泊まる楽しみはもっと深い。新・北陸の宿。

2021.03.03

vol. 03

まちの中の何気ない音も、暮らしの声も、全てが旅のコンテンツ。

自ら漁師町の町家を「リノベ」した〈水辺の民家ホテル〉(富山県射水市)※写真中央。係留した漁船が水面の揺らぎとともにきしむ音を響かせる。撮影:山本哲朗。

テーマが定まったら、今度は何をすればいいのでしょうか? 私は宿の公式サイトやSNS(ソーシャル・ネットワーク・サービス)を隈なくチェックするようにしています。

 

今まで利便性の高い設備や機能などといった付加価値の有無、インターネット上での口コミを宿選びの規準にしてきた人の中には、オンライントラベルエージェント(OTA)に頼ってきた人も少なくないと思います。

 

もちろん、オンライントラベルエージェント自体は、悪くありません。ポイント還元や割引プランの存在は、やはり魅力的です。

 

しかし、せっかく北陸の人が北陸の中に非日常を求めて宿を探すのですから、オンライントラベルエージェントではなく、行きたい地域と、自分の旅の主題を掛け合わせて、個別に宿を探す作業から始めるといいと思っています。

 

現に宿泊施設の業界では、「脱OTA」の動きが年々活発になってきています。

 

その背景には、悪意ある口コミ欄への書き込み、意図的な低評価など、心ない利用者の行動により、宿の経営に大打撃を受けるケースが多くなっている事実があります。

 

個性的な宿の中にはオンライントラベルエージェントを回避し、自らの宿の公式サイトに力を入れ、自分たちの提供する価値観を好む宿泊客に向けて、情報を発信する動きもあります。

 

しかも今では、情報詰込み型の営業色が強いごちゃごちゃした文字情報を極力減らす代わりに、デザイン性や写真、動画を中心に直観的なイメージを大事にする公式サイトが増えてきました。

 

北陸でも公式サイトに力を入れ、ブランド力に磨きをかけ、客単価を8,000円から33,000円にまで高めた〈能登九十九湾・百楽荘〉の例があります。

 

公式サイトからの予約が、販売全体の50%を占めるそうです。この先駆者的な取り組みは、業界でも有名です。

 

公式サイトへの誘導で成功した〈能登九十九湾・百楽荘〉(石川県能登町)。写真はレストランへ向かう洞窟(どうくつ)。

実際に公式サイト(http://www.100raku-noto.com/)を見てください。九十九湾に面したがけの上という素晴らしいロケーションの魅力は、公式サイトで十分に伝わるはずです。

 

このような宿では、SNS(ソーシャル・ネットワーク・サービス)とリンクしたブログ形式の情報発信にも力を入れている場合が多いです。経営者やスタッフの温度感が伝わる情報となるよう工夫もされています。

 

漁師町の町家をリノベした水辺の民家ホテル(富山県射水市)の公式サイト。

実際、私の会社が経営する宿〈水辺の民家ホテル〉でも、公式サイトから予約してくださる方は、「ここじゃなきゃ駄目」という一種の確信を持たれているように感じます。

 

それでもオンライントラベルエージェント(OTA)を上手に利用したいという場合は、せめて予約する前に、宿の公式サイトを見てミスマッチが起きていないかを十分に検討してみてください。

 

候補が複数見つかり、どの宿に泊まるか決めかねる場合は、遠慮なく宿に電話してみてください。メールでも構いません。

 

いろいろと質問攻めにしても、宿側は喜んで答えますし、「うちの宿はミスマッチかもしれない」と感じれば、同じ地域にある別の宿を紹介してくれる場合もあるはずです。

プラス5時間の滞在に時間以上の価値を感じます。

宿の探し方だけではありません。移動の距離が短く、移動の時間が節約できる北陸の旅だからこそお勧めしたい宿との関わり方もあります。

 

ずばり、連泊です。1泊だけの宿泊と、2泊する体験価値の違いは、予想以上です。

 

水辺の民家ホテル(富山県射水市)撮影:山本哲朗。

1泊の場合、仮に16時にチェックインして、翌朝11時にチェックアウトすると、合計滞在時間は19時間です。お昼の時間と、夕方までの合計5時間が体験できません。

 

連泊の場合は、この5時間を体験できます。たった5時間かもしれません。しかし、私はこのプラス5時間の滞在に、時間以上の価値を感じます。

 

1泊を経験した後、翌日の昼近くになると、すっかり宿にも慣れてきます。

 

その状態から迎える宿の夕方こそが、部屋の「主人」として迎える、新しい体験時間だと思うのです。

 

漁師町の町家をリノベした水辺の民家ホテル(富山県射水市)の部屋から眺める景色。撮影:大木賢。

北陸にも年々増えつつある一棟貸しタイプの宿などは、景色や周辺環境もセットで楽しめるロケーションが多いように思います。

 

このような宿は、時間とともに日差しの変化、窓の外の空気感など、そのまちで暮らしているようなバーチャル体験を楽しめます。まちの中の何気ない音も、暮らしの声も、全てが旅のコンテンツです。

 

本当にいい宿は、連泊して初めてじんわりとその良さがにじみ出てくると思います。

 

私の会社が経営している宿に泊まる外国人、特にヨーロッパ方面の方々は、連泊する方が多い傾向にあります。

 

2日間くらい宿から出て来ない方も珍しくありません。彼らは宿でどんな時間を過ごしているのでしょうか? いつも気にしながら、豊かな楽しみ方だなと感じています。

 

(編集長のコメント:悪意ある口コミから自分たちを守るために各宿が公式ホームページに力を入れるようになった流れ、なるほどという感じでしたね。

 

連泊については、私(HOKUROKU編集長の坂本)も取材で海外に出掛ける時、同じ宿に連泊します。

 

連泊すると確かに、宿との距離は縮まります。宿の周りを手ぶらで散歩などし始めるころには、自分の家とまでは言えないですけれど、親の実家に帰省した時くらいの心地良いアウェー感が得られるようになります。

 

北陸旅行なら移動に時間がかからない分だけ、連泊も現実的な選択肢として出てくるのではないでしょうか。

 

次は第4回。「消費」するのではなく「関与」する宿の楽しみ方について、明石が語ります。)

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