梨泰院クラスごっこ
―― これまでの経緯が分かりました。その流れを経て、オリジナルブランドの〈和来-waku-〉を出されました。
不勉強で申し訳ないのですが、こうしたブランドづくりはKazuさんにとって初めての試みですか?
Kazu:はい。そうです。インフルエンサー周りで自分のブランドを立ち上げる話はよくありますが、あまり面白いと僕は感じられなかったので、これまではやってきませんでした。
しかし、「ブランドつくりませんか?」との話が昨年末に来て、最初はどうかなと思ったのですが、周りに相談してみると、僕のプロジェクトなのに、地元で助けてくれる・協力してくれるという声が聞こえてきたんですよね。
なら、自分のまちで自分がブランドづくりして、福井の観光だとか消費だとかが良くなるならも面白いんじゃないかと思えたんです。
〈梨泰院クラス1(イテウォンクラス)〉っていう韓国ドラマ、ご存じですかね。リメイクドラマが日本でも始まるみたいですが、ストーリーの1つの柱として、まちを盛り上げる、まちを良くしていくぞーっていう話があるんですよね。
なので「梨泰院クラスごっこ」をやりたいなというか。
福井というまちを自分だけ良くしてもあかんで、僕のブランドを通じて周りごと良くできるといいなと思っています。
プラスして、福井の観光事業を考える集まりにボランティアで今携わっているんですよね。
どうすると福井が良くなるのかといったテーマで、市長とかが集まってきて、福井をどうしたらいいのか考える会議です。
あんまり空気も読めないんで、この感じのまま会議に参加して「SNSで盛り上げたらいいんじゃないのかとか皆さん言っていますが、皆さんのSNSの状況を見る限り、誰一人としてちゃんとやっていません。駄目ですよ」とか言ってます。
この前は、福井市長からのメール連絡に「👍」の絵文字1つで返して済ませました。いつでも、こんな感じです。
ただ、県庁の若い人らと付き合いができてくると「良くしたいんです」という思いがすごく伝わってくるんですよね。ちゃんと思いを持ってやっているんだなと思って。
県に恩返ししたいとまで思っているかは分からないですけど、自分も楽しく、相手も楽しくなるなら何かをやれたらいいなと思いました。
メーカーの人より恐らく履いている
―― ブランド名は公募だと聞きました。名前選びも含めて、ブランドとしての大まかな狙いを教えてください。
Kazu:自分の名前・勝村和央(かつむら・かずひさ)にも入っている「和」を選びこそしましたが、あまり自分らしさを出さないようにしています。
ファングッズというより、純粋にブランドとして売り出したいと思いました。
「和」には、和ませる・協力する、そんな意味合いもあると思います。今からやるブランドづくりにぴったりだなと思いました。
―― そもそも論として、どうしてアウトドアグッズなのでしょう。
Kazu:普段、動画内で自分が楽しんでいるって理由ももちろんあります。
―― 詳しく知らない読者のために補足しておくと、Kazuさんの動画には、アウトドアだとかDIYだとかの動画がたくさんあります。
Kazu:あと、基本的に普段からよう着ているんですよね。
カーゴパンツが特に大好きで、買っては「ごめん」、買っては「ごめん」の繰り返しで、いろいろなメーカーの製品を履き替えてきました。
いろいろ批評しながら行き着いたメーカーのカーゴパンツを、2年・3年・4年と連続して履き続けた時もありました。
―― 毎日ですか?
Kazu:基本、1年を通じてそれしか履いていませんでした。メーカーの人より恐らく履いていると思います。
その行き着いたブランドの製品も、1年に1着履きつぶして、2枚、3枚、4枚あたりで止まって、僕自身のブランドのカーゴパンツに移行しました。
やっぱり自撮りするんで、ポケットにカメラを突っ込んだり、いろいろな機材を突っ込んだりするんですよね。
カーゴパンツじゃないと、もう生きていけんわけで。
で、毎日自分が身に着けるカーゴパンツだったらつくりたいと思って、アウトドアブランドに行き着きました。
―― 製品上のこだわりはどういった点にあるのですか?
Kazu:細部までかなりこだわりました。デザイン設計の段階で、めちゃくちゃデザイナーさんに言っています。
「〈iPad mini〉がぴったり入る大きさにしてくれ」とか、「左右で入れたい道具が違うから、ポケットの大きさと高さを変えてくれ」とか。
―― 素朴な疑問ですけど、カーゴパンツを年中履くとなると、夏暑くないですか?
Kazu:あくまでも僕の感覚で言えば、和来-waku-のカーゴパンツは、めちゃくちゃ速乾性があるように思います。これ、だいぶスース―する気がするんですよね。
カーゴパンツの試作品ができた時期が12月とか1月だったのですが、半ズボンかなと思うくらい、めっちゃくちゃ寒かったです。
何かで数値を出したとかじゃないのですが、夏でも通気性は最高だと思います。冬は考えものですが(笑)
「だで、これつくろう」
―― ベストも機能性を重視していますよね。
「スマホ」を入れる特別なポケットが胸の位置に出し入れできて、ハンズフリーで動画撮影できるなんて、ユーチューバーのKazuさんらしいデザインではないでしょうか。
Kazu:和来-waku-のものづくりでは「普段の生活を楽しく生きてください」との思いを込めています。
とにかく、普段使ってもらいたいブランドなんですよね。
―― 確かに、動画を撮る習慣が普段ない私ですら、ベストの「スマホ」ポケットに携帯端末を入れて、料理動画でもつくりたいなと想像力が働きました。
Kazu:ここまでの主力商品はアパレルが中心となっていますが、プレート(皿)もつくっています。
アウトドア商品ではあるのですが、子ども用プレートが最初のヒントになっていて、A5サイズくらいのチタン製の商品です。
このサイズ感で、お皿の中も仕切られているので、アウトドア用として最高なんですよね。家では、食器洗浄機にも入りますし。
もともとは自分が欲しくて探していたのですが、全ての条件を満たす格好いい商品がないんですよ。
妻は妻で、プラスチック製の子ども用の食器皿(プレート)の成分が気になると言っていました。
でも、子ども用皿も見つからない。
「だで、これつくろう」と動いています。
―― 地元の企業が絡んでいるのですよね?
Kazu:はい。メガネ産業が福井では発達しています。チタン加工とかは、すごく技術力が高いんですよね。
地元が得意とする技術でどうせならやってみたいなと思って。
―― 素人考えですが、子ども用プレートとしても使う食器皿は、金属製でも大丈夫なのでしょうか。
プラスチックの成分が気になるとの声が奥様からあったように、金属アレルギーを心配する声も出てきそうです。
Kazu:チタンって、金属アレルギーがとても少ないです。熱を加えた時にチタンの何かが食品に溶け込む心配もありません。
「最強の金属」と言われるくらいなんですよね。
ちょっと値段が高く、加工が難しいというハードルがありますが、予算的にも技術的にも他県では無理だった製品化を、チタンに精通している地元の会社に相談したら「いけますよ」って話になって。
―― すごいですね。
Kazu:そうなんです。福井、すごいんです。自分が欲しかったプレートが、めちゃくちゃお金がかかっちゃったけれど、つくれるかもしれないわけで。
―― また、ワクワクした顔、しちゃっているじゃないですか。
Kazu:やべーな、これって感じです(笑)
普段からヘビーに使っている製品をやっぱり中心につくりたいんですよね。
完全な主夫ではないですけど、ぼちぼち僕は主夫なんです。洗い物もするし。
それでも、やりたいことがいっぱいあるから、普段は快適に楽していたいんです。
だから、和来-waku-を使ってくれる人たちにも、普段の生活をより楽に快適にしてもらって、その空いた時間と労力で楽しく生きてもらいたいんですよね。
―― 逆に、自分で全く興味ない商品ってつくれます?
Kazu:興味が向かんです(笑)ばちばちに格好いいファッションアイテムだとかは、僕の仕事じゃないなと。
―― では、ファッショアイテムに近いTシャツにはどんな狙いが込められているのですか?
Kazu:Tシャツに関しては、素材さえ良ければいい、そんだけでしたね(笑)
「素材は、ナイロンとコットンの合わせ技で、ちょっとさらさらっとした、着心地のいいやつにしておいて」みたいな。
―― だいぶ、熱の入れ方が違いますね。
Kazu:やっぱり、TシャツはTシャツだなと思って(笑)
ただ、物販や商品開発自体は天職だと思っています。
ものづくりをする場合、インフルエンサーはフィードバックをたくさんもらえる立場でもありますし。
こちらの思いを感じてくれた人から「めちゃくちゃ良かったです」というコメントが来るとたまらないです。
カーゴパンツに続いて、短パンも今つくっているところです。1着あれば、水着にもランニングウエアにもなって、ポケットもたくさんあるみたいな。カーゴパンツより値段が高くなっちゃいそうで困っているんですが。
リュックも考えています。
―― 和来-waku-では、格好いい・おしゃれ重視ではなく、毎日の生活を楽しく快適に送れる実用性の高いアウトドア商品をどんどん送り出していく感じなのですね。
除雪や庭いじり、タイヤ交換など、アウトドア的要素が生活の近くにたくさんある北陸の暮らしを考えると、北陸人にぴったりのブランドかもしれませんね。
(副編集長のコメント:「だで、これつくろう」っていいですよね。
インフルエンサーのブランド立ち上げは数多くあります。
アパレル・飲食店・脱毛サロンなどなど。
僕は、ファンであることと物欲がリンクしないタイプなので、そんなに欲しいと思ったことはありません。
ですが、同じ北陸に住み、地域の企業と連携して生まれたブランドとなると食指が動きますね。初めての感覚で驚きました。
自分の暮らしと地続きな人の商品には興味がわくのだなと感じています。
次回からは、本題の地方暮らしの幸せと楽しみ方を聞いていきます。)
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