富山で電柱に上っていました
前書き
人気動画クリエイターでありトップユーチューバーの1人でもあるKazuさんは福井の人です。
「それだけで福井ってすごいですよね」と〈HOKUROKU〉編集長の私・坂本などは思いますが、福井在住ではない、あるいは〈YouTube〉を熱心に見ない人の中には知らない人もいるはずです。
そこで、Kazuさんがどれだけすごい人なのか、ちょっとだけ冒頭で書いておきます。
YouTube上に公開される〈カズチャンネル/Kazu Channel〉の登録者数は187万人、大手動画クリエイター事務所UUUM株式会社(東京)に初期から在籍し、スターユーチューバーの1人として、国内の「好きなYouTuberランキング」では上位常連の人でもあります。
今回の取材で一緒に行動したメンバーたちの中にもファンが多く、富山・福井の往復で運転を担当してくれたドライバーからは取材前に、
「あのカズさんですよね?」
と、疑わしく念を押されたくらいです。
そんな動画クリエイターのKazuさんに、地方の面白がり方について、HOKUROKUで取材させてもらいました。
Kazuさんの家と事務所の間にある中庭が今回の取材場所です。
風通りも素晴らしいその中庭からは、家屋や事務所の1階にあるガレージが見通せて、たくさんの遊び道具、DIYツール、運転席の天井が高さ3mにも届きそうな除雪車などが見えました。
きっとどれも、動画制作の「大道具・小道具」です。
いかにも、ユーチューバーの家兼事務所っぽい空間に身を置いていると、Kazuさんの動画づくりにおける「書割」の一部に自分が組み込まれた気になります。
そんな中で、インタビューがスタートしました。
目次ページでも書きましたが、Kazuさんとはどんな人なのかを最初におさらいます。もちろん、ファンの方でも、Kazuさんの知らない一面を新たに知れるはず。
Kazuさんが手がけた和来-waku-についての話を経て、後半からは、Kazuさん流の地方の面白がり方を教えてもらいました。
尻上がりにお役立ち度は増していき「面白かった」と最後はきっとなります。キーワードは「尊敬できる先輩」だとか「地方に戻れば鬼優秀組」だとか「親を頼って夢を追う」だとか。
すでに北陸に住んでいる人はもちろん、地方移住、田舎暮らしなどに興味がある人も最後までぜひ読み通してみてくださいね。
特に、都会に今はいるけれど、地方の地元に帰ろうか悩んでいる人は必見です。
「あんちゃん、見てるよ」と70代に言われるユーチューバー
―― はじめまして。
富山を拠点に、北陸3県の情報を発信するHOKUROKU編集長の坂本と申します。
トップユーチューバーの1人であるKazuさんに取材させてもらえて大変光栄です。
Kazu:いえいえ。
―― 今日のテーマは「地方の面白がり方」です。
私たちHOKUROKUでは「マンネリ化した北陸の日常にドキドキとワクワクを取り戻す」ための情報発信を心がけています。
Kazuさんがリリースしたオリジナルアウトドアブランド和来-waku-のコンセプトにも「地元でも、ワクワクできる・面白い企画ができると体現したい」「和+未来で、ワクワクする未来を人の『和』でつくっていく」といった言葉が並んでいます。
動画を見ていない人からするとピンと来ないかもしれませんが、福井の暮らしを誰よりも楽しんでいる(ように見受けられる)Kazuさんです。
そんなKazuさんと、動画づくりやアウトドアブランドづくりを題材にしながら北陸の暮らしについて語り合えば「地元がつまらない」と半ば諦めている人への心構えや金言が聞けるのではないか。
若者の人口が流失し続ける北陸の問題にも何か一石を投じられるのではないか。
そんな風に感じて、今日は声をかけさせてもらいました。
Kazu:そんなに流失していますか?
―― はい。少なくとも富山は。若い女性の人口流失が特に目立っているみたいなデータをある人に最近見せられました。
福井も似たような状況なのではないでしょうか。
だからこそ、地方の楽しみ方・面白がり方について、Kazuさんの考えを聞かせてもらえればと思います。
Kazu:分かりやすい説明ですね。なんか話せそうです。
―― とはいえ、トップユーチューバーの1人であるKazuさんを知らない人もきっといるはずです。
そこで、Kazuさんの人となりというか、これまでの歴史をまずは簡単におさらいさせてください。
Kazuさんは、有名ユーチューバーの中でもきっと最古参の方ですよね。ユーチューバーが社会的にまだ認知されていない時代からやってきたと言うか。
そもそも論として、どうしてユーチューバーになったのでしょう? 昔から、人前に出て誰かを楽しませるといった子どもだったのですか?
Kazu:いや、そうじゃなかったんですよね。小・中・高を通じて学校時代は目立つ側じゃなかったです。中学校の先生も僕が、人前に出て動画を配信するなんて信じられないと言います。
リーダーの柄でもなく、運動神経も悪かったし、勉強もできませんでした。ちゃんと平均より下を歩んで、真面目だけが取りえでした(笑)
―― ちゃんと平均より下、笑っては失礼ですが絶妙な表現ですね(笑)でも、こうして今は、よどみなくお話されるじゃないですか。
Kazu:YouTubeも話す練習で始めたんですよね。
しゃべれなくて、しゃべれなくて。大人になっても皆の前で本当にしゃべれなくて、皆の前でしゃべれるようになろうと思って始めました。
始めてみると皆さんが意外に応援してくれる、協力してくれると気付きここまで来ました。
―― なんで、皆さんが、Kazuさんをこうも応援してくれると思いますか?
アウトドアブランドの和来-waku-をつくる際にも「Kazuさんがやるんだったら赤字でもいいから協力する」みたいな業者も出てきたと何かで読みました。
Kazu:何ででしょうね。危険性がないっていうのを感じてくれたんじゃないですか。炎上系ではないぞと(笑)
あとは、大雪で福井が困った時にふるさと納税したんですよね。
―― 2021年(令和3年)1月に福井(日本海側)を襲った大雪の状況や支援を訴えた投稿動画の話ですね。
Kazu:はい。その反響が大きくて、新聞やテレビといった地元のメディアに取り上げてもらいました。
だから、高齢の方にも知ってもらっているんですよね。50代・60代・70代の方々からも、
「あんちゃん、見てるよ」
と言われる、かなり特殊なユーチューバーだと思います(笑)
めちゃくちゃでかい工場が建った
―― ユーチューバーになる前は会社員だったと何かで読みました。
Kazu:そうです。学校を卒業して、北陸を代表する電気工事の大手で、北陸電力グループの北陸電気工事株式会社(本社:富山県富山市)に就職しました。
―― 富山に本社があるあの会社ですか?
Kazu:そうです、そうです。北陸の電柱に上っている人の半分くらいは北陸電気工事の人だと思います。
山の上にある大学の横に研修所があって、コンビニもない環境で電柱に上る研修を3カ月くらいしました。
1年半ほどその会社に在籍した後に、親せきのおじさんがやっているシアタースクリーンの製造会社に入り、インターネットとようやくそこで触れ合うんですよね。
今から20年くらい前ですが、すごく早い試みとしてその会社はネット販売していました。楽天の知名度もほとんどなかった時代です。
そこで、ネットって面白いんだなと知りました。
スクリーン製造を1年目はちゃんとやっていたのですが、インターネットへの興味が2年目には出てきちゃって。
いろいろ教えてもらいながら修行して4~5年で独立、ウェブ制作会社を立ち上げました。
―― ウェブ制作会社ではどのような仕事を具体的に手がけていたのでしょう?
Kazu:企業ホームページです。ちょっとしたコンサル業務も兼ねた物販がメインで、売り上げに応じて自分の報酬が決まるようなビジネスでした。
売らないと駄目な環境でしたが、なかなかいい感じで業績も出ました。
例えば、お手伝いしたみそ屋さんでは、ネット販売の物販だけで2倍~2.5倍くらい売り上げが毎年伸びて、めちゃくちゃでかい工場が建ったんですよ。
―― それだけ仕事で成功しながらもユーチューバーになるんですよね。
始めたきっかけは、何かの家電紹介ビデオをYouTubeで見て、自分も動画をつくりたいと思ったからだと過去の取材記事で読みました。
Kazu:そうです。それで、始めてみるとYouTubeが楽しくなってしまいました。
―― 最初は、再生数が3人だったと聞きます。
Kazu:最初は少なかったですよね。
―― その状態で、ウェブ制作会社をいきなり畳んでしまったのですか?
Kazu:もちろん、YouTubeで食べられるようになってからです。
食べられるようになるともう我慢できない、専念したいと思うようになります。そこで「うちは収入要らんから」と他の制作会社に仕事を受け渡していきました。
―― 仕事を、あげちゃったのですね。
Kazu:はい。ですが、先ほどのみそ屋さんをはじめ、お世話になったクライアントばかりです。
「ちゃんと面倒見てあげてね。売り上げが落ちていくのは見たくないし」という思いで1~2年ほどの時間をじっくりと引継ぎに費やしました。
―― ウェブ制作時代のノウハウはYouTubeづくりにも生かされているのでしょうか。
Kazu:それはあるかもしれません。
もともとの仕事柄、どうやったら売れるんだろう、どうすれば心に響くんだろうと自然に考えちゃっている部分がありますね。
(大坪副編集長のコメント:アウトドア用品や家電を購入する際、Kazuさんの動画に何度お世話になったか分かりません。
そのKazuさんが、私の住んでいる富山の電柱に上っていたかもしれないと思うと急に近い存在に感じました。
次回は、和来-waku-を立ち上げる経緯を聞きます。キーフレーズは「だで、これつくろう」です。)
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