最後のとりで
目次ページでもちょっと語りましたが、この新連載は、身近な暮らしの中で目にする印象的、かつ謎な建物の正体を探るシリーズ企画です。
連載の初回では、富山県庁の裏(横)に最近できた新しい建物に足を運びます。
取材しようと思ったきっかけは、富山市の中心部にある富山城址公園で〈HOKUROKU〉プロデューサーの明石博之らとサンドイッチを食べている時でした。「なんでサンドイッチ?」という疑問は脇に置いておきます。
「城址公園」の中からだと、公園内に生える木々の向こうに、立派な高層ビルが見えます。その建物を見て一緒に居た友達が、
「あの建物って何なの?」
と口にしました。
言われてみると確かに、何の建物なのでしょう。まち中に暮らしていて、県庁の隣で工事していた様子は、HOKUROKU編集長の私・坂本も繰り返し目にしてきましたが、何の建物かは知りません。
しかし、友達の素朴な問いに、HOKUROKUプロデューサーの明石が答えました。聞けば明石は、仕事の関係で一度、建物の内部に招かれて館内の説明を受けたと言います。
建物の正体は正直、予想外でした。
5メートルの浸水に耐えられるだとか、作戦指令室があるだとか、ヘリポートが屋上階にあるだとか。簡単に言えば、各種の災害発生時に防災・危機管理のかじをとる司令塔だと言うのです。
なんで、そのような建物が富山市の中心部にできたのでしょう。しかも、すごくお金もかかっていそうです。
「あの建物、ルームツアーみたいな取材を打診したら受け付けてくれるかな?」
と明石に私が聞くと、
「公的な建物だし、喜んで引き受けてくれるんじゃないの?」
と、憶測に似た返事がありました。
「じゃあ」
と、その言葉をうのみにして今回の連載がスタートしました。
災害発生時は取材キャンセルに
取材の連絡を入れるべく、公式ホームページを調べてみました。富山県庁の裏(横)に立つ新ビルの正式名称は、富山県防災危機管理センターだと分かります。
地上10階建て、延べ床面積は10,465平方メートル。整備費用は約64億円(システム整備費などは除く)と公式情報も出ていました。
名前のとおり、防災に関係する危機管理センターで、事前に聞いていたとおり、災害の予防から災害発生時の対策、復興に至るまで、県知事を中心とした意思決定者が、采配(さいはい)を振る場所だと分かります。
「そんな場所、取材を受けてくれるのかな」
と最初は、ドキドキしましたが、駄目元で問い合わせると意外にも好感触です。電話での口頭説明、企画書の提出などを経て取材が即座に決定しました。しかし、
「急な災害が発生した際などは、取材の予定をキャンセルさせていただく場合があります」
との話。緊急時の対策拠点として、当然と言えば当然かもしれませんね。余計に、取材時の緊張感が増しましたし、久々に空を見上げて晴れを祈りました。
当日は曇りでした。カメラマンと現地に集合し、館内を案内してくれる、富山県危機管理局防災・危機管理課危機管理係の串田久一さんと建物1階のロビーで待ち合せます。
肩書きからして物々しい感じです。一回では絶対に覚えられません。それでも臆(おく)さず、挨拶もそこそこに、企画の意図をあらためて説明します。
〈HOKUROKU〉が実施した、ささやかな事前調査によれば、身の回りの富山市民50人弱(20代~40代)のうち8割以上が、この建物の正体を知りませんでした。
「その結果から類推すると、この立派な建物が何なのか、多くの人が知らないはず。その真相を今日は探りたいと思います」
と直球で伝えました。怒られるかなと思いましたが「そうですよね」と串田さんからは意外な同意が返ってきます。
富山県防災危機管理センターの開館は2022年(令和4年)10月です。そのスタートと共に同地での勤務が始まった串田さんも、勤務が決まるまでは何の建物なのか分からなかったと言います。
「だから、こんなにも親切で、ウェルカムなのか」
と納得がいきます。そんな串田さんのガイドで巡る富山県防災危機管理センターの館内ツアーが今回の内容です。
話は、建物の外観や保育所の紹介から始まって、1階の交流・展示ホール、2階のテラス、4階のオペレーションルーム(災害対策本部室)と5階の大会議室(災害対策本部員会議室)、屋上階のヘリポート視察へと続きます。
災害対策本部員会議室(5階)の席上に見た「知事」というネームプレートや、エレベーターホールからブリッジを経て足を運んだ屋上階のヘリポートなどは、映画のセットを見ているようでした。
次のページから、実際に館内を周った様子をレポートしていきます。一緒に周っているつもりで読んでみてくださいね。
(プロデューサーのコメント:実は、富山城址公園でサンドイッチを坂本編集長とほおばっていた日の数日前に、防災危機管理センターで会議をしていました。
その時「この建物をもっと県民に宣伝したほうがいいですよー」なんて県庁の方と話していた矢先、私たちHOKUROKU編集部自らが取り上げるとは何かのご縁でしょうか。
男子であれば、屋上のヘリポートのマークを見るだけでワクワクする人も多いはず。ちょっと、秘密結社のアジトのような現代的建築と、歴史的建造物である富山県庁舎が同じ敷地に隣接している様子に萌(も)えてしまう、私のような人も確実に居るわけです。
「この新しい建物と周辺環境の魅力を多くの人にぜひお届けしたい!」とテンションがかなり高めのコメントをお届けしました。
さて、第2回は、建物内部にいよいよ潜入。どんな秘密が隠されているのか坂本編集長が包み隠さずレポートします。)
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