泊まる楽しみはもっと深い。新・北陸の宿。(金ノ三寸編)

2021.03.11

第4回

水回りだけは清潔に、クールに、モダンであってほしい。

「月」棟の洗面所とバスルーム。

古民家をリノベーションした宿にとって、快適さを左右する大事な空間が、水回りです。

 

もちろん、どっぷりと風情ある温泉宿に泊まる場合は、また異なる趣向で宿選びすると思います。

 

しかし古民家宿の水回りだけは、歴史や風情を無視して、清潔に、クールに、モダンであってほしいと考えています。

 

 

上の写真は「月」棟のバスルームです。写真を見ただけでは、古民家にあるとは思わないのではないでしょうか。

 

質感のあるホウロウ製の浴槽に、細かなタイルを壁と床の全面に張った空間です。

 

洗面所の洗面ボウルや水栓器具の選定はもちろん、空間全体で「ホテルらしさ」をデザインしました。

 

裸になる空間は、宿に対して気を許せないと心からくつろげません。何か不安があれば、気が張ったままだからです。

 

また、お風呂に入る時間を、ちょっとしたイベントとして考え、ゲストの気分が上がるかどうかも大切にしています。

普段と違うキッチンでの料理は非日常の体験。

「月」棟にあるゲスト専用のキッチン。

〈金ノ三寸〉では、ディナーを提供していません。その代わり、両棟にゲストが利用できるキッチンスペースを用意しています。

 

調理道具一式、宿泊人数分の食器類も完備して、調味料(有料)もあります。

 

宿の近くにはスーパーや商店、酒類を販売するドラッグストアがあるので、食材調達にも苦労しません。

 

特に、地元の健康志向の方に愛されているスーパー〈フレッシュ佐武〉は要チェックです。有機栽培、自然栽培の野菜や、厳選された良質の肉類、地元産の新鮮な魚が豊富にそろっています。

 

宿に泊まって普段と違うキッチン、道具、お店を使い、自分たちで料理する時間も旅の非日常体験です。

 

 

「月」棟に泊まった夜、私も一緒に出掛けた妻と、このキッチンで料理してみました。

 

買い物はもちろんフレッシュ佐竹で、新鮮な魚や肉、有機栽培の野菜を買い込みました。

 

使い慣れていないキッチンでの作業は、料理をイベント化させます。

 

この日は主に私が料理を担当しました。野菜を洗い、鍋に水をとってだしを取り、まな板で食材をきざみ、調味料を吟味して、肉や魚を丁寧にグリルしていると、ふと不思議な感覚になります。

 

「あれ、なんでここで料理しているんだっけ?」と、自分の置かれている現実をふと忘れてしまう瞬間があったのです。

 

非日常の空間での料理が楽しかったからでしょうか。仕事の話、本の話、宿の話を妻と楽しみながら準備していると、食事のスタートがかなり遅くなってしまいました。

 

真ちゅう製のテーブルに料理を並べて、ワインで乾杯した時間は、もう夜の9時です。

 

料理や食器類を並べたテーブルも、初めて食事に利用するので、新鮮さがありました。

 

時間をかけて料理とお酒を口にしていると、宿の「主人」であるという実感もわいてきます。本当の意味で自分たちの時間が始まった気がしました。

 

 

自分で体験してあらためて実感しましたが、キッチン付きの貸し切り宿は、時間と予算が許す限り連泊が理想的です。

 

料理を食べ終わったころに、「もう一泊して、今度はもっとゆっくりと食事を楽しみたい」という気持ちが自然にわき上がってきました。

 

食後には軽く酔ったまま、中庭にも出てみました。築100年以上の建物に切り取られた夜空には、北陸の冬らしく雲が流れていました。この中庭から見上げる空の模様も、連泊なら時間とともにさまざまな表情を楽しめるはずです。

 

距離的に近い北陸3県内であれば、連泊という選択肢が現実的になります。慌ただしく飛び回る遠くへの旅とはまた異なる楽しみが、満喫できると思いました。

 

(編集長のコメント:確かに旅先での料理づくりは、いつもと全く異なる気分を楽しませてくれます。

 

日々料理づくりを家庭内で担当している人からすると、「料理をつくりたくないから、食事のある宿で」となるかもしれません。

 

その場合は、普段から料理をつくらない家族の誰かが、特別に料理を担当して、日ごろ頑張っている人は思い切り休むといった段取りを家族内で話し合っておくと、余計に楽しいかもしれませんね。

 

次はいよいよ金ノ三寸で朝を迎えます。「朝は宿の実力が問われる」と明石は言います。金ノ三寸の実力はいかに。)

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