RENEW × 立山Craftに聞く。地域を盛り上げる「人気イベント」の開き方。

2021.12.24

vol. 03

まずは小さく始める。

写真提供:TSUGI。

 

――― 佐藤さんは一方でいかがですか?

 

熱量を持って伝える、企画書を用意するといった話が新山さんからはありました。

 

企画を伝えていく上で佐藤さんの工夫を教えてください。

 

佐藤:そんなにちゃんとした企画書は私の場合つくっていませんでした。そもそもそんなにきちんとした企画書はつくれません。

 

企画段階の時は名刺2枚分くらいの正方形のカードに開催日時と企画の思いと連絡先を書いて、ものづくりをしている人・協力をお願いする人たちに説明しながら配りました。

 

立山Craft1年目の告知用カード。提供:立山クラフト舎。

 

移住して1年目でしたので、実際にお会いした方には名刺代わりとしてもお渡ししていました。

 

また、初めての開催となるイベントが出店するにふさわしいかどうか、ホームページやSNS(ソーシャル・ネットワーク・サービス)の情報だけで、クラフトフェアに出店される方は判断しなければなりません。企画の内容よりも他にどんな作家が出店するかに注目しているんですね。

 

なのでロゴマークとホームページ、Facebookページを最初につくり、出店が決まった出店者さんをリアルタイムで掲載していきました。

 

たくさんの方がそのページを見て賛同し、拡散してくださり、イベントの周知につながっていったと思います。

 

坂本:再び横からすみません。このロゴマークは誰がつくったのですか?

 

 

佐藤:同じ地域おこし協力隊(当時)だったもう1人の方に協力してもらいながら私がつくりました。

 

八角形は全て方角を表す形です。「全国から多くの人々がここ立山に集まる」といった意味合いを込め、このデザインが出来上がりました。

 

また、先ほどの出店者さんの話に戻ると、〈KAKI CABINET MAKER〉〈Spiral Arts〉など全国でも名が知られる富山県の作家さんたちに初めの段階で出店をお願いしました。

 

「この方が出店するなら自分も出店したい」と、全国から50店舗の出店が結果的に決まりました。

 

――― 出店者集めの方が先行していたんですね。

 

企画資料をつくって行政や関係者に説明しに行くプロセスが先なのかなと思っていました。

 

佐藤:もちろん地域や行政の方にも説明しました。ただ、クラフトフェアをイメージできる人がその当時は地域にも役場にほとんど居ませんでした。

 

なので作家さんを集めて形にすることにまずは注力しました。

 

立山Craftへの出店応募用紙。提供:立山クラフト舎。

 

恐らく会場を見るまで、地域の人も役場の人も私が何をやりたいのかは分からなかったと思います。

 

――― 新山さんの話と同じで、まずは一度体験してもらう方が大事だったわけですね。

 

佐藤:出店者選びについて補足すると、誰かれ構わず出店をオッケーしたわけでもありません。

 

出店希望があっても立山Craftの目指す雰囲気ではない作品についてはお断りする場合もありました。

 

坂本:それは初回からですか?

 

佐藤:はい。初回からです。この線引きは大事だったなと思います。

 

新山:僕らも出店者を公募したことはないですね。

 

ものすごく偉そうに聞こえてしまうかもしれませんが、この人たちなら大丈夫だろうと思える人にしか声を掛けていません。

 

佐藤:たぶん私には私、新山さんには新山さんの出店して欲しい人の基準がありますよね。その基準がイベントを形づくる上で重要だと思います。

 

――― 出店して欲しい人の基準はどのように定めているのでしょうか?

 

佐藤:立山Craftの基準は先ほども言ったとおり、立山Craftの会場に並んでいて欲しい作品です。

 

写真提供:立山クラフト舎。

 

基準を明確な言葉にしていませんが、公募で寄せられた300ほどの作家さんの応募用紙と作品写真をメンバーとともに目で見て80ほどの作家さんをその中から今は選んでいます。

何言ってんのこいつら?

――― 新山さんはどうでしょうか?

 

新山:RENEWの場合は、ステートメントと5カ条に賛同してくれる人のみ出店してもらっていますね。

 

――― ステートメントと5カ条とは何ですか?

 

新山:イベントの趣旨と出店者に求められる価値観です。

 

 

見ていただくと分かるとおり割と体育会系な内容なんです。

 

「RENEWって出店したらもうかるんでしょ?」みたいな思いの人は出店をお断りしています。

 

坂本:そういう人は結構居るんでしょうか?

 

新山:居ます、居ます。そういう人はうまくいかないんですよ。

 

毎年80社ほどRENEWは出店してもらっています。

 

ただずっと固定ではなく、入れ替わりも当然あります。考え方が合わなくなるケースも当然あります。

 

例えば、「うちの工場だけどうして人が来ないんだ」みたいな言葉を言われると困るわけです。

 

僕たちはRENEWというプラットフォームをつくっていますが、それぞれの工場に人が来るか来ないかは企業努力です。

 

誰かがなんとかしてくれるみたいな考えを持っている人だとうまくいきません。

 

写真提供:TSUGI。

 

逆に言えば、当事者意識を持って出店してくれる工場だったらオッケーなわけです。僕らもそういった意識を持っていそうな工場にお声掛けします。

 

工場の方から出店希望の申し出をもらいオッケーする場合も一方であります。

 

RENEWは公募していません。対外的には少しハードルが高く見えるはずです。

 

そんな中でわざわざ連絡をくれる工場はきっと当事者意識があるからだと判断しているわけです。

 

――― 事務局としては出店して欲しい企業に自分たちから声掛けするわけじゃないですか?

 

RENEWのステートメントや5カ条はあくまでもRENEW側のルールです。

 

出店してほしいと声を掛けに行っているのに、一方でこのルールを守れ的な言い方をすると、なかなか企業の側から賛同してもらえないと思うんですが。

 

新山:いや、そのとおりで。結構嫌なことを僕らってしていると思うんですよ。

 

「ぜひ出店して欲しい」とアポを取ったのに、打ち合わせではステートメントとか5カ条とか説教じみたスローガンを言うわけです。

 

企業からすれば「何言ってんのこいつら」と思いますよね。

 

でも、2017年(平成29年)からこのスタンスで出店依頼を続けていますし、怒られたりもしないですね。

 

まあ、心の中では失礼だなと思っている人も居るかもしれませんが(笑)

 

坂本:そのステートメントだとか5カ条をつくった時期は何年目からですか?

 

今だったら結果も出ているから言いやすいと思うんですが、今ほど結果が出ていないころから言っていたとすれば、かなりの勇気だと思います。

 

新山:先ほども言ったとおり、1年目はまずやってみましょうよのスタンスでお願いしに行っていました。

 

1年目の結果もあったので2年目は何の苦労もなかったです。

 

一番苦労した時期は3年目です。〈中川政七商店〉さんと一緒に3年目は実施して、対象エリアも広がり出店企業も一気に増えたんです。

 

その時はさすがに僕だけじゃ全社に直接訪問して説明できないので、エリアごとに担当者を付けて企画説明の役を分担したんです。

 

その3年目が終わった後「うちの工場になんで人が来ないんだ」と不満を言う人が一気に増えたんです。だからこそ先ほどの5カ条をつくったんです。

 

――― なるほど。規模が大きくなった分、統制が難しくなり、だからこそできたルールだったわけですね。

 

新山:そうなんです。ただ、最初からいきなりルールめいたものをつくる必要はないと思うんですよ。

 

コンセプトが軽薄だっていいと思います。

 

イベントの鉄則って「まずは小さくはじめる」だと思うんです。小さくでもやれば感覚が身についてくるし、できることも協力者も増えてきます。

 

イベントの規模が大きくなってきたら必要に応じてルールや形態を決めればいいと思います。

 

佐藤:立山Craftの場合も、私の協力隊の任期が終わるタイミングで運営体制をNPOにしたり、持続可能な形にするために入場料を設定したりしました。

 

回を重ねながら必要に合わせて変化していったらいいと思います。

 

――― 最初から完璧を目指しすぎない方がいいのかもしれませんね。

 

(編集長のコメント:「まずは小さく始める」という言葉、〈HOKUROKU〉を立ち上げる時に運営メンバーの1人で事業プランナーの伊藤建が繰り返し口にしていたなあと不意に思い出しました。

 

創刊から1年ちょっとが経過した現在、まさにメディア運営のさまざまな感覚を身に付けている最中で、この段階で大きくなっては逆に困るとすら思っています。

 

イベントもメディアづくりもその他のプロジェクト立ち上げも「Start small」がキーワードなのかもしれませんね。

 

イベントにおいてとても大事な集客について次は話題が及びます。)

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