漫画家ちさこ先生と考える。<8番らーめん>の愛し方・愛され方。

2020.09.14

第1回

北陸の人が「おいしいよね」と言い合える共通の食べ物。

 

こんにちは。HOKUROKU副編集長の大坪史弥といいます。

 

今回の特集テーマである<8番らーめん>は、富山出身の僕にとって、中学校の野球部の試合帰りにみんなで行った、思い出深い場所です。

 

進学と就職で富山を離れていた時も、帰省時に「なんでやろ、8番」というキャッチコピーのテレビコマーシャルを見ると、吸い込まれるように行っていました。

 

子どものころから食べていて、大人になっても食べていて、今でも気が付けば足が向いている、「なんでやろ、8番」という言葉は、まさに僕のような北陸の人たちの「8番」に対する感情を、見事に表していると思います。

 

加賀市にある8番らーめん本店。

8番らーめんは、北陸ではご存じの人も多いように、1967年(昭和42年)に石川県加賀市を通る国道8号線沿いに誕生した歴史があります(その1号店は、2016年(平成28年)8月8日に国道8号線の拡張工事にともなって、1kmほど離れた場所に移転新装オープンしています)。

 

その誕生から50年ちょっとが経過した現在は、石川、福井、富山の北陸3県を中心に、100店以上ものお店が存在しています。北陸のソウルフードとも言えるくらい、北陸の人たちにはなじみの深い存在となっているはずです。

 

新型コロナウイルス感染症の影響が続くで、全国のレストランや居酒屋などの外食チェーンが苦戦を強いられている中でも、8番らーめんは関連の特集「『8番』の本店で聞いた。<野菜トマトらーめん>の通な食べ方講座。」で取り上げるように、2020年(令和2年)9月4日発売開始の<野菜トマトらーめん>が、現在大ヒットを記録しています。

 

普段は当たり前すぎて見過ごしているけれど、よくよく考えたら、とてつもなくすごいラーメン屋が、北陸にはあるわけです。

 

そんな身近な存在にあらためてしっかりと目を向ければ、見慣れたお店の見方が深まり、愛着も増して、今よりも食事が楽しく、おいしくなるのではないか。

 

『HOKUROKU』のミッションである「北陸の暮らしを再編集して、マンネリ化した日常に新鮮さや驚きを取り戻す」という狙いにも合致するのではないか。そんな考えから、特集の準備をスタートしました。

 

8番らーめん本店の店内。

コンテンツ化にあたって、まずは誰かの8番らーめんに対する大切な思い出を聞いてみたいと思いました。今回の特集に全面的に協力してくれた株式会社ハチバンとHOKUROKU編集部で話し合う中で、浮かび上がってきた人は、漫画家のちさこ先生。

 

2015年(平成27年)に長野・金沢間で開業した北陸新幹線に合わせて描かれた、北陸3県から東京の女子高に進学した3人の高校生がヒロインの学園ライフコメディー『北陸とらいあんぐる』の作者です。

 

『北陸とらいあんぐる』(ちさこ著、全6巻、KADOKAWA刊)(C)ちさこ/KADOKAWA

作中には北陸名物の食べ物や北陸の「あるあるネタ」が登場し、北陸民なら「あぁ、分かるなぁ」と思う内容ばかり。その第1話には8番らーめんも登場します。

 

「きっとこの作者に話を聞けば、8番らーめんの思い出や、漫画を描く際の取材で知った意外な真相について、聞かせてもらえるに違いない」

 

そんな思いから、実際にコンタクトを取り、オンライン取材を打診してみました。すると、顔出しはNGながらも、特別に自画像と作中のコマを借りて、取材を受けてくれる話になります。

 

次から始まるインタビューは、そのちさこ先生と話した会話の様子です。新型コロナウイルス感染症の対策として、オンライン上で話しています。

 

せっかくならばと、間に入って取り次いでくれた株式会社ハチバンの社員にも同席をしてもらい、HOKUROKUが司会進行役を務め、ちさこ先生に思い出を語ってもらい、その都度ハチバンの人たちにも会話に入ってもらう形をとりました。

 

<野菜らーめん>の味の派閥問題だとか、<鶏の唐揚げ>にどうしてフライドポテトが付いてくるのだとかなど、興味深いトリビアも次々と出てきます。ぜひ、最後まで読んでみてください。

譲れない「戦い」。

インタビューアーの大坪史弥。オンライン座談の様子を画面キャプチャーして掲載。

大坪:本日はよろしくお願いいたします。今日は北陸のソウルフードである8番らーめんについて、みなさまの思い出を聞きたいと思います。

 

また、今日はハチバンの方々にも来てもらっているので、みんなの思い出に絡めて、「8番」のちょっとした裏話なども聞かせてもらえるとうれしいです。よろしくお願いします。

 

一同:よろしくお願いします。

 

『北陸とらいあんぐる』作者のちさこさんの自画像 (C)ちさこ/KADOKAWA

株式会社ハチバン、営業戦略部の村中さん(写真左)と増田さん(写真右)。オンライン座談の様子を画面キャプチャーして掲載。

大坪:早速ちさこ先生に質問ですが、『北陸とらいあんぐる』の第1話には、8番らーめんが出てきます。どうして「8番」を扱おうと思ったのでしょうか?

 

ちさこ:一番大きい理由は、石川で生まれ育って石川を離れるまでの間に、しょっちゅう8番らーめんを食べていたからです。それに加えて北陸とらいあんぐるは石川、富山、福井の人が共通で理解し合えるテーマを扱う漫画にしたいと思いました。

 

実は『北陸とらいあんぐる』の編集担当さんは富山県出身だったんですよ。北陸3県の人が「おいしいよね」と言い合える共通の食べ物は何だろうと2人で話し合った結果、やっぱり8番らーめんしかないよね、となりました。

 

『北陸とらいあんぐる』第1話より。(C)ちさこ/KADOKAWA

ちさこ:みんなで共通して8番らーめんが好きだという状況があり、「塩」派とか「味噌(みそ)」派が居たり、派閥があったりする、そういった部分を取り上げれば楽しいと思ったのが理由です。

 

大坪:確かに同作の第1話では、8番らーめんのスタンダードな味はどれかと、言い争うシーンがあります。

 

『北陸とらいあんぐる』第1話より。(C)ちさこ/KADOKAWA

大坪:このシーンを読むまで、8番らーめんに「塩」派とか「醤油(しょうゆ)」派とか派閥などないと思っていたんです。だって、誰もが8番では「味噌」を食べてると思い込んでいたからです。

 

ちさこ:分かります、分かります。私も「味噌」がスタンダードだとずっと思っていました。「え、塩食べてる人居たの?」みたいな。

 

でも、先ほどの編集担当さんは逆に「塩」しか食べない人でした。富山県は「塩」派の方が多いんじゃないか、とも話していましたね。

 

大坪:そうなんです。僕も富山出身ですが、この取材にあたり周りの友達に聞いてみたんです。そうしたら圧倒的に「塩」が多いんですよ。てっきり「味噌」かと思っていたので、結構びっくりしましたね。

 

ちさこ:『北陸とらいあんぐる』には富山出身の黒部りつというキャラクターが登場します。彼女は「塩」派です。

 

富山出身の編集担当さんが「塩」だって言い張ったので、そのままキャラクターのせりふに採用しちゃったのです。

 

だから、第1回の8番らーめん派閥争いのシーンは、大体私と編集担当さんの会話そのまんまなんです。

 

大坪:なるほど、そうだったのですね。ちなみに、ちさこ先生が「味噌」派の理由は何かありますか?

 

ちさこ:なぜでしょう。「味噌」が一番おいしいからとしか言えないですが、子どものころから「味噌」を食べていて、何かに浮気をしても結局また「味噌」に帰ってきてしまいます。

 

大坪:分かります。実家くらいの安心感がありますよね。

 

(編集部コメント:引き続き、第2話へどうぞ。)

この記事を書いた人

大坪 史弥

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