ふるさと納税事件編。弁護士Iからの「謎解き」挑戦状

2020.08.18

第2回

ボタンの掛け違え

※写真はイメージです。Steven Lilley〈flickr〉

事の経緯その1

〈ふるさと納税〉の制度は「古里(ふるさと)」と名乗りながら自分の生まれ故郷ではなくどの自治体にも納税できる。

 

自治体側もより多くのお金を集められるように「返礼品」を充実させる。

 

当然そうなると多くの人は、自分のふるさととは関係のない「お得」な自治体を寄付先として選ぶようになる。

 

より返礼割合の高い「見返り」を用意する「返礼品合戦」と結果なっていった。

 

そんな「合戦」の最中、多くの寄付金額を集める自治体が大阪府の泉佐野市だった。

 

泉佐野市への寄付は2011年度まで年間1000万円前後にとどまっていた。

 

しかし、2015年度には約12億円、2016年度には約35億円と順調に伸びて、2017年度には全地方団体の中でトップの約135億円を集めた。

 

こうした状況を国も放っておいたわけではない。

 

総務大臣は自治体に対する技術的助言として2017年(平成29年)4月、寄付金の額に対する返礼品の金銭的価値の割合を3割以下にするように求め、翌年には返礼品を地場産品に限るように求めた。

 

しかし、総務大臣による技術的助言は「助言」にすぎない。法的な拘束力もないため泉佐野市は従わなかった。

 

2018年(平成30年)11月から翌年3月までの期間、泉佐野市の返礼割合は平均43.5%に達した。1,026の返礼品のうち745品目は地場産品ですらない。

 

しかも「100億円突破キャンペーン」「300億円限定キャンペーン」「泉佐野史上、最大で最後のキャンペーン」などと称し、寄付金額の一定割合のAmazonギフト券を交付するなど総務省の助言を無視し続けた。

 

結果として泉佐野市は2018年度に史上最高額の約498億円の寄付を集める。

 

ふるさと納税は本来、古里やお世話になった地方団体へ感謝・応援の気持ちを伝える目的があった。

 

この目的を忘れ去るような「返礼品合戦」に内閣府は対策を講じた。この一手が結果として国と地方の徹底抗戦の引き金を引く。

 

編集長のコメント:次は第3回。総務省と泉佐野市の法廷闘争の物語です。)

納税額と返礼品の金銭的価値の割合。1万円の納税額に対して1万円の現金価値がある返礼品を自治体が用意すれば返礼率は100%。

大阪府南西部にある湾岸の自治体。関西国際空港が有名。

技術的助言とは、地方公共団体の事務に関する地方公共団体への助言。客観的に妥当性のある行為・措置を実施するように促したり、実施するために必要な事項を示したりする。

2018年(平成30年)4月

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