食器・本棚から絵画の飾り方まで。違いを生む「展示と陳列」の正解。

2020.07.03

vol. 05

陳列と展示のゴールデンゾーン。

 

――― 最初の話に戻りますが展示と陳列には、

  1. 気付かせる・興味を持たせる
  2. 足を止めさせる
  3. 手に取らせる

といった目的があると教えてもらいました。

 

筧:はい。

 

――― これまでに出てきた構成の話は1番と2番のための「展示」の文脈で教わってきました。いわば「見せる」技術です。

 

ですが、3番の手に取ってもらう「陳列」でももちろん使えるのですよね?

 

筧:もちろんです。ただ、手に取らせる陳列については特別に意識したいポイントが他に幾つかあります。

 

まずは「高さ」です。

 

―――「高さ」とは、物を置いたり並べたりする際の物理的な高さですか?

 

筧:はい。陳列した物を手に取ってもらうために「高さ」が重要になってきます。その1つの目安が「ゴールデンゾーン」になります。

 

―― ああ。どこかで聞き覚えがあります。

 

筧:陳列棚を見る時、自然に人が目を向ける高さの範囲があります。低すぎる位置にある商品は見ませんし高すぎる場所にも目を向けません。

 

お客さんが目を向けやすい場所に主力商品・重点商品を配置する必要があります。この目を向けやすい場所(高さ)をゴールデンゾーンと呼びます。

 

――― 具体的には、どの程度の高さなのでしょうか?

 

筧:男性の場合は床上で70~160cm、女性の場合は床上で60~150cmと言われています。男女平均で言うと80~120cmです。

 

――― 手に取らせる=陳列の場面においては、この高さに商品を並べると手に取ってもらえる可能性が高まるのですね。

 

ゴールデンゾーンに並べられているアトリエの商品。

筧:ゴールデンゾーンに物を並べる際には物の向きにも気を付けてください。

 

――― 向きですか。

 

筧:本で言えば、本の表紙を見せるか背表紙を見せて並べるかといった問題です。

 

筧さんが正面に向けている部分が本のフェイス。

――― どのような違いがあるのでしょうか?

 

筧:当然ですが、正面を見せれば商品が目に止まりやすくなります。買い上げ率の上昇も見込めます。

 

――― ただ、スペースも取りますよね。正面を見せる物を選ぶ際の基準はあるのでしょうか?

 

筧:横並びに一列で物が並んでいる時、人の視線は左から動きます。その上で真ん中の商品が最も売れて、右利きの多い日本では次に右側の商品が売れます。

 

そのルールにのっとって、売れる場所(真ん中や向かって右側)に売りたい物の正面を向けて陳列するオーソドックスな手がまず考えられます。

 

視線の向きにくい場所に正面を向けた商品をあえて置いて、お客の視線をくまなく誘導させるという考え方も逆にあります。

つるす「高さ」について。

――― ペンダントライトだとかハンギングバスケットだとか、天井からつるす商品はいかがでしょう? 同じ高さでも何か異なるルールがあるのでしょうか?

 

筧:どこに何をつるすかによって一概には言えない部分があります。

 

ただ、頭にぶつかるなど邪魔になっては元も子もないので、床上から2mの高さを確保しておけば間違いありません。

 

――― ペンダントライトはどうでしょうか? 展示や陳列の演出としても使われるイメージがあります。

 

インテリアショップや北欧の取材で現地の飲食店などに入ると、2mを下回るくらい低くライトがつり下げられている印象もあります。

 

筧:室内灯として利用する場合は同じく2mの高さにつるしておけば安心です。

 

ただし、テーブルなどの上につるす場合は机の面から60~80cmの高さにつるします。傘の形によってまぶしさも変わりますから、その場その場で調整します。

掛ける「高さ」について。

――― 壁に掛ける際の高さはどうでしょうか。雑貨屋やカフェで絵画・ポスターを壁に掛けて販売する場合には何かルールがあるのでしょうか?

 

筧:壁掛けの絵画については、立ったお客さまを想定する場合、絵の中心が床上で150cmになるように調整します。

 

このアトリエに飾った絵画も床上から150cmの高さに絵の中心が来ています。

 

 

――― 奥の小さい絵画2点は中心の位置が高い気もしますが。

 

筧:はい。こちらは「ライン」で統一しておきました。

 

異なる大きさ・形の物を棚に並べたり壁に飾ったりする際に、どこか基準となるライン線を一本決めて、そのラインに沿って展示・陳列するとまとまりが出ます。

 

向かって左の絵画2つは目線の高さで調整されている。向かって右の絵画3つはラインで調整されている。額縁の上の線が基準線。

「ライン」については物を置く場合も一緒です。形の異なる物を同じ高さに並べればラインが強調され、まとまりが生まれます。

 

異なる大きさの絵画が棚の上の「ライン」で並べられている。キャンバスの下の辺が基準線。絵画の点数が偶数(4)のため、絵画を手前と奥で並べる「重なり」の技術も見られる。

「ビフォーアフタ―」を募集します。

――― 筧さんのアトリエで幾つかの構成・技術を実際に見せてもらいました。

 

ただ、冒頭でも話があったように、お店によっては展示・陳列する物も、展示・陳列できるスペースも全く異なります。ケースバイケースの部分がこの世界はどうしてもありますよね。

 

筧:そうですね。ビフォーアフターみたいな実例を見せられればいいのですが。

 

「うちのお店の陳列と展示を何とかしてくれ」という方を〈HOKUROKU〉さんで募集していただければ、やってみたい気持ちはあります。

 

 

――― 本当ですか? 筧さんが教えてくれた構成や技術を生かして、実際のお店の展示と陳列を劇的に生まれ変わらせるみたいなシリーズ企画は確かに楽しそうです。

 

筧:全く変わらなったらどうしましょう(笑)

 

――― ご謙遜(けんそん)を。そうすれば、今回は語れなかった什器(じゅうき)の配置など、陳列と展示のベースになるゾーニングの問題も深められると思います。

 

筧:そうですね。挑戦してみたい気持ちはあります。

 

――― それでは募集してみましょうか。生まれたばかりのメディアなので応募者が集まるかどうか分かりませんが。

 

せっかくなので福井ではなく石川や富山から応募があると筧さんにも広がりが生まれそうです。

 

 

筧:そういえば、坂本さんは富山からお越しいただいたのですよね。

 

――― はい。カメラマンの山本哲朗くんは石川の人です。

 

筧:北陸3県の人間が1つの空間に勢ぞろいしているわけですね。意外にこのような交流が北陸って少ない気がします。仲が悪いのでしょうか(笑)

 

――― そこは私、外から引っ越してきた人間なのでノーコメントでいきたいと思います(笑)

 

筧:運営メンバーの方々も皆さん移住者なのですよね。外の方の視点は地元の人間からすると新鮮で目からうろこが落ちる瞬間も多いです。

 

――― こちらはこちらで、よそ者を温かく受け入れてくれる印象が北陸の人にはあります。もっと保守的で排他的なのかなと思っていましたが意外でした。

 

これからも県境をまたいでお付き合いいただければと思います。今日は本当にありがとうございました。

 

筧:ありがとうございました。

 

 

(副編集長のコメント:明日からでも実践できる展示と陳列の法則を教えてもらいました。

 

最後の話題にもあったように、ディスプレーコーディネーターとして活躍する筧さんが皆さんのお店の展示と陳列を特別に演出してくれます。

 

「ぜひ、うちのお店を!」という方は問い合わせフォームからご連絡ください。応募者多数の場合は抽選です。ご連絡お待ちしております。)

 

文:坂本正敬
写真:山本哲朗
編集:大坪史弥・坂本正敬
編集協力:明石博之・博多玲子


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2.左右対称(シンメトリー)構成
3.左右非対称(アシンメトリー)構成
4.直線構成
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