羨望(せんぼう)のまなざしをもってうわさされる感じ
四津川製作所(富山県高岡市)の香炉
〈北陸目録〉がこんな風になればいいなと最後に筆者の個人的な願いを書きます。
まず、将来的には〈ほぼ日手帳〉みたいに、HOKUROKUのオリジナル商品も北陸目録で扱いたいと思っています。
いかにもヒットを狙いましたみたいな商品ではなく、特集を組んでいく中で自然発生的に生まれてくる何かだといいなと思います。
例えば、今までHOKUROKUではコーヒータンブラーの話だとか、長靴の話などを特集してきました。
関連:コンビニやスタバへKeepCupを持ち込んでみた編。北陸で「コーヒータンブラー」のある暮らし
世の中にはすでに素晴らしい商品は幾つもありますが、北陸の地域に根差した発想で考えた時、「ちょっとなじまないんだよなー」「かゆいところに手が届いていないんだよなー」と感じる瞬間もあるはずです。
例えば、過去の特集で取り上げたオーストラリアのメルボルン発〈KeepCup〉のコーヒータンブラー。
「これがなんだかよく分からないけれど、デザインがおしゃれだから買っていく」人がカフェのまち・メルボルンには居て、コーヒーショップでその人たちが使い始めると、爆発的にヒットした背景がありました。
メルボルンのまち中でKeepCupを眺めると確かに格好いいのです。
しかし、イタリアで買った服を日本に持ち帰ると「何でこんな服を買ったんだっけ」と恥ずかしくなるように、KeepCupを買って日本に持ち帰ると、北陸の空や景色の中で見た時に、「ん? なんか、ちょっと違うぞ」と感じてしまいます。
ある北陸のデザイナーが、「異文化をそのままローカルに持ち込んでも絶対に広まらない」と言っていましたが、プロダクトの世界も同じなのでしょうか。
北陸に持ち込んだ途端に大切な何かがこぼれ落ちてしまうのなら、北陸のつくり手につくってもらい、そのストーリーをHOKUROKUで追って、北陸目録で買えるようにする、そんな循環がつくれれば、みんなにとってすてきだなと思います。
目指す状態は、外から北陸に遊びに来た人たちが「北陸でさ、あの長靴履いている人をすごく見るんだけれど、何なのあれ?」と、羨望(せんぼう)のまなざしをもって、うわさされる感じです。
もちろん「北陸3県の人口なんて合計しても294万人くらいしか居ないけれど、そんな小さなマーケットに向けてオリジナル商品をつくって、ペイできるの?」などと、経済や経営に詳しい人に言われたら、私としてはしょんぼりと肩を落とすしかありません。
でも、北陸に引っ越しを考えている人や、北陸で生まれて帰ろうとしている人を含めれば、500万人くらいは居るような気もします。
500万人と言えばニュージーランドの人口と同じくらいです。なんとかなるんじゃないのと、今の段階では気楽に考えています。
敗戦直後に生まれた花瓶をリバイバル
四津川製作所(富山県高岡市)の〈RAPPA SLIM〉
最後に、北陸目録で最初に取り扱う、いわば北陸の目録第1号のアイテムを告知しておきます。
海外での再評価を受けて、敗戦直後に生まれた花瓶をリバイバルした四津川製作所(富山県高岡市)の〈RAPPA SLIM〉です。
四津川製作所の創業者・四津川幸雄さんが、戦後の1946年(昭和21年)に創業して間もなく、当時の「日展」作家・村田吉生さんと組んで、真ちゅうの花器をつくりました。
その花瓶は半世紀以上、世間からは忘れ去られていました。
しかし、四津川製作所が出展した海外の見本市で、売り物ではなく飾りとしてブースに置いたところ、海外のバイヤーの目に留まり、商品として復活を果たした経緯があります。
復活までの背景については、四津川製作所の3代目社長・四津川元将さんに、たっぷりと聞かせてもらいました。
北陸目録の「バイヤー」である明石博之も、「フランスやベルギーのアンティーク品のような印象を受けた」と称賛を惜しまない花瓶です。
それでいて、伝統的工芸品の産地である北陸の高岡で生まれた花瓶ですから、北陸の暮らしにもとても似合います。
新型コロナウイルス感染症の影響で、外出の自由に制限が課せられている昨今です。暮らしに漂う閉そく感を打ち破るために、花の力を借りてみてはどうでしょうか。
北陸で活躍するフローリストは、花こそが最も気軽に、経済的な負担も少なく、部屋の「模様替え」を可能にするツールだと言っていました。
その花を生けるベースとして、RAPPA SLIMを北陸目録では自信をもって推薦しています。
詳細は間もなく公開される北陸目録で。「どんな花を飾ろうかな」と楽しい毎日の「悩み」を満喫してくださいね。
(副編集長のコメント:北陸目録で生み出したい未来をお届けしました。
〈IKEA〉や〈marimekko〉など北欧ブランドが最近は日本で人気を集めていますね。同じように北陸のライフスタイルやブランドが北陸以外の地域、もっと言えば世界から人気を集める日も来るのではないかと、ひそかに思っています。
そんなばかな、と思われるかもしれません。ですが、日々取材で北陸の人や物と出会い(出合い)続けていると、出来ると思わずにいられないのです。
北陸ブームの火付け役を北陸目録は目指します。どうぞお楽しみに。)
文:坂本正敬
写真:山本哲朗
編集:大坪史弥・坂本正敬
編集協力:明石博之
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