泊まる楽しみはもっと深い。新・北陸の宿。(金ノ三寸編)

2021.03.09

第2回

面白さが便利さに負けると、魅力は半減してしまう。

カフェ&バーの奥にある扉を開けると、ダイニング空間が広がる。写真:四津川製作所。

前回までは、2棟ある〈金ノ三寸〉のうち「八」棟に入り、チェックインカウンターとカフェ&バーの空間を紹介しました。

 

入り口から見てバーの奥にある真ちゅう扉の先に、宿泊者専用の空間があります。扉を開くと、まず中庭の見える土間のダイニングルームが目に留まります。

 

ダイニングに配置された最大8名が食事できる真ちゅうのテーブル。

ダイニングはまだ靴を履いているせいもあり、自分自身が屋外の延長で過ごしている意識があります。

 

和のテイストをモダンな解釈でデザインし、格子の扉や違い棚をモチーフにした間接照明などを仕込んで、空間にアクセントを散りばめました。

 

真ちゅう製のペンダントライトも、アートユニット〈てがかり工作室〉さんの作品です。

 

「八」棟の中庭。室外と室内の中間のようなプライベート空間。撮影:明石博之。

ダイニングルームからガラス越しに見える空間は、町家の特徴とも言える中庭です。

 

ダイニングルームから中庭を通って、下足のままゲスト専用のキッチンルームと往復できる空間設計にもなっています。

 

中庭には大きなひさしが掛かっているため、雨の心配も不要です。

 

隣の建物に見える板壁は、伝統建築のムードを高めるために、新しく造作しました。

 

旅のムードを高める、没入感を高めるために妥協できないポイントだと思います。

窮屈な思いをせずに過ごせる宿。

ここからは靴をぬいで上がる。

ダイニングルームと連結して、フローリングに通じる小上がりがあります。

 

左手に中庭が見えます。その先には再び下足に履き替えるキッチンがあり、奥にはトイレがつ、親子3~4人が入れる広い湯船のお風呂と洗面所があります。

 

土間のようなキッチン。中庭と連動しているため、下足のままダイニングとの往復も可能。

1階は、どちらかというとにぎやかで、動的な使い方をするシチュエーションが多いのかもしれません。

 

ゆっくりと過ごしたい時は階段を上がり、2階に移動してください。

 

2階へと通じる階段。空間の中にモダンな要素をふんだんに詰め込んである。

ホテルのベッド選びは、毎日使うベッド選びとは異なる。

中庭からの光を最大限に利用する障子窓。

2階のフロアには、中庭に面した3面全部の窓に、障子を組み込みました。

 

優しい光が2階ホール全体を、柔らかく包んでいます。私は町家のこの光が大好きです。

 

早めにチェックインして、陽の光があるうちにこのソファに座ってみました。

 

何度も見慣れた場所のはずなのに、優しい光とフロアランプの明かりに、癒やされました。

 

「八」棟のベッドルーム、和室仕様となっている。奥の壁上部(写真正面)の明かりは、わずかな自然光が入り込む仕掛けを施している。

2階には、寝室が4つあります。その1つが写真の畳の間です。

 

畳の床より少し高い位置に、ちょっと浮遊感のある板間をつくり、ベッド用のマットレスを敷いています。

 

ホテルのベッド選びは、毎日使うベッド選びと異なります。固いクッションを台座に、やや柔らかめのクッションを置いている「ダブルクッション」タイプがホテルでは少なくありません。

 

金ノ三寸でも、米国Sealy(シーリー)社のダブルクッションタイプのベッドを採用しました。体重分散機能に優れていて、気持ち良く寝られるはずです。

 

照明の位置にも空間全体で配慮を。

くつろげる環境づくりとして、照明と光源にも配慮しました。

 

2階には、天井付けの照明器具をほとんど使っていません。多くの照明器具は、壁付けのブラケットライトもしくは、床置きのフロアランプです。

 

天井からつるすペンダントライトは、かなり低い位置に取り付けられています。

 

天井に埋め込んでいるダウンライトは、狭い範囲を照らすタイプで、光源が目に入りづらくなっています。

 

「八」棟のベッドルーム、こちらはフローリングの部屋。写真:四津川製作所。

フローリングのベッドルームに関して言うと、写真右手の人物が座っている場所は、本来は隣の建物(棟)の一部でした。

 

あえてそのまま見せて、ブラケットライトと机を配し書斎のような空間にしています。

 

全ての要素を、当たり前のように便利に、スマートにするだけでは、面白くありません。

 

面白さが便利さに負けてしまうと、古民家リノベーションの魅力は半減してしまいます。

 

こうした遊びの空間も、非日常を感じさせてくれる大切な要素だと考えています。

 

北陸の宿巡りでは、遊びの部分にも着目したいと思います。

 

2階から階段で降りてきた時に見えるダイニングテーブルの様子。

(編集長のコメント:金ノ三寸のルームツアーはまだまだ続きます。次は隣の「月」棟へ。

 

次第に宿の解説コメントから、宿泊体験の語りも始まります。楽しんでくださいね。)

間接照明の一種で、壁に取り付けるタイプ。

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