暮らしの中で愛用する「道具と日用品」を北陸の人に聞いてみた(前編)

2021.07.15

第4回

晴れの日も雨の日も

 

建築家の山川さつきさん、三郎丸蒸留所ブレンダーの稲垣貴彦さんが教えてくれた愛用品が前編の最後に登場します。

 

いわばものづくりを仕事とする人たちが選ぶ北陸生まれの道具と日用品。すてきなアイテムが出てきますので最後まで読んでみてくださいね。

「時間のたまる箸(はし)置き」山川さつきさん(建築家)

〈FUTAGAMI〉のはし置き〈閃光〉

「10年近く前、上海に住んでいたころに友人からのプレゼントでいただきました。

 

長く日本を離れていたこともあり、センスの良さや丁寧なものづくりに感動したのを覚えています。

 

使うほどになじむ素材感があって、時間がたまったような表情があり、愛着がわきます。」

教えてくれた人。

 

山川さつき(やまかわ・さつき)さん

兵庫県生まれ。一級建築士。2009年(平成21年)より中国上海でM.A.O.において多くの商業建築の設計に携わる。2011年(平成23年)トモヤマカワデザインを山川智嗣と共同設立。2017年より拠点を富山に移し、株式会社コラレアルチザンジャパン取締役となる。〈HOKUROKU〉の特集「『人が集まる場所』のつくり方をGNLの明石さん・BnCの山川夫妻と考える」「北陸がもっと好きになる。あの人の「本と映画と漫画」の話」などにも登場。

株式会社二上にも聞いてみた。FUTAGAMIの閃光ってどんなはし置き?

 

「はし置きの閃光は『光』をテーマに形づくられた真鍮(しんちゅう)のはし置きです。

 

砂肌を生かした表面の鋳肌(いはだ)面と磨き面のコントラストが際立ったデザインです。

 

小さなはし置きは収納時にバラバラになりやすいので、木箱に入れて設えられるようにしました。

 

中央には緩やかなくぼみがありはし・・が転がる事はありません。

 

『2個入』『3個入』『4個入』『5個入』と数の異なるはし置きをご用意していますので、お使いになる人数や贈る方のご家族によってお選びいただけます。」

真鍮(しんちゅう)と鋳肌(いはだ)ってなんだ?

 

真鍮(しんちゅう)は銅と亜鉛の合金とされ、色は黄色で黄銅(おうどう)とも呼ばれます。

 

圧力・打撃を加えれば壊れずに引き延ばされる性質があり、融解点(個体が溶ける温度)が他の金属に比べて低く溶けると流れやすい特性があります。

 

鋳肌(いはだ)については鍋・鉄瓶など鋳物の表面を意味します。

 

例えば金属を溶かし鋳型に流し込んではし置きができたとすれば、そのはし置きの表面を鋳肌といいます。

つくった人たち。

株式会社二上(かぶしきがいしゃふたがみ)

富山・高岡で1897年(明治30年)に創業した真鍮(しんちゅう)の鋳物メーカー。真鍮の生活用品ブランド〈FUTAGAMI〉を後に立ち上げる。


「晴れの日も、雨の日も、日常に息づく伝統工芸」稲垣貴彦さん(三郎丸蒸留所ブレンダー)

菅笠振興会の菅笠(すげがさ)

「中学の運動会の時、暑いグラウンドで先生にかぶらせてもらいました。

 

その涼しさに驚愕(きょうがく)し、地元でつくられていると知って買いに行きました。

 

日差しの強い時は涼しく、雨の時も視界が広く蒸れない。そして軽い。

 

毛針をかさに引っ掛けておけるので釣りの時は特に便利です。」

菅笠(すげがさ)ってなんだ?

 

スゲの葉で編んだかさ。「すががさ」とも言います。

 

スゲは世界に1,500~2,000種、日本にも約200種が自生する草の総称です。

 

越中菅笠は2017年(平成29年)経済産業大臣から伝統的工芸品に認定されています。

教えてくれた人

撮影:坂本正敬

 

稲垣貴彦(いながき・たかひこ)さん

三郎丸蒸留所のブレンダー。大阪大学経済学部卒業後、東京にて外資系IT企業に就職。実家富山に戻り、曾祖父が1952年(昭和27年)に始めたウイスキーづくりを引き継ぎ、三郎丸蒸留所を改修。高岡銅器の技による世界初の鋳造製ポットスチル〈ZEMON〉を発明。

菅笠振興会に聞いてみた。越中福岡(富山)の菅笠(すげがさ)ってどんなかさ?

 

「菅笠(すげがさ)は竹のかさ骨にカヤツリグサ科のカサスゲを縫い付けてつくります。

 

スゲ草ははっ水性・防虫効果に優れ、400年以上前から日本各地で農作業用の日よけ・雨よけグッズとしてつくられ愛用されてきました。

 

越中福岡(富山県高岡市福岡町)では、米づくりのかたわら加賀藩の奨励でスゲ栽培を始め、農閑期の副業として菅笠(すげがさ)づくりをしてきました。

 

時代の変遷に伴い三度笠・次郎長笠・市女笠・花笠などの産地が衰退したため、製法を福岡が引き受け、今では全国の90%の菅笠(すげがさ)を福岡地域が生産しています。

 

当地では伝統の菅笠(すげがさ)製法を守る一方、帽子スタイルの開発や名刺入れ・コースター・ランプシェドウのようなユニークな日用品に挑戦しています。

 

茶道の待合で使う円座や釜敷、花瓶敷きにも根強い人気があります。

 

近年はスゲの染色に成功し、染めスゲを編み込んだオシャレなデザインを菅笠(すげがさ)や帽子に取り入れて話題になっています。」

つくった人たち

菅笠振興会(すげがさしんこうかい)

永い伝統を持つ越中福岡の菅笠製作の継承と発展、地域の産業・文化の発展を目的として2017年(平成29年)に設立された。生産から販売まで関係者を網羅した地域ぐるみの組織として活躍している。

 

編集長のコメント:最後の菅笠については、関東に暮らす私の父親が富山のお土産として買って帰った年もあります。

 

稲垣さんと同じく釣りをする時にかぶっているようで、どのようなアウトドアブランドの帽子よりも機能的に優れていると言っていました。

 

新しい技術や感性を取り入れながら革新的な菅笠も生まれつつあるみたいです。だてなイタリア人が夏にボルサリーノのパナマ帽をかぶるように、北陸の人たちが夏にかぶる定番の帽子が菅笠から生まれたらすてきですよね。

 

帽子をかぶる機会の多い子ども向けの麦わら帽子みたいなアイテムを菅笠でつくってもらえると親として個人的にうれしいなと思いました。

 

「あの人も愛用する道具と日用品」の前編はこれで終わり。後編も併せて読んでみてくださいね。)

 

文:回答者の皆さん・坂本正敬

カバー写真:山本哲朗

編集:坂本正敬・大坪史弥

編集協力:明石博之

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