「愛されるSNS」は片手間でつくれない。北陸の代表企業&インフルエンサーの座談会(前編)

2021.03.17

vol. 02

フォロワー数を追わない

チャンカレさん

―― 皆さんの会社のSNS(会員制交流サイト)が、どのように立ち上がったのかは分かりました。

 

ただ、業務として運用するからには数字で見える成果を出さなければいけないと思います。

 

その成果について、目標としている指標はありますか? 成果や業績に明確につながったケースでも構いませんが。

 

チャンカレ:SNS運用単体で成果に結びついたケースはないです。SNS運用から直接的な成果にひも付けて語るのはそもそも難しいと思います。

 

フォロワー数0だったアカウントが何万フォロワーものアカウントに短期間で成長し、オンラインショップの売り上げがそこから激増したなんてケースがあれば分かりやすいでしょう。しかし、こうしたケースは実際はまれです。

 

企業の成果は、複合的に要素が絡み合って生まれます。テイクアウトや自炊需要が「コロナ禍」で高まった上で、「チャンカレ」のレトルトカレーの存在をテレビやSNSを通じて知った人が増え、販売数が増えるといった形です。要因となるポイントは幾つもあります。

 

石川県野々市市にある〈カレーのチャンピオン〉本店

―― ちょっと意外な答えでした。座談会のテーマからしてSNSの力をとても大きく考えていたので。

 

チャンカレ:ただ「どれだけの人に見てもらえたか」は指標として数字で分かりやすく表れます。

 

インプレッションの数・リツイートの数などは販売数とつながっています。

 

新しいメニューに関して投稿した際に、どれだけのインプレッションがあったかで売れる・売れないを大まかに判断できますね。

 

ハチコ:チャンカレさんと同様に、フォロワー数を私たちも追いません。フォロワー数はあくまで結果でしかないと考えています。

 

ただ、強いて言えば、UGC(ユーザー作成コンテンツ)の数は気にしていますね。

 

―― UGCとは、ちょっと難しい言葉ですね。

 

User Generated Contentsの略語で、商品写真、味のレビューなど、ユーザーがSNSに投稿してくれた自社商品やサービスに関するコンテンツの総称です。

 

この解説でも伝わるかちょっと不安ですが。

 

ハチコ:専用ツールも入れてUGCは見るようにしています。新商品の発売予告を投稿する時も、その商品が売れるか・売れないかが、UGCの数で判断できるようになりつつありますね。

 

―― UGCの数を見るようになった理由は何かありますか?

 

ハチコ:某大手外食チェーン店さんが導入されてると聞いたからです。

 

売り上げなどの経営に近い指標が会社からは求められます。ただ、チャンカレさんの言うとおり「SNSマーケティングが売り上げ増加に関与した」事実を示す単独の指標は現状でありません。

 

どんな数値が一番適しているか考えていた時に、某大手外食チェーン店さんが導入されてる話を聞いてUGCの数を見るようになりました。

 

エンゲージメント率(ある投稿に対してどれくらいの「いいね」・クリック・シェアなどがあったか)・リーチ(到達率)も含め、売上・客数との相関が見えれば数字として活用できます。

 

他の指標ももちろん見てはいますがUGCを最近は特に注視していますね。

 

撮影:山本哲朗

ただし、UGCの数についても「いくら以上ならOK」といった一般的な正解はありません。8番らーめんのUGC数の合格ラインは自分たちで決める必要があります。

 

その合格ラインを知るためには経験を積むしかありません。なので、フォロワーの皆さんとコミュニケーションしながら経験を積んでいるところです。

SNSはコミュニケーションの場

―― 日の出屋製菓さんはいかがでしょうか?

 

日の出屋:SNS運用において数値目標は私たちも特に決まっていません。

 

提供:日の出屋製菓産業株式会社

先ほど言ったとおり、EC(電子商取引)のアクセスや売り上げに最終的につながればいいなと思います。しかしSNSは、もともとコミュニケーションの場です。

 

一番大切にしている点はフォロワーさんとのコミュニケーションです。

 

ガツガツPRしたり・無理やりフォロワーを増やしたりする行為は、本来の使い方から外れているのかなと思います。

 

ただ、分かりやすく成果につながったケースも一方であります。2020年(令和2年)に新型コロナウイルス感染症の拡大で在庫が大量に出てしまったんです。

 

「商品が余って困っている」とツイートすると、見てくれたフォロワーさんたちがどんどんリツイートしてくれて100個以上の在庫が1日で完売しました。

 

当時のツイート。

―― それはすごいですね。

 

日の出屋:これは、分かりやすく成果につながった例です。

 

こうしたお知らせは従来であれば、プレスリリースやテレビCMに費用を払って配信しなければいけません。ですが、SNSだと、何万人にも無料で届けられます。

 

こうした状況を生み出せている点は公式SNS運用の成果と言えるのではないでしょうか。

 

―― お客さんとのつながりを生んでいる状況こそが確かに成果と言えそうですね。

 

ハチコ:日の出屋製菓さんの場合、お客さまとのコミュニケーションを日常的にSNSで続けてこられた背景があってこその結果だったのではないでしょうか?

 

日の出屋:そうですね。お客さまのコメントに返信するなどのコミュニケーションは普段から大事にしています。

 

とはいえ、お客さまとのコミュニケーションに最近は、以前ほどの時間を割けなくなってきました。他の業務も担当するようになって忙しくなってきまして。

 

本音を言えば1日中、お客さまとSNSでコミュニケーションしていたいんですけどね……。

 

ハチコ:それ、すごく分かりわかります。私もです。

 

SNS担当者って、高いコミュニケーションスキルが必要です。休みや時間も関係なくコメントも届きますし。

 

「SNS業務手当」が欲しいと上司に冗談で言ったくらいです。片手間でできる仕事じゃないですよね。

 

高橋:おっしゃるとおりだと思います。SNS代行でご相談いただく理由として企業の人手不足が第一に挙げられます。

 

高橋さん

担当者による単独の運用は大変な部分があるように思いますね。

 

ハチコ:本当にそうなのです。でも、フォロワーさんが盛り上がってくれるのならと、休みの日でもコメントをついつい返したり、タイムラインをじーっと眺めてしまったりするんです。

 

日の出屋:すごく良く分かります。

 

編集長のコメント:ガツガツPRしたり無理やりフォロワーを増やしたりする行為はSNSの本来の使い方から外れているという言葉、HOKUROKUの宣伝しかしない私には耳の痛い言葉でした。

 

「UGC(ユーザー作成コンテンツ)の数は気にしています」とのハチコさんの話も「もっと力を入れないとな」と反省させられます。

 

ちょっとだけ話に出てきましたが、企業SNSの「中の人」がどんな働き方を実際にしているのか、次の第3回に続きます。)

ツイートした内容が他のユーザーに表示された(読まれた)回数。
自社に関するSNS投稿を自動的に収集するなどのクラウドサービスが近年増えている。

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