「愛されるSNS」は片手間ではつくれない。北陸を代表する企業&インフルエンサーの座談会(後編)

2021.03.23

vol. 01

「中の人」が見える投稿が多くてもいい

ちょっと前書き

「愛されるSNS」(ソーシャル・ネットワーク・サービス)論の座談会の司会を前編に引き続き務めるHOKUROKU副編集長の大坪史弥です。

 

〈カレーのチャンピオン〉を展開する株式会社チャンピオンカレーのチャンカレさんや〈8番らーめん〉を展開する株式会社ハチバンのハチコさん、〈しろえびせんべい〉を製造・販売する日の出屋製菓産業株式会社のSNS担当・尾間俊雄さんにインフルエンサーマーケティングや運用体制などを前編では聞きました。

 

みーもぐさんと高橋舞衣さんにもアドバイザーとして座談会に参加してもらい、インフルエンサーの立場から愛されるSNS論について同じく意見をもらいました。

 

〈Instagram〉や〈YouTube〉で富山のグルメ情報を発信している方がみーもぐさんで、富山のタウン誌〈Takt〉で編集長を経験した後に独立し県内外の媒体で現在は執筆・編集する方が高橋さんです。

関連:「愛されるSNS」は片手間ではつくれない。北陸を代表する企業&インフルエンサーの座談会(前編)

どの企業の公式SNS(ソーシャル・ネットワーク・サービス)担当者も、本業との兼務が求められる中でさまざまな苦労と工夫を重ねていると前編では分かりました。

 

インフルエンサーと言われる人たちには企業の側から試食会や試供品のお誘いがかなりの頻度であるとの話もありましたし、そうした「PR案件」が乱発されるとインフルエンサーにも企業にも好ましくない状況が起こるなどの話もありました。

 

どちらかというと前編までは、SNS運用の実態・現状を総論的に話し合う内容が多かったと思います。より具体的な運用の話に後編からは進んでいきます。

 

引き続き同じメンバーとオンライン上で座談会を継続します。

 

インタビューの様子。〈水辺の民家ホテル〉(富山県射水市)でインタビュアーは話を聞いた

10割業務に関係ない投稿をする時も

―― 引き続き座談会を進めさせてもらいます。投稿するコンテンツについて次は聞かせてください。

 

いずれのSNSにおいても、コンテンツを投稿する必要があります。しかし先ほどの話にもありましたが、商品PRの投稿ばかりでは親近感やコミュニケーションは生まれず、アカウントのファンは増えにくと思います。

 

フォロワーと仲良くなるためには仕事に関係のない日常的な内容などを投稿していく必要もあると思うのですが、そのバランスはどのようにお考えでしょうか?

 

チャンカレさん

チャンカレ:うーん。特に意識しているわけではありませんが、業務に関係ない投稿が7割、PRの投稿が3割くらいじゃないでしょうか。

 

今年は弊社が、60周年なので、企画やPRの内容が多めになっていますが、下手したら10割業務に関係ない投稿を普段ならしている時もありますよ。「ラーメン食べた」とか「おはよう」とか。

 

このような「朝のあいさつツイート」を先日もしたんですが、企業公式アカウントの中でどんどんなぜかリツイートされていきました。業務に直接関係ない内容ですが150リツイートくらい最終的にされましたね。

 

 

―― カレーの絵文字が回転している。

 

ハチコ:これ見ました! チャンカレさんのツイートだったんですね。

 

チャンカレ:そうなんです。ちょっと手の込んだ「おはよう」ツイートです。

 

左上からチャンカレさん。上段中央がインタビュアーの大坪。右上が高橋舞衣さん。左下がみーもぐさん、下段中央がハチコさん、右下が日の出屋製菓産業の尾間俊雄さん

チャンカレ:絵文字って会社のサービスを表現しやすいんですよね。他の企業公式アカウントの中の人たちも、このツイートの絵文字を変えて投稿してくれるんじゃないかなと若干の狙いもありました。予想外にリツイートされて驚きましたが。

 

情報としてはカレーの絵文字と「おはよう」だけですもんね。仕事とほとんど関係ないですよ。

 

―― 確かに(笑)

 

チャンカレ:ただ、先ほどのインフルエンサーの話にもありましたが、PRの投稿ばかりしていても無機質というか人柄が伝わらないので、なかなかファンも増えていかないと思うんですよ。

関連:「愛されるSNS」は片手間ではつくれない。北陸を代表する企業&インフルエンサーの座談会(前編)

限度はあると思いますが、フォロワーさんに受け入れてもらっているのであれば「中の人」の人柄やユーモアが見える投稿が多くてもいいのではないかと思います。

 

―― 確かに。フォロワーさんに受け入れてもらうが大前提ですよね。他の方はいかがでしょう?

 

尾間俊雄さん

日の出屋:私も、大体7:3くらいですかね。Twitterに関しては日常的に投稿する分、ネタに結構困るんですよね。

 

ネタがないときは「#企業公式が各地の天気を言い合う」みたいなハッシュタグで天気をつぶやいたり、記念日を調べて「今日は○○の日です」とつぶやいたりします。そこから無理やり商品の話題につなげます。

 

「今日は満月なんで、しろえびせんべいが食べたいですね」とか「丸いものを見たらしろえびせんべいがたべたくなりますよね」とか。

 

ぶっちゃけかなり強引ですしお客さまも分かっているとは思いますが、とりあえずなんでもつぶやくようにしています。

 

 

―― 若干の強引さは確かに伝わりますね(笑)でもファンからすればこうした試行錯誤な感じも「ネタ」になるというか。親近感がわいてくる気がします。

 

ハチコさんはいかがでしょう?

 

ハチコさん

ハチコ:私は、日常的な投稿はあまりしていないかもしれませんね。過去にはそういう「おしゃべり」的な投稿もしたんですが引きが良くなくて。

 

新商品の味や開発秘話といった投稿の方がうちの場合は読んでいただけますね。

 

あと、毎月8日・18日・28日を〈8の日感謝デー〉と称して8番らーめんでは割引を実施しています。なので「8の日には必ず投稿する」といった小さな目標を立てなるべく露出を増やすようにしています。

 

 

―― なるほど。日にちや曜日にちなんだパターンがあるとフォロワーとのお決まりのコミュニケーションも生まれそうですね。

 

 

チャンカレ:そこで言うと、8番さんにつくってほしいハッシュタグがあるんですよ。

 

ハチコ:アイデア大歓迎です! なんでしょうか?

 

チャンカレ:北陸の人ならよく知っている「なんでやろ、8番」のキャッチコピーがあるじゃないですか?

関連:漫画家ちさこ先生と考える。北陸にある「8番らーめん」の愛し方・愛され方

あのコピーにあわせて「#なんでやろ」のハッシュタグを付け、日常のあるあるをつぶやいていくみたいなルーティン企画をやると面白いと思うんですけどどうでしょう?

 

「家出る時に鍵閉めたかどうかって忘れるよね。#なんでやろ」みたいな感じです。もしやってくれたらどんどん私もつぶやいていきます。

 

日の出屋:それいいですね。北陸の公式SNSの人たちも乗ってくれそうな気がします。

 

ハチコ:面白いですね! 毎朝となるとちょっと大変ですが検討してみます(笑)

 

―― 企業の公式SNSの人たちって謎の団結力がありますよね。ネタみたいなツイートもリツイートしあったり。

 

ハチコ:分かります。なんとなくグループみたいな感じもできている気がします。

 

日の出:みんな孤独というか、会社の中に理解者が少ないからじゃないですかね? 企業間コラボのきっかけにもなりますし個人的には面白いなと思います。

 

―― Twitterの何気ないコミュニケーションからコラボレーションやイノベーションが起きる可能性も確かにあるかもしれませんね。

 

「#なんでやろ」でつながり合える日を楽しみにしています。

 

編集長のコメント:HOKUROKUとしては、この特集をきっかけにユニークな「コラボ」が北陸でどんどん生まれる日を夢見ています。

 

「丸いものを見たらしろえびせんべいがたべたくなりますよね」という日の出屋製菓さんの話、個人的にはちょっと笑ってしまいました。

 

すさまじく強引ですが、愛おしい押しの強さだと思います。月とせんべいを置き換えた写真もシュールでしたね。

 

過去一番にTwitter上で盛り上がった各社の成功事例に次の第2回では続きます。)

この記事を書いた人

Avatar

関連する記事

オプエド

この記事に対して、前向きで建設的な責任あるご意見・コメントをお待ちしております。 書き込みには、無料の会員登録、およびプロフィールの入力が必要です。