川柳と俳句の違いも学べます。移住者たちの川柳「金猫賞」発表の話

2020.10.19

vol. 01

ぜいたくはス敵だ

写真:アンサイクロペディアより

〈HOKUROKU〉が世の中にリリースされるよりも前の話。

 

この文章を書いている編集長の私(坂本)は副編集長の大坪史弥と一緒に日本新聞博物館(神奈川県)で開催された企画展〈地域の編集 ローカルメディアのコミュニケーションデザイン〉へ足を運びました。

 

宮城県仙台市を中心に〈みやぎシルバーネット〉というフリーペーパーが存在しているとそこで知ります。

 

タイトルからも分かるようにシルバー世代の向けの紙媒体で、その中の大人気コンテンツが〈シルバー川柳〉だと学びました。

 

現代のメディアは一方的に情報を届けるだけではなく受け手と双方向で結ばれるべき。その結び目として川柳が機能を果たしている様子を目の当たりにしたわけです。

 

この成功事例に目がくらんだ編集長の私は、待ち受ける厳しい未来を想像もせず安易に「HOKUROKUでも川柳をやろう」と思いました。

 

創刊とともに立ち上げたコーナー名は〈移住者たちの川柳〉。「移住者」に投稿者を限った理由は、他県から引っ越してきた人たちの方が北陸の暮らしや時事を遠い距離から客観的に見られる・ユーモラスに語れると思ったからです。

 

投稿の中から優れた川柳を編集長である私が点者(優秀作品を選ぶ人)としてチョイスし、上位の入選者に「金猫賞」「銀猫賞」「銅猫賞」を授与する仕組みを設計しました。

 

ちなみに、金猫賞・銀猫賞・銅猫賞は〈ベネチア国際映画祭〉の「金獅子賞」から着想を得ています。

 

その第1回目の受賞者発表がいよいよやってきたわけです。

 

率直な気持ちを言えば、今さらながらに恐れおののいています。受賞作を選ぼうといざ点者になってみると怖いくらいに川柳の奥深さ見えてきたからですね。

1本の棒のように表示

そもそも編集長である私の川柳体験は乏しいです。〈サラリーマン川柳〉だとか各新聞社が紙面に掲載する時事川柳だとかを目にして「上手だなあ」と感心する程度でした。

 

「戦中の国策標語『贅沢は敵だ』に一文字を書き足して『贅沢(ぜいたく)はス敵だ』と落書し、権力が押し付けるスローガンを180度ひっくり返すような批判と皮肉と笑いを持つ伝統短詩が川柳だ」

 

そのような言葉をどこかで聞いてすごくふに落ちた記憶くらいはありましたが、川柳について何か考えを他に持っているわけでもありません。

 

本来(俳句も含めて)川柳は5音・7音・5音の間にスペースを設けず1本の棒のように表示する基本すら知りませんでした。

 

全国には川柳結社が400以上存在していて、社団法人全日本川柳協会(大阪府)まであり、加盟団体が380ほどあるといいます。

 

このような人たちにしかられてしまう初歩的ミスを移住者たちの川柳では気付かないうちにいろいろ重ねているわけです。

 

それでも、走り出してしまった企画から逃げるわけにはいきません。

 

最高賞の金猫賞を中心とした各賞を今回の特集では発表するとともに、編集長の私(坂本)が点者になるために学んだ川柳の基礎知識をシェアし、作者・読者・点者が一体となって学びを深められる内容にしたいと思います。

 

副編集長のコメント:各賞の発表に先駆け川柳の由来や俳句との違いについてちょっとだけ次の回で学びます。「へー」のボタンのご用意を。)

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