雪国なら雪国の環境に合った服装が一番格好良く見えます。
大坪:ここまでは、手持ちの長靴をいかにおしゃれに着るかという話をしました。
その中では、幾つかの長靴を持って、作業用とおしゃれ用を分けるという話もありました。
では、最後の話題になりますが、次の一足を買い直す場合、せっかくなので、このような点に注意したらいいというか、長靴そのものの選び方で何か助言があれば、聞かせてもらいたいです。
藤田:身もふたもないかもしれませんが、まずは海外ブランドの長靴を選びますね。
大坪:海外ブランドですか。
藤田:海外の有名ブランドだからいいとか、そういう話ではなく、長靴のルーツを考えた上です。
大坪:先ほどから、ルーツを考えるという話は、何度も出てきました。
藤田:海外の方にとって長靴は、日本人よりももっと生活に密着していると思うんです。
カントリースタイルがあったり、乗馬するスタイルがあったり、アウトドアのフィールドがいっぱいあったり。長靴を履くシーンは、海外の方が多いと思っています。
長靴を含めて、日本のものづくりは素晴らしい部分があると思っていますが、ライフスタイルやクオリティの部分を考えると、海外ブランドを選びがちかなと思います。
先ほどは大坪さんにもちょっと履いていただきましたが、今日は私物の長靴を2足持ってきています。
左手がイギリスのレインブーツのブランドとして有名な<HUNTER(ハンター)>の長靴です。もう25年前のモデルなんですけど。今のモデルと違って、もっと無骨な感じですね。
大坪:味がある長靴ですね。25年も持つとは驚きです。
藤田:持ちますよ。だって長靴って年に何回履きます? 10回履いた履いたとしても、20年で100回ぐらいですよね。
長靴はちゃんとしたアイテムを買えば、流行を追う必要はないと思っています。一足買えば、買い換える必要はそうそうないと思います。
大坪:そして、そのちゃんとした長靴を、シーンに合わせて2足くらい持っておくと、完璧という話ですね。
藤田:はい。例えば僕がこの2足を持っている理由は、履き口の長い長靴って、脱ぎづらいんです。年齢を重ねてくると、脱ぐ時にちょっと足がつりそうになっちゃうんですよ。
なので、脱ぎやすそうなジッパー付きの長靴を、5年前くらいに買いました。
向かって右の長靴は、先ほども言ったように、ラバーブーツとして歴史ある<Le Chameau>(ルシャモー)というブランドです。
デザインとしては、より男臭いイメージです。ハンターブーツなので、狩りの時にヘビに足をかまれても平気なくらいの丈夫さがあります。コーディネートに男臭さを出すにはいいですね。
大坪:長靴のルーツであり、ライフスタイルに根付いている、歴史あるブランドを手堅く選べばいいという話ですね。
冬服の長靴の正解。その11。
歴史ある海外ブランドの長靴を次の一足で探してみる。
大坪:他に、何かブランド被りが嫌な読者のために、お勧めのブランドはありませんか?
藤田:HUNTER以外だと、<AIGLE(エーグル)>も有名ですよね。私の感覚では、一昔前はHUNTERよりもAIGLEのシェアが多かったような気がします。
当時、AIGLEはお姉さま方が履いていたイメージですね。すてきなお姉さん像をつくっていたように思います。
あとは<SOREL>(ソレル)もお勧めです。長靴とはちょっと違うんですけど、スノーブーツというカテゴリです。マイナス20℃の環境にも耐えられる、防寒に優れたブランドです。
一般的な長靴のデメリットとしては冷たさが挙げられると思います。SORELの長靴は寒い北陸の冬でも過ごしやすいのではないでしょうか。
大坪:確かに長靴の苦手な部分として、足先の冷たさがあるんですよね。
事前に靴屋の店員さんにも話を聞いたのですが、全国的なシェアで行けば、レインブーツや長靴よりも、こうしたスノーブーツの方が売れていると聞きました。
ひざまで積もるような積雪時や除雪の時は長靴のほうが向いているかもしれませんが、普段使いとしてはスノーブーツという選択肢もありかもしれませんね。
固く絞ったタオルでふいてあげる。
大坪:ちなみにすごく気になったのですが、同じ長靴を25年もずっと履いてるわけじゃないですか。メンテナンスはどうしているのですか?
藤田:長く履いていると、白い斑点が浮いてきちゃったりするのですが、それは靴磨きのプロの相賀くんに聞いてください。恐らく彼は北陸で唯一、HUNTERの長靴を磨ける職人だと思います。
大坪:相賀さん、いかがでしょう?
相賀:そうですね、長靴のような水を弾くゴム素材は固く絞ったタオルなどでふく方法が一番いいと思います。
靴磨き職人の相賀善博さん。
例えば、HUNTERの長靴だと天然ゴムを使っているので白く粉をふいたりします。それを固く絞ったタオルでふいてあげるのが定期メンテナンスとしては良いと思います。
大坪:頻度としてはどのぐらいでしょうか?
相賀:ふくくらいなら、頻繁にやっても大丈夫です。天然ゴムに吹く白い粉や斑点は、専門家でも原因がまだよく分かってないそうです。
粉が出る前に小まめにふいてあげてください。ふいた後に天然ゴム用のメンテナンス剤でふいてあげるとなお良いです。
大坪:なるほど長靴をメンテナンスしなきゃいけないっていう発想はあまりありませんでした。
小まめふいてあげると愛着度も増すと思うので、早速試してみたいと思います。
冬服の長靴の正解。その12。
長靴は小まめにふけば、愛着も増す。
コーディネートを単なるアイテムの組み合わせだけで完結するのではなく、行く場所も含めて組み立てる。
大坪:最後に、北陸の人たちのコーディネート、あるいは北陸に暮らす上で大切にしたいコーディネートについて、藤田さんから思う点があれば、聞かせてください。
藤田:そうですね、北陸のコーディネート全般どうしても暗くなりがちだと思います。
「コンサバ」なダークカラーだけではなく、どこか1つ遊び心を取り入れるとおしゃれに見えるだろうし、まちの雰囲気も大きく変わってくると思います。
大坪:確かに。私も富山にUターンしてからは、どうしても冬場は雪を意識して、機能性を優先させた服装になってるような気がします。
藤田:機能性の優先が駄目なわけではありません。雪国なら雪国、その環境に合った服装が一番格好良く見えます。
例えば、HUNTERの長靴についても、本当はフィールドに居る時が一番格好良く見えます。
長靴に限らず、ファッションアイテムの背景については、普段そんなに調べないと思うんです。どういう背景があってブランドやアイテムが出来上がっているのか、知らない場合がほとんどです。
しかし、それぞれのアイテムには背景があり、求めてる場所があります。アイテムのしかるべきフィールドに行った時に、トータルでコーディネートが整うのかと思います。
その意味で長靴のコーディネートを単なるアイテムの組み合わせだけで完結するのではなく、ゲレンデに行ったり、キャンプに行ったりと、行く場所も含めて組み立てられるといいですね。
冬服の長靴の正解。その13。
長靴のコーディネートを、行き場所も含めて考えてみる。
大坪:これからコーディネートを考える時には、環境とアイテムのつながりも考えてみたいと思います。本日はありがとうございました。
(編集長の一言:行き先を含めてコーディネートを組み立てる、とてもいい言葉ですね。
言われてみれば、和服を着る時、日本人はアイテムの1つ1つの意味や背景を学び、正しい文脈の中で着こなそうとします。
かえって洋服の方が、日常の中で着慣れている分だけ、むとんちゃくになりがちなのかもしれませんね。
あらためて自分が着ている洋服、履いている長靴のルーツを知り、その背景や文脈に沿った正しい着こなしを考えると、自然と冬服の「正解」は見えてくるのかもしれません。)
冬服の長靴の正解、まとめ。
冬服の長靴の正解。その1。
防寒も考えて、長靴を履く時は細身のジーンズを履く。
冬服の長靴の正解。その2。
長靴と洋服のルーツを合わせる。
冬服の長靴の正解。その3。
アウトドアな雰囲気の明るい色のアウターを選んでみる。
冬服の長靴の正解。その4。
長靴の色に負けないように、洋服は色の面積が大きいアイテムを合わせる。
冬服の長靴の正解。その5。
冬の雪国の着こなしを、一足の長靴だけで済ませようとしない。
冬服の長靴の正解。その6。
メンズの場合、暗い長靴には、男臭いアイテムを合わせて、全体の雰囲気をつくる方法もある。
冬服の長靴の正解。その7。
スカートの丈が長靴の履き口に重なると少し「モサく」なるので注意。
冬服の長靴の正解。その8。
ショートの長靴は、ロングスカートを合わせてみる。
冬服の長靴の正解。その9。
冷たい印象の長靴を、トップスのニットやコートで柔らかくする。
冬服の長靴の正解。その10。
スノーブーツの場合、スポーティなアウターを合わせてみる。プラスして「スキニー」のジーンズがお勧め。
冬服の長靴の正解。その11。
歴史ある海外ブランドの長靴を次の一足で探してみる。
冬服の長靴の正解。その12。
長靴は小まめにふけば、愛着も増す。
冬服の長靴の正解。その13。
長靴のコーディネートを、行き場所も含めて考えてみる。
文:大坪史弥
写真:山本哲朗
編集:坂本正敬
編集協力:中嶋麻衣
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