褒められ上手が北陸を救う
取材と並行して行われた褒める技術のワークショップの様子。※ワークショップは新型コロナウイルス感染症の感染拡大の前に行われました
―― リアクションの例として選挙の話がありました。
ただ、選挙ってワードが出てくるだけで、ちょっと苦手意識を覚える人も居ると思います。大事だと分かっていても選挙の話になると頭と心が受け付けなくなるみたいな。
大田:なるほど。
―― ちょっと厚かましいお願いなのですが他の例ってありませんか(笑)
大田:分かりました。別の私の経験をお話ししましょうか。また、ちょっとグレーかもしれませんが(笑)
―― お願いします。
大田:社会人になりたての20代のころの話です。当時私が勤めていた会社にはあいさつの後に容姿を褒めてくれる社長が居ました。
―― はい。
大田:私にだけでなく他の社員全員にも社長は言っているのですが、その場から社長が居なくなったら「あれ、セクハラだよね」と嫌な顔を露骨にする女性社員も少なくありませんでした。今の時代だとなおさらかもしれませんね。
―― 〈Twitter〉に今なら書かれそうな事案です。
大田:「ありがとうございます」とそんな中でも私だけは言い続けました。
するとそのうちに「君は気持ちがいいね」と言ってランチ代として1,000円を社長がくれるようになりました。
―― 気前の良い社長さんですね。
大田:嫌な顔を露骨にする他の社員に対しては逆に褒めなくなりました。息をするようにそれまで褒めていた社長がびっくりするくらい褒めなくなったのです。
―― なるほど。
大田:「ありがとう」と笑って反応し続けた私は1,000円をもらい、嫌な顔をする他の社員たちは褒められなくなる。
ちょっとグレーな例ですが、リアクションが気持ちいい褒められ上手な人を前にすると、褒めた方もうれしくなります。褒めてうれしい思いをした人は他でもきっと誰かを褒めます。
―― ポジティブな気持ちがどんどん広がりますね。
大田:褒められ上手が世の中に増えれば褒める人も増えると思います。だから、褒められ上手の基礎であるリアクションってすごく大事なのですよね。
口角を上げてリアクション
―― でも、褒められてうれしくない場面、うれしくない褒められ方ってありますよね。先ほどの社員の例で言えばたぶんセクハラだと思っているわけで。
大田:確かに、そうかもしれません。同じリアクションでもそんな場合にはちょっとしたコツがあります。「笑声(えごえ)」で返すです。
―― 初めて聞く言葉です。
ワークショップの様子
大田:「笑声」とは、話す仕事をしている人たちの間では比較的知られた言葉です。口角を上げて話すと、顔が笑っていなくても1トーン声が明るく響くというテクニックですね。
気分の問題だとか忙しさなど、大きなリアクションを事情があって返せない場合でも、ちょっとでもいいから口角を上げる習慣だけでも身に付けてみてください。これだけで、もう立派なリアクションです。
―― 目が死んでいてもいいから口角を上げてリアクションしろと。
大田:無反応よりはましだと思います。さらに「ありがとうございます」「いい気分です!」「うれしいです」の言葉を笑声で添えられれば少なくとも褒めた相手は嫌な気持ちにならないはずです。
―― とにかく、褒められたら大げさにリアクションする。リアクションできない時でもせめて口角を上げる、こんな意識付けが皆さんを褒められ上手にすると。
大田:そのうちに、皆さんの身の回りでランチ代の1,000円が行き交い始めるかもしれませんよ(笑)
(編集長のコメント:「笑声」というテクニックがあるのですね。この文章を編集しながら練習してみると、声のトーンが確かに上がる気がしました。
次の第3回では、褒められて照れてしまった場合の対処法を学びます。)
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