暮らしの中で愛用する「道具と日用品」を北陸の人に聞いてみた(前編)

2021.07.12

第1回

暮らしのマンネリを打破してくれる

特集の始めに

「日ごろから美しいものに囲まれていないと文化性は身に付きませんよ」と〈HOKUROKU〉編集長の私・坂本はある大物の文化人であり経済人に取材で言われた経験があります。

 

美しいものに囲まれて日ごろ生きているかと問われれば「ごめんなさい」と言わざるを得ない私ですが、いわんとする意味は分かります。

 

例えば、ボールペン1つにしても、100円ショップで買った消耗品のボールペンと、こだわりのある名門ブランドのボールペンでは、走り書きでも違いをはっきり感じます。

 

書き心地の良さから得られる満足感は暮らしの豊かさにも影響しているはずです。

 

大量消費を前提とされていない道具たちは、見事な機能性と使い勝手で、普通とは違う体験=非日常感を使う人に与えてもくれます。

 

言ってしまえば、暮らしのマンネリを打破する力さえ優れた道具や日用品には秘められているのですね。

 

福井の海岸に打ち寄せられたごみの山

大量消費を前提とした消耗品は多くのごみを生む側面もあります。

 

目次ページでもちょっと書いたように、日本を代表するプロダクトデザイナーの柳宗理さんが「ものの使い捨て=ごみが増える=経済発展という社会の仕組みはおかしい」とどこかで発言しているみたいです。

 

福井の海岸に打ち寄せられたごみの山

 

北陸のごみ問題をHOKUROKUでもかつて取材した経験があります。

関連:コンビニやスタバへKeepCupを持ち込んでみた編。北陸で「コーヒータンブラー」のある暮らし

自前のコーヒー・タンブラーをお気に入りのカフェに持ち運んでコーヒーを飲むメルボルンの文化に憧れを抱き、どのようなコーヒー・タンブラーが北陸にはあるのだろうと調べ始めたところ、越前海岸(福井)に漂着する信じがたいほどのごみの山を目の当たりにしました。

 

対岸の朝鮮半島や中国大陸からごみの大半は押し寄せているのですが、一方で、福井の海岸を汚しているごみは福井県内の九頭竜川流域が出所になっているとも学びました。

 

「地に足の付いた生活と親和性の高そうな北陸の人たちが大量消費と結び付いた使い捨ての文化に甘んじているなんてちょっとクールじゃないよね」とHOKUROKUは考えます。

 

だからこそ「大量消費=ものの使い捨て」とは異なる価値観を北陸の人たちに提案できればと思い今回の特集を組んでみました。

 

九頭竜川(福井)の河川敷に散乱したごみの様子

Made in Hokurikuの日用品を使わないともったいない

国立工芸館のエントランス。撮影:笠原大貴

長持ちする道具を手に入れる上で私たちの暮らす北陸は幸いにも恵まれた土地です。

 

国立工芸館(金沢)を特集した際にも、作家の工芸・伝統工芸・民芸などが北陸に分厚く発展していると学びました。

関連:国立工芸館の唐澤館長に聞く。北陸の「工芸を巡る旅」のすすめ

金沢は言うまでもなく、輪島だったり、福井の越前だったり、富山の高岡だったりには技術と人材が集まっています。

 

さまざまなデザイナーやプロデューサーによってその魅力がさらに磨き抜かれ、道具と日用品の世界はいよいよ面白みを増しているわけです。

関連:北陸に大事な「考える技術」デザイン思考編。なにしろ同調圧力が強い土地柄なので

〈TOURISTORE〉(福井県鯖江市)に置かれた漆器

「せっかく北陸に暮らしているなら釣りをしないともったいないよ」だとか「ウィンタースポーツしないともったいない」などと、北陸に引っ越してきてよく地元の人に言われました。

 

ならば「せっかく北陸に暮らしているのなら身近な場所でつくられる道具と日用品を使わないともったいないよ」という考え方が同じようにあってもおかしくないはずです。

 

そこで、北陸の地にどのような道具や日用品があるのかを明らかにするべく、各界で活躍する北陸3県の人たち、中でも、道具や日用品の目利きに優れた人たちから、北陸生まれの愛用品を今回の特集では教えてもらいました。

 

ただし、聞く人の中には、道具や日用品を自分でデザインしたりプロデュースしたり販売したりする人も多く含まれています。

 

そこで「自分が関係していない道具や日用品を教えてください」と質問時には制限も設けました。

 

いわば、利害関係を超えて優れた目利きが選ぶ「Made in Hokuriku」の道具や日用品が並ぶわけです。

 

次のページから具体的な情報が出てきます。道具や日用品探しの1つのヒントにしてみてください。

 

四津川製作所(高岡)の花瓶〈RAPPA SLIM〉

ちなみに、HOKUROKUのEC(電子商取引)サイト〈北陸目録〉でも、HOKUROKUプロデューサーであり空間デザイン・インテリアデザインを本業とする明石博之が忖度(そんたく)抜きで推す北陸の道具と日用品を扱っています(まだ1つしかラインアップはないですが)。

関連:四津川製作所のRAPPA SLIMが海外で再評価。リバイバルした戦後生まれの花瓶【北陸目録】

「何だか部屋の雰囲気が整わないなー」と思う人は北陸目録も併せてチェックしてみてくださいね。

 

副編集長のコメント:知る人ぞ知る北陸の名道具の数々が次回から登場します。

 

素晴らしい道具を知るだけでなく、選んだ人たちが、どんな点に注目して道具を選んでいるのかにも注目してみてください。

 

新しい「ものの見方」にも出合えるはずですよ。)

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