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2022.07.15

vol. 05

3県をまたいだ人々と「コト」を起こす by 明石(P)

撮影:山本哲郎

 

2周年記念にあたり、北陸3県というエリアのWEBメディアをつくろうと思った経緯をあらためてお話しします。

 

そもそも論で言えば、行政区である「県」で情報が分断されているローカル情報が窮屈でたまらないのです。

 

当然ながら、話題のお店や観光スポット、人気のイベントの数は、そこに暮らす住民の人数に比例します。人数が多いほどトピックスは増えていきます。

 

福井県・石川県・富山県の全人口を合わせても、大都会の横浜市の約380万人に及びません。

 

地方の1つの県の情報だけでは、都会の1つの都市に匹敵する情報はおろか、欲しい情報にたどり着くことも、その情報によって満たされることもありません。

 

となると、普段の暮らしや仕事に役立つ情報量を得るには、もうひと回り大きな枠組みとなる「◯◯地方」ぐらいのエリア設定が必要になると思います。

 

しかし、私たちの暮らす北陸地方は、例えば、関東地方や関西地方ほどのまとまりを感じません。

 

方言についても「関西弁」とは言いますが「北陸弁」とは言いません。「北陸地方」というまとまりの意識が低い状況下で「北陸 おしゃれなカフェ」などと探そうものなら悲惨な検索結果が並びます。

 

富山県の西部にある射水市に私は住んでいます。射水市から金沢市までは、高速道路を利用すれば車で約1時間の距離です。片道約1時間といえば「ふらっと行ってみる」という行動範囲に十分に入ります。

 

にもかかわず、検索エンジンのアルゴリズムでは「こいつ富山県に住んでいるから、富山県内の情報を出しておけばいいじゃねぇ?」と言わんばかりの検索結果を押し付けられます。県外の情報を知ろうと思えば、わざわざ地域タグを必要とします。

 

新聞もテレビも雑誌も、だいたいにおいて県単位の情報ですが、WEBでも実はそうなのです。

 

富山県に移住して覚えた違和感がそこにありました。県境を越えた情報がとにかく少ない・遠い・薄い。これは想像以上にショッキングな出来事でした。

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3県をまたいだ人々とプロジェクトを生みたい

私たちのWEBメディア〈HOKUROKU〉は、北陸3県という広域エリアの設定だけで満足しません。

 

取材を通じてつながりを広げ、読者と交流し、編集部に情報をもたらしてくれる人たちと関係をつくって、3県をまたいだ人々とプロジェクトを一緒に生みたいと考えています。

 

情報を発信するだけでは不十分です。実際に「コト」が起こらないと面白くありません。

 

東京で暮らしているころ、地域活性化のコンサルタントをしていました。当時担当していたプロジェクトが茨城・栃木・群馬の北関東地方3県でした。

 

このエリアを横断する高規格高速道〈北関東自動車道〉の計画が持ち上がります。

 

「北関東」という枠組み意識が今ほど高くなかったこの地域の交流を活発にしようと、高速道路が全線開通する前の約10年間に、産官学野の各レイヤー、多様なコミュニティが交流する仕掛けをつくりました。

 

北関東の各県同士は仲が悪いとうわさを聞いていました。他県ナンバーの車を見ると車間距離を詰めるとか、お互いに悪口を言い合うとか、そういった習慣があったようです。

 

ところが、北関東自動車道開通でもたらされる未来について、3県の産官学野のまちづくりにおけるキーマンたちが語り合う機会をつくると、変化の兆しが見えてきました。

 

限られた層の人たちではありますが、互いに行き来が始まり、協力が生まれ、県を越えた事業が立ち上がった例もありました。

 

北関東自動車の早期開通の後押しとなる交流事業を進めたとして、国土交通省から最終的には表彰状をもらいました。

 

この経験があったからこそ、北陸3県の交流の先には楽しい未来があると信じています。

 

単に情報をまとめ、発信するだけにとどまらず、地域で活動する主体者たちの活動をつなげたり、プロジェクトが起こるまでの仕掛けをつくったりできたら面白いと思っています。

 

2周年を迎えた今年からは、今までとは違った意識・観点で、HOKUROKUを編集していきたいと思っています。

 

皆さん、これからもよろしくお願いします。一緒に地域を元気にするプロジェクトをつくりましょう!

 

HOKUROKUプロデューサー・明石博之

 

編集長のコメント:北関東の枠組みをつくるプロジェクトに明石博之が携わっていたなんて知りませんでした。

 

どこを切り取っても滋味に富む文章ですが、特にビビビと来た言葉は「その情報によって満たされることもありません」です。

 

難しい話を持ち出さなくても「話題のお店や観光スポット、人気のイベントの数は、そこに暮らす住民の人数に比例して多いと言っても過言ではありません」という現実があるわけです。

 

HOKUROKUをお出掛け情報サイトにしたいわけではないのですが、狭い県境内に閉じこもったメディアがストレートに地域情報を扱い続ける限り、早々にネタはマンネリ化します。

 

写真やデザインを頑張って見栄え良く届けたところで、内容そのものに読者は満たされないんだろうなーとずっと思ってきました。

 

HOKUROKU自身はまだまだ道半ば。目指す未来像は見えているのに、それを実現できるスキルもかなりあるのに、優先順位の都合上、手の止まっている部分がたくさんあって、モヤモヤしています。

 

それでも、じわじわと理想に近付いていきますので、それほど熱心に普段から読まない方も「そういえばHOKUROKUは最近どうなったかな」と時々開いて確かめてもらえるとうれしいです。

 

これからも、よろしくお願いします。)

 

文:HOKUROKU編集部

カバー写真:山本哲郎

編集:坂本正敬・大坪史弥

編集協力:明石博之・武井靖

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