があるなら長靴は履かない

―― ちなみに、スーツスタイルの時はいかがでしょうか。仕事中にスーツを着る場面も男性だと多いと思うんですけれども。

 

藤田:スーツに長靴を合わせるコーディネートは結構難しいと思います。もし僕が、今から香林坊の方で会議があるなら長靴はたぶん履いて行かないです。

 

ゴム底の革靴を履いたりサイドゴアの靴を履いたりします。強いて言えば、ショートの長靴になるでしょうか。

 

ただ、北陸の雪を考えると、ショートの長靴では高さが足りず雪や水で汚れてしまう場合もあると思います。

 

例えば、車の中にゴム底の革靴を入れておいて、シーンによって長靴と履き分けてもいいのかなと思います。車を持っている方に限られるかもしれませんが。

 

―― 作業用の長靴とおしゃれに履きたい長靴を使い分け、さらに、フォーマルな場面では長靴を避け、ゴム底の革靴を履き分けるなどの細やかな工夫も大切なのですね。

冬服の長靴の正解(その5)

冬の雪国の着こなしを一足の長靴だけで済ませようとしない。

編集長のコメント:都会的な印象のコートからアウトドアな雰囲気のあるアウターに切り替えて長靴を合わせた時の印象の違いは藤田さんの言うとおり大きく違って見えました。

 

アウトドアをルーツに持つ長靴にはミリタリーなど屋外で自由に動き回るために生まれた洋服を組み合わせていけばいいのですね。メンズの場合。

 

ちょっと話題に出てきたショートの長靴と色の問題を次は第3回ではあらためて考えます。)

土や砂、草、木など、もともと地球に存在する自然物の色。

靴のアッパー(甲革)側面に縫い込まれたゴム布。

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オプエド

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