宿の見方・探し方編。泊まる楽しみはもっと深い。新・北陸の宿

2021.03.04

vol. 04

「消費」ではなく「関与」する

〈民家ホテル・金ノ三寸〉(富山県高岡市)のバスルーム。撮影:山本哲朗

すてきな宿だと連泊して分かったら、日をあらためて同じ宿にまた訪れてはいかがでしょうか。

 

宿泊を「消費する」だけでなく「関与する」新しい感覚が得られるようになります。

 

「関与」とは、ちょっと説明が必要だと思います。

 

前述のとおり、毎週どこかへ出張に行っていた東京時代だけでも、全国のいろいろな地域で宿に泊まりました。

 

1年以上通い続ける地域では、初めて泊まる宿の選択肢が限られてきて、なじみの宿が自然に幾つかできてきます。

 

なじみの宿ができたおかげで、宿泊を「消費する」感覚に加え、「関与する」という新しい感覚を学びました。

 

「消費する」「関与する」の違いとは、レストランで考えると分かりやすいかもしれません。

 

おいしい料理を流行の店で食べて満足するイメージが「消費する」。「関与する」とは逆に、お店のエキストラになった気分で、お店にとって好ましい常連客を演じている状態です。

 

 

何度も泊まっていると、宿の人たちに自分がいい客であると思われたい気持ちもわいてきます。

 

もっと賢くスマートな宿の使い方をするぞとか、もっと良い客になるぞとか、新たなチャレンジ精神が生まれてくるのです。

 

泊まる側が試されている感じ、宿と共に自分も洗練されていく感じ、理解していただけますでしょうか?

 

1894年(明治27年)創業の老舗〈万平ホテル〉(長野県軽井沢町)に2度目に滞在した時の写真

 

好ましい常連客を演じ始めると、前回の宿泊とは違う季節・利用シーン・人たちと、条件を変えて泊まってみたい気持ちが生まれてきます。

 

リピートしたくなる宿は「関与」したくなる気持ちを芽生えさせる、細やかな工夫や仕掛けがある宿だと言えるのではないでしょうか。

 

「消費」ではなく「関与」したくなるくらい好きな宿が北陸3県の近場で見つかれば人生は豊かになるはずです。

人生を変える可能性を秘めている

そもそも宿とは、訪れて「消費」して終わりという存在ではありません。

 

大げさに言えば、泊りに来た誰かの人生を変え、地域に暮らす人々へいい影響をもたらす、まちづくりの主体が宿だと思います。

 

宿ができて、お客さんが来るようになれば、周りの飲食店や土産物屋にも人の流れが生まれるかもしれません。

 

旅がきっかけとなって宿の周辺へ移住する人が生まれるかもしれません。

 

新潟県南魚沼市に拠点を構える株式会社自遊人がプロデュースする宿〈商店街ホテル講・大津百町〉がいい例ではないでしょうか。

 

複数の町家をリノベしてオープンした〈商店街ホテル講・大津百町〉(滋賀県大津市)

 

オープンして間もないころにお邪魔した時、地元商店街の通りに面した宿だったので驚きました。

 

地域で商売されている方と宿の主人が協力したり、住民の方に理解を求めたりと、宿と地域との関係も泊まってみると見えてきました。

 

宿のサービスの質にも志の高さが表れていると思いました。志の高い宿にはいいお客さんも集まります。

 

商店街ホテル講・大津百町の内部

いいお客さんが集まれば、地域の人たちとのコミュニケーションも増え、自分のまちの良さを地域の人たちも再発見できます。

 

北陸の人たちが、自分の近場にある宿の運営に「関与する」気持ちになれば、自分たちの暮らす北陸の土地に新しい交流が生まれ、まちの感性が結果として引き上がるケースもあるのです。

 

編集長のコメント:そもそも宿とは、単に「消費」されるだけの存在ではなく、まちづくりに貢献する場所だとの話。

 

北陸の人が、いいお客になって宿に「関与」し、好影響を地域に与えれば、自分たちの暮らす北陸全体が結果として良くもなっていくみたいです。

 

近場のすてきな宿探しになんだか力を入れてくなってきました。

 

次の最終回では、宿の心地良さについていよいよ話が及びます。)

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