まちに開かれた場所
富山県危機管理局防災・危機管理課危機管理係の串田久一さんと巡る富山県防災危機管理センターの館内ツアーは、1階の正面玄関に続くエントランス広場から始まります。
富山県民会館側に面した1階の東側の壁には、川原製作所の蛭谷和紙(富山和紙)とタニハタの組子細工で富山湾が表現されています。
どうして、こんな場所に和紙と組子の伝統工芸が採用されているのでしょうか。富山県の資料によると、富山県防災危機管理センターは意外にも「にぎわいづくり」を1つの機能として掲げています。
映画〈シン・ゴジラ〉の指令室のような機能を持つ建物でありながら、一般の人たちに無料で開放されたゾーンも少なくありません。
特に、1階・2階には、エントランス広場、交流・展示ホール、机と椅子、ベンチを用意したテラスなどが目立ちます。
それらのスペースは一般の人に開放されているため、利用者を迎え入れる正面玄関の脇に、おもてなしの意味も込めて、上述の伝統工芸を展示しているのかもしれません。
建物1階の窓に沿って延びるボードウォークを歩いて奥まで行くと、県庁内保育所の玄関もあります。定員は19名。県庁職員のみならず一般の人も利用が可能になっています。
保育所専用の入り口が1階にあり、エレベーターで上がった先の2階に、県庁内保育所が開設されています。
詳しくは後で書きますが、富山県防災危機管理センターは、ハザードマップに基づき5メートルの浸水を想定して、2階フロアの高さを、通常の建物よりもかなり高い位置につくっています。
災害対策の拠点内にあって、さらに、安全な2階に設置された保育所はある意味で、富山県で最も安全な保育所と呼べるかもしれませんね。
串田さんの館内ツアーは続き、1階の正面玄関から中に入り、交流・展示ホールへと移動しました。
富山県防災危機管理センターの1階の大部分は、ちょっとした「防災博物館」のようになっていて、防災に関する映像やパネルが展示されています。
この建物に関する最大の驚きの1つは、この1階の広いスペース。言ってしまえばこの建物の1階は、ほぼ全部(と感じるくらい)の空間が一般の人たちに開放されています。
建物が巨大で、門構えも立派で「富山県防災危機管理センター」とか名乗っちゃっている建物なのに普通に誰でも入って使っていいとは驚きです。
中でも、印象的だった展示は、災害時に活用できる防災井戸の模型でした。富岩運河環水公園など、富山県内の幾つかの場所には、生活用の雑水を断水時でも確保できる防災井戸があるのだとか。その防災井戸を普及させる富山県鑿井協会という組織もあると初めて知りました。
「鑿井」という漢字、「さくせい」と読むそうです。28画もある「鑿」の漢字を漢字辞典で調べると語源的には「金属ののみを差し込んで、ざくざくと穴を掘る」 といった意味になるそうです。
勉強になりました。今度、富岩運河環水公園で井戸を探してみようと思います。
5メートルの浸水
1階の交流・展示ホールには机や椅子、ベンチがあります。平日(8時30分から17時15分)の出入りは自由で、椅子やベンチの使い方も自由です。
外にあるボードウォークから階段で行き来できる2階テラスの場合は使い勝手の自由度がもっと高くなっています。
2階テラスのウッドデッキからは、桜の名所として知られる松川の桜並木が目線と同じ高さになります。
先ほども書いたとおり、富山県防災危機管理センターは5メートルの浸水を想定し、1階が耐震構造、2階以上が免震構造となっています。
言い換えると1階は、すごく頑丈につくられていて、濁流にも耐えられるようになっています。さらに2階は、一般的な建物の3階程度の高さまで床が上げられています。
松川沿いの美しい桜並木が目の高さに来て、松川の向こう側に見える「城址公園」の緑も目にしみます。いこいの場所として普段は利用してください。〈Instagram〉用の写真撮影にも適したスポットだと思います。
「私は、翻訳とか文筆とか編集の仕事を普段しているのですが、パソコンを持ち込んで、ここで仕事してもいいのですか?」
と串田さんに聞くと、
「もちろん、平時なら構いませんよ」
との回答がありました。
残念ながら、施設独自のフリーWi-Fiは飛んでいません(使用できません)が、松川を挟んだ富山城址公園から飛んでくる(たぶん)フリーWi-Fiをかろうじてキャッチできました(※天候、機種などによりキャッチできない可能性もあります)。
富山に出張に来て、ちょっとした作業場所を必要としている福井や石川の人たちもぜひ、利用してみてください。
(プロデューサーのコメント:ここの2階テラスは本当にお勧めしたい場所です。ここがもし、マンションやテナントビルだとしたら、城址公園の緑の借景によって、とてもすてきな空間になるはず。高い家賃をもらえそうなくらいの価値を感じます。
北陸の建物は比較的どこも、ぜいたくに空間を利用しているとは思うのですが、こうした公共施設の中でも一般の人に開かれた空間はもっと便利に使ってみたいです。
問題は、どこが使えて、どこが使えないのかよく分からない点ですよね。迷った時のコツをお教えしましょう。「疑わしくは使ってみる」です。そこが、立入禁止だったとしたら、管理人に怒られるだけの話です。
日ごろから、いろいろなセクションの行政職員の方々と会う機会が多く、皆さん口をそろえて「一般の方々に有効活用してほしい」と言います。利用率が上がれば、施設をつくったかいもありますし。今後の開発の参考にもなるはずです。
さて、次回3回は、防災危機管理センターの核心の部分に潜入です。ここからは、一般の皆さんが気軽に立ち入れない場所になります。どんなすごい機能が登場するのか楽しみですね。)
オプエド
この記事に対して、前向きで建設的な責任あるご意見・コメントをお待ちしております。 書き込みには、無料の会員登録、およびプロフィールの入力が必要です。
オプエドするにはログインが必要です。