地方でこそ大切な「セルフプロデュース」論をアイドルプロデューサーとマジシャンで考える

2021.10.25

vol. 01

「えいや!」とまずは旗を立てる

ちょっと長い前書き

〈HOKUROKU〉編集長である私・坂本は、フリーランスのライターであり翻訳家であり編集者でもあります。通訳の仕事も時々します。

 

クリエーターの一種と認知される仕事で私自身が現に、人並みに生活できているように、翻訳・文筆・編集の仕事は少なくとも、地方に暮らしていてもフリーランスで成立する時代となっています。

 

国内外の出版社や媒体にオンラインで自分を売り込み、オンラインで編集会議に参加して、オンライン上で原稿を入稿し、報酬を送金してもらう仕組みが完全に整っています。

 

もちろん、売り込む相手は、東京、ニューヨーク、シドニーなど都市部にあるメディアだけではありません。北陸に拠点を置くローカルメディアだって仕事先になります。

関連:ローカル・WEBマガジン・レポート〈real local 金沢〉編

さらに言えば、クリエーターと企業の距離が都会と違って地方は異様に近いので(趣味のサッカー仲間が会社の経営者だったりする)地元の企業から執筆の依頼が舞い込んでくるような話も普通にあります。

 

生活のために必要なお金も都会と比べてそれほど必要ないので最低限稼がなければいけない額もそれほどではありません。

 

クリエーターの旗を勇気を出して「えいや!」と立てるかどうかにあとはかかっているのですね。

セルフプロデュースが上手な人だなあ

とはいえ、フリーランスとして仕事を得るためには(自分を売り込む場面では)自分に何ができて・何が得意で・どんな強みがあって・どんな専門分野があるのかなど、限られた手持ちの材料の中から「セールスポイント」を考える必要があります。

 

簡単に言えば、自分を選んでもらう取っ掛かりをつくらなければいけません。でも、この作業が意外に容易ではありません。

 

デザインだとか写真だとか文筆だとか翻訳だとかアナウンスだとか音楽だとかでやっていきたいと思い、デザイナーとかフォトグラファーとかライターとかミュージシャンと名乗ったとしましょう。

 

でも、その手の言葉は単に、職種を表す一般名詞に過ぎません。

 

言い換えれば、同じ肩書を名乗る人が山ほど居るので、自分を目立たせる取っ掛かりをもう一歩踏み込んで考えなければいけません。

 

場合によっては、職種そのものを「発明」する必要もあるでしょう。

 

しかも、そのユニークな取っ掛かりを考える時には、単なる自分の「好き」「得意」だけでなく「需要」まで計算しなければいけません。なにしろ「仕事の依頼を受ける」が目的なのですから。

 

実績と実力がとぼしい中で、今からやっていこうという人は、この取っ掛かりづくりが特に大変になります。

 

この「自分の見せ方を考えて営業し仕事につなげる」方法を、いわばセルフプロデュースの問題を、成功している「先輩」たちはどのように工夫してきたのでしょう。

 

この問題について先人たちに話を聞き、その金言をもって特集を組もうと思った時、真っ先に連絡を入れた人が、ヤマギシルイさんでした。

 

ある日のヤマギシルイさん。ヤマギシさんのお店〈マジックカフェ&バーBELIEVE〉にて。撮影:坂本正敬

 

ヤマギシルイさんとは〈マジックバー金沢STYLE〉の店舗責任者に2009年(平成21年)に就任し、年間300日以上のショー出演を10年以上続けてきたマジシャンです。

 

2020年(令和3年)2月2日には〈マジックカフェ&バーBELIEVE〉を金沢市内で独立開業し、新型コロナウイルス感染症の拡大に直面するものの独自の活動を続けて、年間で最も活躍したマジシャンを表彰する日本マジックファンデーション(埼玉県)の〈ジャパンカップ2021〉でクロースアップ・マジックの分野における日本一に選ばれた人です。

 

パフォーマーの一種であるマジシャン業は、人口の少ない北陸のような地方ではなかなか、ビジネスが成立しないようにも思えます。

 

しかし「世界一本を読むマジシャン」とのユニークな肩書を開業当初につくり(※現在は「小説を愛するマジシャン」。詳細は後述)、圧倒的な読書量を裏付けるようにお店のカウンター席正面に本を並べ、ペンネームではミステリー小説を書くなど、開業当初から一貫して自分の見せ方を突き詰め、独特の立ち位置を確立している人です。

 

 

ヤマギシさんとはそもそも、HOKUROKUとは別の媒体の取材で出会った経緯があります。今回の特集づくりであらためて連絡して取材協力をお願いすると、快諾してもらえました。

プロデュースをビジネスでするプロフェッショナル

ただ、取材の条件としてヤマギシルイさんは対談を希望しました。その話を受けて私はすぐ、理想的な対談相手としてもう1人を思い浮かべました。中新賢人さんです。

 

「シアスタ」の愛称で北陸のファンに広く親しまれるロックバンド〈Seattle Standard Café〉のボーカルにして、石川のプロスポーツチーム〈ツエーゲン金沢〉や〈PFUブルーキャッツ〉の公式応援ソングをつくり、金沢マラソンの公式応援ソング、北陸新幹線の開業PRソングも手掛けるクリエーターです。

 

地元密着の音楽活動が評価され〈いしかわ観光特使〉にも任命される人と言えばいいでしょうか。

 

中新賢人さん。ライブのリハーサル時の様子。ピンボケ、ごめんなさい。撮影:坂本正敬

 

そんな中新さんの輝かしい数々の実績の中でも〈ほくりくアイドル部〉のプロデュース業に私は注目しました。

 

ほくりくアイドル部とは、北陸を拠点に活動を続けるアイドルグループです。

 

〈ほくりくアイドル部〉。福井で行われたライブリハーサルの様子。撮影:坂本正敬

 

全国でも通用するアイドルアーティストを目標に掲げるだけあって、あか抜けたビジュアルと楽曲、ライブパフォーマンスなどのクオリティの高さは、コアなファンだけではなく高齢者や子どもたちなど多くの人から支持を集めています。

 

質の高さ、および安定感のある元気なアイドル活動が評価されて、北陸の大手企業や北陸でキャンペーンを仕掛けたい全国区の企業からPRパートナーに選ばれる機会も目に見えて増えています。

 

才能の発掘にも力を入れており、石川のみならず福井、富山でも、スクールを開校し、未来のスター育成もスタートさせています。

 

これら全てのプロジェクトをプロデュースする人が中新賢人さんなのです。

 

ミュージシャンとしてご自身をセルフプロデュースしてきただけでなく「アイドル部」のプロジェクトでは、他人をプロデュースする役割を背負っています。

 

いわば、自分(セルフ)と他人のプロデュースをビジネスで実演するプロフェッショナルです。ヤマギシルイさんの対談相手としてぴったりだと思いました。

 

石川県金沢市本町2丁目1-20(金沢駅近く)の金城ビル1階にある〈マジックカフェ&バーBELIEVE〉。公式情報:https://instagram.com/cafe_bar_magic

 

中新賢人さんへの取材交渉はハードルが高いかなと思ったのですが、ご本人の協力で現実には、驚くほどあっさりと進みました。

 

その後、ヤマギシさんに対談相手の名前を伝えるとなんと、音楽活動を通じて2人は、昔から知り合いだったと取材前に発覚します。

 

そんな関係性も手伝って、和気あいあいとしたムードの中で対談が進みました。

 

これから芸能関連の仕事で生きていきたい人はもちろん、自分の売り込み方を見直したい中堅のクリエーター、店舗や企業を引っ張る経営者、競争相手との差別化が難しい保険・不動産などの業種で頑張る人たち、就職活動中の学生など、多くの方に役立つ情報がたくさん出てきます。

 

最後までぜひ読んでみてくださいね。

 

大坪副編集長のコメント:SNSのアカウント名にユニークな肩書きを付ける人を見掛けます。

 

「○○クリエイター」とか「○○プロ」とか「○○研究家」とか。

 

セルフブランディング手法の1つだと思いますが、その差別化の手段が使われすぎてかえって埋もれてしまう、とんちのような状況が起きているようにも思えます。

 

小手先ではない「見せ方」について次回以降で2人に聞いていきます)

〈マジックカフェ&バーBELIEVE〉
住所:石川県金沢市本町2丁目1-20 金城ビル1階
公式情報:https://instagram.com/cafe_bar_magic
観客の至近距離で披露するマジック。

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