載せちゃってすみません。HOKUROKUは「Wikipediaデビュー」しました
vol. 04
「砂場」遊び
撮影:Noj Han。〈flickr〉より
次はどこから執筆のページに移るのか。ページの上の部分(ヘッダー)に「下書き」という文字が見える。これかもしれない。クリックしてみると、
“読者がより多くのことを発見する手助けをしてくださりありがとうございます!”(Wikipediaより引用)
と表示される。繰り返し編集に参加した人へ感謝を示す姿勢は〈Wikipedia〉が何を目指しているのかあらためて教えてくれる。
ポップアップには「編集の開始」という(青くハイライトされた)文字も見える。ここをクリックすれば百科事典の執筆が始まるのかもしれない。
何をどう書くのか
「編集の開始」をクリックすると「ここは、利用者sandboxです」というお知らせが届いた。sandboxとはアメリカ英語で砂場を意味する。イギリス英語ではsandpitと言う。同じく砂場だ。
「砂場?」
調べてみると、どうやら編集を試したり下書きをしたりする場所らしい。最初に「下書き」という言葉から入ってきたのだから、下書きする場所に行き着いた、それだけの話だ。
下書きページ(sandbox)の編集画面。Wikipediaの画像をキャプチャーし挿入
せっかくなので下書きにチャレンジしてみる。壮大なトライアル・アンド・エラーがあった。
結論として下書きページではページ内のツールボックスにある「段落」「見出し」「ページ名」などの機能を使って書き進めていく。
例えば〈HOKUROKU〉のページをつくりたいなら「HOKUROKU」と下書きに打ち込んで文章を選択し、ツールボックスを「ページ名」に切り替える。
本文は下書きページにそのまま書き進めればいい。見出しにしたい部分は言葉を選択してツールボックスで「見出し」に切り替える。
作業(操作)としては〈Word〉や〈Googledocs1〉と大差ない。誰もが慣れ親しんだ方法で編集できるように恐らく工夫されているのだ。
sandboxに下書きを書き込んでいく様子。Wikipediaの画像をキャプチャーし挿入
問題は、何を書くかだ。第3回の記事では、
- 主題の定義と明確な説明(概要から徐々に核心へ迫っていく)
- 文章全体のボリュームはできる限り長く(長い=書くに値する情報がある)。しかし一文一文については短く簡潔に
- 中立な立場から分かりやすく明確に十分な説明を丁寧に与える
という書き方を学んだ。
「1」では概要から詳細な情報へと展開する書き方がお勧めされている。Wikipediaは百科事典だが新聞の考え方が応用できるに違いない。
新聞では「いつ(when)」「どこで(where)」「誰が(who)」「何を(what)」「なぜ(why)」「どのように(how)」といった情報が含まれた結論を最初に示し、補足や詳しい説明を後回しにする。
起承転結のように最後に結論を示すのではなく最初に結論・概要を示し、別の段落で説明の分量を順番に増やすスタイルだ。
ならば最初の一文は「HOKUROKUとは北陸3県を横断的に取り上げるウェブメディア」という概要を示せばいい。
その一文に「いつ」「どこで」「誰が」「何を」「なぜ」「どのように」を加えていけば次のような文になるはずだ。
「HOKUROKUとは、北陸3県を横断的に取り上げるウェブメディアで、2020年(令和2年)5月31日、創刊編集長の坂本正敬とプロデューサーの明石博之を中心に、クラウドファンディングを通じて資金を調達し、創刊に至った。編集部は富山県高岡市戸出にあるコワーキングスペース〈COMSYOKU〉に置いている。」
これならば6要素(5W1H)は全て入っている。全ての情報には新聞報道の出典もある。記述には中立性が保たれているはずだ。
あとは順次見出しを立てながら、この概要を補足する文章を足していけばできあがる。
イザナギとイザナミ
正直に告白しよう。この冒頭の一文を考える作業だけで筆者はWikipediaの編集が好きになった。
「ウィキ中毒」の人たちは恐らくこの作業から得られる知的な興奮と満足感を金銭的価値以上の見返りとしているに違いない。
HOKUROKUは北陸の一部の人を除けば、まだ誰も知らない存在である。その何ものでもない何かに言葉を与え、姿かたちをつくりあげて世界に公開する行為がWikipediaの編集だ。
特に新しい項目づくりは誰も手を付けていない未開の地に秩序やルールを打ち立てるような冒険的なダイナミズムもある。
人類の知の殿堂に新たな1ページを刻み込む特権的な意識もあって、静かな興奮がじっくりと胸に伝わってくる。
日本最古の歴史書〈古事記〉でいえば、イザナギとイザナミが天の浮橋の上から漂う世界に矛を差し入れ、かき混ぜて島をつくった行為と似ているかもしれない。
HOKUROKUのような漂った存在に矛の代わりに言葉で形を与え、世界に居場所をつくる。その楽しさがWikipediaの編集にはあるのだ。
(副編集長のコメント:次は、第5回。いよいよHOKUROKUをWikipediaでデビューさせます。)
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