北陸がもっと好きになる。あの人の本と映画と漫画の話。

2020.06.04

第5回

自然の恵みと人間の営み
「私たちはとても豊かな所に住んでいるのではないか」

<コメ書房>の立て看板。撮影:柴佳安

最後のページです。

 

もはや、冗舌な口上の一幕は要りませんね。きっと、もっと北陸を好きになる作品をどうぞ。

あの人の作品その28。
「言葉のない対話を求めて能登に。」松本有未(ことのは不動産株式会社・代表取締役)

赤木明登著『名前のない道』(新潮社)

 

「開業時、赤木さんの作品をいただいたのがきっかけでこのエッセイを手に取りました。

 

自然と交わり、時空を越えて過去の人間の暮らしとつながれるような、奥能登での生活とものづくりのことが静かに描かれています。」

 

『名前のない道』
著者:赤木明登
出版社:新潮社
出版年:2012年(平成24年)
定価:本体1,900円

こんな話。
“輪島在住の漆作家が、器とは、美とは、世界とは何かを、深く静かに思索したエッセイ。奥能登の海山にかこまれて家族と暮す日々を綴り、ときに旅先、記憶の情景を描く。”(新潮社のホームページより引用)

松本有未(ことのは不動産・代表取締役)
https://www.kotonohaweb.com/
1982年(昭和57年)石川県生まれ。金沢大学を卒業後、雑誌編集者や不動産会社勤務を経て、2014年(平成26年)に<ことのは不動産>を開業。完全予約制の小さな不動産として金沢市内を中心に、不動産の仲介・活用企画の提案などを行なっている。

あの人の作品その29。
「和醸良酒(わじょうりょうしゅ)。日本酒を通して日本の心を伝えてくれます。」下木雄介(和酒BAR縁がわ・店主)

Erik Shirai監督『THE BIRTH OF SAKÉ』(Cebu Osani Creative & Imakoko Media)

提供:Imakoko Media, Inc/Cebu Osani

「友人の1吉田泰之くんが映画をつくったと紹介を受けたのがきっかけでした。

 

美しい描写で日本酒を醸すという心理を伝えてくれます。」

 

『THE BIRTH OF SAKÉ』
監督:Erik Shirai
制作:Cebu Osani Creative & Imakoko Media
公開年:2015年(平成27年)

こんなお話。
“ニューヨークを拠点に活躍する日系アメリカ人の映像作家、エリック・シライ氏が「手取川」醸造元である石川県白山市の吉田酒造店での酒造りとそこで働く蔵人のドラマを撮り続けたドキュメンタリー映画”(SAKETIMESより引用)

下木雄介(和酒BAR縁がわ・店主)
https://www.facebook.com/washubarengawa
石川県加賀市山代温泉生まれ 。2013年(平成25年)8月、石川県初となる日本酒と焼酎きき酒師の上級資格となる酒匠を取得。2014年(平成26年)9月、地元の加賀市で石川県の地酒をメインとした<和酒BAR縁がわ>を開業するに至る。

あの人の作品その30。
「またやりなおすために。」高橋悠太(コメ書房・店主)

北山耕平著『自然のレッスン』(筑摩書房、他)

 

「出合いは、はっきりと覚えていませんが、3.11後の数年間で読んだ本の中の一冊です。

 

“とりあえずいまの生活を/もうすこしましな方に/変えたいと考えているひとの/役に立つことを願って”(本書より引用)

 

つくられたという本書は、誰かがふと立ち止まった時、いつでも読まれるべきベーシックな一冊だと思います。

 

都会に暮らしていると、よほどの気概と余裕がないと生活に自然を取り込むことは難しいですが、この地方では比較的たやすくできます。

 

私たちはとても豊かな所に住んでいるのではないか。そんなことを確認するきっかけにいかがでしょうか。」

 

『自然のレッスン』
著者:北山耕平
出版社:筑摩書房、他
出版年:2014年(平成26年)
定価:本体820円

こんなお話。
“自分の中にみずみずしい自然を蘇らせる“心”と“体”と“食べ物”のレッスン。自分の生き方を見つめ直すための詩的な言葉たち。”(筑摩書房のホームページより引用)

撮影:柴佳安

高橋悠太(コメ書房・店主)
https://komeshobo.shopinfo.jp/
富山県南砺市旧井波町の農村にある、納屋を改装したブックカフェ<コメ書房>の店主。店のコンセプトは「百姓のくらし」です。

あの人の作品その31。
「宮崎駿さんが見たら絶対ここをモデルにした作品をつくりたいって言うと思うくらい、地域のそのままの魅力を集めてます。」多田健太郎(和倉温泉 多田屋・6代目)

spfdesign Inc. November, Inc.制作『のとつづり』(多田屋)

提供:多田屋

「能登の目に見えない、近くにあり過ぎて感じにくい豊かさを、『文化』、『人』、『お店』、『風景』の4つの視点でつづったウェブサイトです。

 

撮影個所は私のお勧めもありますが、基本的に都市部の制作会社の方が調べて行ってみたい所や会ってみたい方をチョイスしています。

 

ここに行ってみたいと思うんだ!という気付きにもなり、能登がさらに好きになると思います。」

 

『のとつづり』(多田屋)
制作:spfdesign Inc. November, Inc.

こんなお話。
“世界農業遺産に登録された能登の“いま”を伝えようと、石川県能登半島の和倉温泉旅館「多田屋」6代目が各地を突撃取材。”(のとつづりのディスクリプションより引用)

多田健太郎(和倉温泉 多田屋・6代目代表)
https://tadaya.net/
1976年(昭和51年)生まれ。地元の高校 → 立教大学 → カリフォルニアへ留学 → 日本に戻り広告代理店サイバーエージェントへ就職。退職後大阪で1年、東京で2年の営業活動を経て<多田屋>に勤務。趣味はトライアスロンとカメラ。

あの人の作品その32。
「儀礼では、果たせないもの。彼の地への旅路に、人の尊厳を送り添える仕事。」濱井憲子(喜代多(きよた)旅館・3代目おかみ)

青木新門著『納棺夫日記』(桂書房)

提供:桂書房

 

「映画『おくりびと』のモデルとも言われる、葬祭業のオークスの社長さんの作品です。

 

風景がどうの、はあまり出て来ませんが、淡々とした地方都市の日常の情景が、とてもリアルでした。

 

また青木さんの洞察はとても深淵なのですが、『なぜわざわざ葬祭業なんて』という周りの声に、声高に正当性を主張するでなく、悩みを吐露したい訳でもなく、過ぎていく日々が、まるで禅僧の修行の日々のように書かれていたことが印象的でした。富山人らしい仕事への向き合い方だと思います。

 

ご自身の体験がベースとなっていますが、小説としての深みと余韻が素晴らしい作品でした。」

 

『納棺夫日記』
著者:青木新門
出版社:桂書房
出版年:1993年(平成5年)(初版)
定価:本体1,500円

こんなお話。
“死体を洗い柩に納める、ふと気付くと傍らで元恋人がいっぱいの涙を堪え見ていた―人の死に絶えず接してきた人の静かなる声がロングセラーとなった。”(桂書房のホームページより引用)

濱井憲子さん(喜代多(きよた)旅館・3代目おかみ)
第1話に既出。

あの人の作品その33。
「司馬さんの視点で見る福井の歴史と風景を知ることで、より福井への愛着がわきます。」小寺奈波(美めぐりふくい事務局)

司馬遼太郎著『街道をゆく 越前の諸道』(朝日文庫)

 

「前職の福井市観光案内所に勤務していた時に勉強のために買った本です。

 

福井県民や福井をよく知る人にとってなじみのある場所も、司馬さんの視点・知識を通してみると新たな発見があり、福井の素晴らしい場所や歴史について再発見できる本です。

 

約40年前に書かれた紀行文ですが、越美北線や平泉寺白山神社のコケなど、当時も今も変わらない風景があることにほっとしたり、また改めて訪れたくなったりします。 」

 

『街道をゆく 越前の諸道』
著者:司馬遼太郎
出版社:朝日文庫
出版年:2008年(平成20年)(初版)

こんなお話。
“「越前の諸道」では九頭竜川の育てた肥沃な平野を往来しつつ、永平寺の隆盛と道元の思想を思い、「僧兵八千」を誇りながら越前門徒の一揆にもろくも敗れた平泉寺の盛衰を考える。平泉寺の菩提林では、十余年前に訪れたときと同じ老人に偶然再会する不思議な場面にも遭遇する。”(朝日新聞出版のホームページより引用)

小寺奈波(美めぐりふくい事務局)
福井市の観光案内所勤務を経て、現在は北陸新幹線開業に向け福井県の「観光・商業活性化」を目的とし、福井を「美」で盛り上げる『美めぐりふくい』(https://www.ekimaemall.com/bimeguri)の運営に携わっています。

あの人の作品その34。
「この美しい写真集は能登の宝です。鉄ちゃんだけなんてもったいない」船下智香子(民宿ふらっと・代表者)

湯浅啓著『能登線憧景』(龜鳴屋)

提供:湯浅啓

「直接作者ご本人から出版時にご紹介いただきました。

 

『能登線憧景』はのと鉄道の廃線前の1年間とその後をつづった写真集ですが、鉄道写真というよりは、能登線というコンセプトを通して見せてくれる、能登の写真集です。

 

写真1枚1枚がとても美しく、今となっては見られない景色やハッとする色、光、そして、人々の笑顔であふれています。

 

その写真から見えてくるのは、美しい能登の自然とそれに向き合う能登の人の暮らし、温かさ、ユーモアなど。

 

ページをめくるたびに、湯浅さんの能登や能登で出会った人々に対する深い愛情があふれているように感じるのです。

 

廃線が決まってから、あっという間に無くなってしまった能登線を、ちゃんとこうして残してくれている人がいてくれて良かった。

 

写真集なのに読むたびにうるうるしちゃうのは私が能登人やからかなあ。鉄道ファンじゃなくても手に取ってほしい一冊です。」

 

『能登線憧景』
著者:湯浅啓
出版社:龜鳴屋
出版年:2008年(平成20年)
定価:3,500円(税込)

こんなお話。
“三年半前に廃線となった、のと鉄道・能登線。 現役最後の一年から、廃線後の今までを綴った写真集。”(龜鳴屋の公式ホームページより引用)

撮影:柴佳安

船下智香子(民宿ふらっと・代表者)
https://flatt.jp/
能登半島で1日5組の<民宿ふらっと>という小さな宿をやっています。夜は能登の魚貝や野菜、能登ならではの自家製の発酵食を使ったイタリアン、朝は能登らしい朝ごはんです。いしりやこんかイワシなども自家製で漬けています。

 

(編集部コメント:「北陸をもっと好きになる、本や映画や漫画を教えて」とお願いすれば、すぐに答えてくれる人たちがこんなにも暮らしている北陸が、私は大好きです。おしまい。)

 

文:回答者の皆さん、坂本正敬
写真:柴佳安(yslab)
写真(書影):大坪史弥、武井靖、坂本正敬
編集:大坪史弥、坂本正敬
編集協力:博多玲子、中嶋麻衣

 

※クレジットが記載されていない書影については、各出版社が自由な利用を認めたデータベース登録済みの書影を使っています。

1石川県白山市にある吉田酒造店の代表取締役

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