保育所や展示ホールだけじゃない。シン・ゴジラ風の指令室に備蓄倉庫まである市街地の「司令塔」

2023.07.26

vol. 03

緊張が走った瞬間

 

1階から2階が市民に開放されたエリアだとすれば、3階から10階、プラスして屋上階のヘリポートは、職員が実務に利用するエリアです。

 

しかし、にぎわい・交流をテーマにしている建物だけあって、3階・5階の研修室・会議室(2階の会議室も)は平時、貸しスペースとして平日9時~17時まで、使用料を払えば利用可能になります(※利用料の詳細は公式ホームページから)。

 

さらに、防災や危機管理に関する集いで利用する場合は会議室・研修室の利用料が無料になります。

 

「HOKUROKUで、防災や危機管理に関するイベントを開いたら無料になりますか?」

 

と聞くと、

 

「もちろん」

 

との答えがあります。

 

「その代わり、防災や危機管理に関するイベントか、資料などは事前に提出していただきます」

 

との話。そうなってくると素朴な疑問が浮かびますが、そもそも論として「防災・危機管理」とは、どこまでを含むのでしょう。

 

富山県防災危機管理センターの業務内容にも関係する重要な話として整理しておくと「防災」の言葉は意外にも対象が広いみたいです。

 

自然災害はもちろん、鳥インフルエンザや新型コロナウイルス感染症、隣国のミサイル発射、人的な事件・事故に至るまで、富山県防災危機管理センターは、県民の命・財産を守るために常時備え、行動しています。

 

そのため、宿直の当番員も交代で待機させているそう。消防士が消防署で火災に備えるように、富山県防災危機管理センターの職員たちも24時間365日、災害や事件、事故に備えてくれているのですね。

 

研修室で開催される訓練の案内

 

「災害のない普段は職員は何をしているのですか?」

 

とちょっと意地悪な(ボーっとしてんじゃねえよ的な)質問もしてみましたが、何をしているどころか、お昼ご飯の休憩中にのほほんとランチを食べに行くゆとりも存在しないのだとか。

 

先のゴールデンウィーク中に発生した地震では関係する職員が、休日返上でセンターに集結したと串田さんから聞いています。

 

ちょっと話がそれましたがあらためて、小学館〈日本大百科全書(ニッポニカ)〉の「防災」の定義をちょっと長めに引用しておきます。

 

“自然現象による災害から、人間の行為による災害、および住宅内における日常災害まで、種々の災害があるが、それぞれの災害の発生機構を明らかにし、人命および財産の安全を図ることを目的として対策を行うことの総称である。この場合の災害には、暴風、豪雨、豪雪、洪水、高潮、地震、津波、噴火その他の異常な自然現象または大規模な火事、爆発などが含まれる”

 

何が無料になるのか、参考にしてみてください。意外に、多くの行事が、無料の対象になりそうですね。

〈シン・ゴジラ〉風の指令室

 

串田さんの館内見学中に、緊張が走った瞬間が2度ありました。1度は、5階にある大会議室(災害対策本部員会議室)で、巨大モニター(60インチ×10画面)の正面に設けられた知事席の「知事」プレートを見掛けた時です。

 

映画〈シン・ゴジラ〉の指令室のような空間で、知事を中心に副知事、各部局の幹部、警察関係者などの意思決定者が災害時に居並び、陣頭指揮する場所でもあります。

 

「冗談でも、この椅子には座れない」

 

と震えました。県知事が背負っている責任の重さが肌で感じられた瞬間です。

 

巨大モニターの一角には、富山きときと空港に待機する防災ヘリから届く生中継の画像が映し出されるそう。

 

各河川の水位、気象情報などが映し出され、1階下のオペレーションルームと直接対話できるマイク機能を通じて、上層部の意思決定が下達されます。その指令を受け、実務部隊が一糸乱れぬ行動を展開していきます。

 

そのための訓練が常時、各種の想定の下で実施されています。〈HOKUROKU〉の取材時にも、詳細は非公開ながら、災害関連の人たちが集まって訓練していました。

今度飛んでくる時

 

他にも、緊張した瞬間がありました。屋上階にあるヘリポートの見学時です。備蓄倉庫のある10階まで上がり、屋上階につながる専用のエレベーターに乗り換えた時、迷彩柄の作業服を着た複数の自衛官と鉢合わせました。

 

漏れ聞こえてくる会話から察する限り(小松の?)航空自衛隊の方々みたいです。

 

「今度飛んでくる時に……」

 

みたいな会話が聞こえたので「あの建物は何だろう?」なんて気軽なスタンスで取材に来ている自分たちが場違いに感じられ、申し訳なくなってしまいました。

 

 

屋上階のヘリポートの様子を伝えると、当たり前ですが、ヘリポートの縁(へり)には手すりがありません。落ちたら終わりです。標高は198フィート(約60メートル)。富山市役所の展望台よりはさすがに低かったですが、北日本新聞社の屋上よりは高い気がしました。

 

周辺に暮らしている人はご存じのとおり、あの辺りはカラスもたくさん暮らしています。ヘリポートの上も、カラスのふんがたくさんあるのではないかと思いました。

 

しかし、汚れ1つない、鮮やかな暖色系のポートが真四角に屋上階に切られていました。真ん中には「H」マークが白抜きで印字されています。最大8トンのヘリコプターまで着陸できると同じく、ポートに印字されています。

 

ヘリポート上を歩く自衛官の方々

 

ちょうど近くに、先ほど触れた自衛隊の方々が居たので、

 

「ヘリコプターの8トンって重たい方ですか、軽い方ですか?」

 

と聞こうと思いました。しかし、重大な業務に従事する人たちを前に気が引けて沈黙してしまいました。知るために行動せず、場の空気を読んで言葉を飲み込んでしまったジャーナリスト失格の態度です。

 

読者の皆さん、すみません。

 

プロデューサーのコメント:この屋上のヘリポートは私も、見学させていただきました。Hマークを見るだけでテンションが上がります。ヘリを使うと、小矢部までここから約10分で移動できたそうです。

 

主要な公共施設は、屋上にヘリコプターが着陸できるように設計されています。災害時、地上の交通事情に影響を受けない輸送手段はなくてはならない防災機能です。個人的にはもっと、ヘリコプターを平時から活用し、いざという時の訓練をするといった考えがあってもいいのではないかと思います。

 

ちなみに、ジャーナリスト失格と反省する坂本編集長をフォローする意味で補足しておくと、民間で使っている報道ヘリコプターは最大重量がせいぜい3トンです。救助を目的としたタイプでは6トンくらい。8トンを超える機体もあります。自衛隊の哨戒(しょうかい)ヘリコプターは10トンを超えます。

 

建物ツアーはこれでおしまい。次回は最後に、ご案内していただいた串田さんからいろいろなお話を聞きます。)

この記事を書いた人

Avatar

関連する記事

オプエド

この記事に対して、前向きで建設的な責任あるご意見・コメントをお待ちしております。 書き込みには、無料の会員登録、およびプロフィールの入力が必要です。