漫画家ちさこ先生と考える。北陸にある「8番らーめん」の愛し方・愛され方。

2020.09.15

第2回

福井が「塩」派を底上げしている。

 

増田:〈8番らーめん〉の味について随分と盛り上がってくださっていますが、ハチバンの人間としてちょっと会話に入ってもいいですか?

 

―――はい、もちろんです。いろいろ補足をお願いします。

 

増田:もともと「味噌(みそ)」が多かったのは事実ですが、2000年(平成12年)ごろを境に「塩」のシェアが少しずつ増えていきました。

 

ハチバンの増田さん(写真右)

決定打として、2015年(平成27年)に全国ネットの某地方バラエティ番組で取り上げていただいた際、店舗でのお客さまへのインタビューシーンでたまたま「塩」派が多く取り上げられた出来事がありました。

 

そうするとお客さまの6割くらいは「塩」を頼まれるようになりました。

 

ちさこ:その番組、私も見ていました。あの時は確か「味噌だろ?」と思いながら見ていた記憶があります。

 

増田:ただ県別に違いがあるのです。富山だと圧倒的に「味噌」が人気です。実は「塩」は少数派なんです。

 

―――そうなのですか。もちろん「味噌」派の僕としてはうれしいですが。

 

増田:石川は「塩」が55%・「味噌」が45%くらいです。「醤油(しょうゆ)」も入れると割合としては5:4:1くらいですね。

 

―――「塩」がリードですよ、先生。石川県。

 

ちさこ:えー。

 

増田:福井が突出していて「塩」が7割です。先ほどお客さま全体で「塩」が6割くらいと言いましたが、福井が「塩」を底上げしています。ちなみに私も村中も「塩」派です。

 

村中:でも「味噌」も食べたくなるので「塩」と「味噌」と行き来しています。

 

―――この会話だけでも漫画のシーンが再現されているようですね。

〈鶏の唐揚げ〉は運動会の後だけ。

―――小さいころから食べていると先生は先ほど言っていましたが、8番らーめんのデビューはいつごろか覚えていますか?

 

ちさこ:物心がつく前には連れられていたので恐らく幼稚園のころには行っていたと思います。自分の中で記憶として覚えている時期は小学校1・2年生くらいからですけれど。

 

―――8番へ行く定番の流れはありますか? 例えば中学校の野球部の試合帰りにみんなで行く流れが僕は定番だったのですが。

 

ちさこ:私は、あまり友達同士で8番らーめんに行く流れはなくて、家族で行く場所という認識ですね。

 

実家に帰ったら家族で食べに行く、実家に居る時も家族で食べに行っていました。月に2~3回・いや月に4回くらいですかね。

 

家族みんなでワイワイ食べに行って、ラーメンを頼んで〈8番餃子〉と〈鶏の唐揚げ〉をシェアしてという。家族だんらんの味みたいな感じですね。

 

―――なるほど。8番餃子と鶏の唐揚げを必ず頼むとは標準的な北陸の家庭の感覚で言うと結構リッチな印象があります。うちはサイドメニューを頼めませんでした。

 

村中:うちもです。鶏の唐揚げは運動会の後とか頑張った後に「好きなもの頼んでいいよ」って言われていました。

 

増田:僕が子どものころはもも肉じゃなかったので頼まなかったです。8番唐揚げに使っている肉は胸肉でもも肉よりちょっと硬いんですね。

 

ただ胸肉だと硬いとかパサパサしているとお客さまからのご意見がありまして、調味料に塩麹(こうじ)を使ってジューシーに仕上げるように工夫しています。

 

8番らーめんの〈鶏の唐揚げ〉。(8番らーめんのホームページより)

ちさこ:そうなんですね。子どものころには全然普通に「おいしい、おいしい」って食べてたんですけど。そのころには改良された後だったのかな。

 

あと8番らーめんの鶏の唐揚げにはポテトが付いているじゃないですか? あれがまたちょっとうれしいですよね。

 

―――あー、分かります。あのポテトはどうして付けているんですか?

 

ちさこ:確かに知りたいです。

 

増田:あれはお子さま向けに付けています。お父さんお母さんが鶏の唐揚げを頼んだら子どもとシェアできるようにポテトを付けたことが始まりですね。

 

―――そうなんですね。何気なく聞いたつもりでしたが予想以上にハートフルな理由でした。

読んだ方から「分かっているな」と反応をいただきました。

―――今までの話を振り返ると8番らーめんには味の好みに派閥があり、県民によってその割合は異なっていると分かりました。ここで話すメンバーだけでも意見が割れていました。

 

小さいころの思い出についても、8番らーめんと運動会の思い出が絡んでいたり部活帰りの記憶とリンクしていたり、家族だんらんの懐かしさと結びついたりしている。

 

8番らーめんと言われれば、みんなが盛んに思い出をしゃべり始めます。やはり北陸の人たちの思い出の深い部分に8番らーめんはあるのだと思います。

 

ではちさこ先生への質問ですが、こうした北陸の人たちの暮らしと深く結びついた8番らーめんを扱うに当たって悩んだ点や苦労した部分があったら教えてください。多くの人にとって大切な存在であるからこそ逆に描く際には難しさもあったと思うのですが。

 

ちさこ:「8番らーめん」というワードを出せば、北陸の読者さんは盛り上がっていただけるのではないかと思っていました。

 

ひたすらみんなで「分かる、分かるよ、そうだよね」って言えるとか、おいしそうにラーメンを描こうとか、そういう部分に気を付けました。

 

また好きなメニューに偏りがあってはいけないと思ったので周りの友達にも聞きました。

 

例えば「酸辣湯麺(サンラータンメン)がおいしいんだよ」みたい話を聞いたりして、酸辣湯麺が好きなキャラクターも出したりしました。

 

―――酸辣湯麺とは8番らーめんの冬の定番ですね。酸味豊かなピリ辛とろみスープが特徴のメニューで酸味とコク深い味わいが印象的です。この酸辣湯麺も人気ありますもんね。

 

ちさこ:そうなんです。コアなファンが結構居るんです。酸辣湯麺を入れたおかげで読んだ方から「分かっているな」という反応をいただきました。「そうそう。酸辣湯麺がおいしいんだよ。よく知っているじゃん」って。

 

〈北陸とらいあんぐる〉第1話より。(C)ちさこ/KADOKAWA

ちさこ:県外の人は8番らーめんを一方で知らなくて。漫画として北陸以外の人が読んだ時にも8番らーめんがどんな存在かちゃんと分かるようにしないといけません。

 

普通のラーメンとの違いはもちろん私たち北陸人の心にはこれだけ8番らーめんがあるという話を伝えたいなと思いました。

 

野菜がたくさんのっているラーメンで北陸の人たちが盛り上がれる話題だという風に描いています。

 

北陸とらいあんぐる第1話より。(C)ちさこ/KADOKAWA

(編集長のコメント:お父さんとお母さんの頼んだ唐揚げに子どものシェアできるポテトが含まれているとはいい話ですね。

 

「なんでやろ、8番」のキャッチコピーの真相に次は続きます。)

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