RENEW × 立山Craftに聞く。地域を盛り上げる「人気イベント」の開き方。

2021.12.26

vol. 05

本質をつかみ、ビジョンを立ち上げ、仲間を増やし、小さく広げる。

写真提供:TSUGI。

 

――― 当日の運営体制についても聞かせてください。

 

RENEWも立山Craftも来場者が数千人・数万人に及びます。何人ものスタッフと連携して運営する必要があるはずです。

 

そもそもの疑問として、イベント当日はどれくらいの人数で運営しているんですか?

 

新山:50人くらいのスタッフで当日は運営しています。それぞれに役割とタイムスケジュールがあって、それを表にしてまとめています。

 

RENEWのスタッフスケジュール。(灰色部分は個人名)

 

――― すごく細かい表ですね。

 

新山:受付・飲食・トークイベント運営・来場者カウント・アンケート・オンラインイベント配信など、いろいろな作業を50人でシフトを組んで分担しています。

 

もちろん本人たちにもイベントを楽しんでもらいたいので自由時間も割り当てています。

 

ただ、先ほども言ったとおり僕は全く管理できません。事務局の森くんに全て任せて、自分はなるべくフリーに動けるようにしています。

 

――― 立山Craftはどうでしょうか?

 

佐藤:30人くらいのスタッフで当日は運営しています。実行委員とサポーターが居て、会場設営・受付、案内・写真・動画撮影・Instagram配信などで分担しています。

 

6時から18時まで実行委員は仕事がありますが、サポーターさんには楽しんでほしいので休憩を挟み7時間程度で収めるようにしています。

 

立山Craftのスタッフスケジュール。(灰色部分は個人名)

 

私自身の動きとしては、消防のチェックなど要の部分を担当します。あとは出店する作家さんに挨拶回りしたり、会場をチェックしたり。

 

何かあった時にすぐに対応できるように、なるべく自由に動けるようにしています。

 

――― この表を見ると実行委員とサポーターの他に「子」という欄がありますが、これはなんでしょう?

 

佐藤:これは子どもスタッフですね。うちの子とサポーターさんの子がスタッフとして参加しているんです。チケットのもぎりを担当したりしているんですよ。遊び場や簡単な作業をお願いしています。大して仕事はしてくれませんが(笑)

 

先ほどもお伝えしたように、次世代の担い手とクラフトファンを育てるためには子どものころからの関わる経験も大事だと思っています。

 

――― すごくいい経験ですね。自分のお母さんがつくっている企画を間近で見られる機会ってそうないと思います。

 

佐藤:そうですね。自分自身が立山Craftを続ける原動力の1つになっていますね。下の子が10歳になるくらいまでは続けたいと思っています。

 

――― お子さんがこのイベントを引き継いでくれるかもしれません。楽しみです。

「予算を確保するので来年はぜひ5万人を目指しましょう」

写真提供:RENEW。

 

――― イベント当日はトラブルもつきものだと思います。

 

今まで開催してきて最も大変だったトラブルについても教えてください。

 

佐藤:立山Craftの場合は駐車場問題ですね。

 

立山Craftの会場となる〈立山総合公園〉は臨時駐車場を含めても駐車できるのが600台程度です。3年目くらいに駐車場に車が入らないくらい来場者が増えました。

 

会場近くの道路に長い渋滞ができてしまい、警察から何度もお電話がありました。

 

シャトルバスを翌年から用意したので渋滞は改善されたのですが、コロナ禍の2年間はまたシャトルバスなしで開催となりました。そのかわり人数制限を設けました。

 

坂本:今年お邪魔した時も警察が来ていましたよ?

 

佐藤:そうですね。人数制限はあるものの時間帯によっては渋滞が発生してしまうのでまだ策は必要そうです。

 

――― 新山さんはいかがでしょう?

 

新山:今まで1番大変だったのは台風ですね。

 

2019年(令和元年)に台風19号が近付いていたんです。暴風警報が出たら中止と決まってはいたんですが、なぜかなかなかその日は警報が出なかったんですね。

 

しかしイベントをオープンした瞬間に暴風警報が出てしまいました。

 

会場にはお客さんがすでに結構来てしまっていたので、対応できる工房に案内したりとか、機転を利かしてツアーを組んだりもしていましたね。

 

あとは今回のコロナも大変でした。福井県の感染対策班に協力してもらって感染対策を徹底しました。

 

参加者全員に記録用のリストバンドを配布して、体温やどこから来たかを把握できるようにしていました。

 

佐藤:立山Craftも感染症対策で大変でした。オンラインチケットへの変更、来場者は富山県内の人限定、会場の人数制限、導線の一方通行化などを新たに行いました。

 

〈立山総合公園〉の駐車場へ入るために順番待ちする車の列。

 

あとは感染防止のために清掃業者さんを頼みました。今までにない費用でしたが、今は安心材料として必要な予算かと思います。

 

――― この対談時点では感染者数が少なくなっています。とはいえ多くのイベントがコロナをきっかけに体制変更が求められたと思います。

 

佐藤:ただ、プラスの側面もありました。

 

人数制限があったので来場者の皆さんは会場を快適に回れるようになりましたし、運営サイドとしてもこれくらいの参加者数の方が心地良く運営できる規模感だと分かりました。

 

ここまでは運営側がさばくのに手一杯で、イベントを広げすぎている感じもしていたので、いい気付きになりました。

 

写真提供:立山クラフト舎。

 

もちろん来場者は出店者さんの売上に影響するので、皆がちょうどいいと感じられる規模感を探るべきだと思っています。

 

それと、来場者さんの県内縛りは今年で最後にしたいですね。

 

――― 規模が大きくなりすぎても理想像とのギャップが出てくるわけですね。

 

そういったギャップを新山さんも感じた瞬間はありますか?

 

新山:うーん……。どうでしょう。規模を大きくした2017年(平成29年)の時ですかね。

 

その時の来場者は3日間で延べ4万2,000人くらいでした。

 

そこまで増えてきたからか、県庁の方から「予算を確保するので来年はぜひ5万人を目指しましょう!」といった申し出があったんです。

 

迷いましたがその申し出は断ったんです。

 

――― なぜでしょう? 僕なら飛びつきます。

 

新山:ものづくりの思いや背景を僕らは伝えたいわけです。

 

来場者が工房に殺到してしまっては、動物園のパンダ状態になってしまいます。その状況ではうまく伝わらないはずです。なので2017年(平成29年)の時点で人数制限も行っていました。

 

かといって人数制限で売上が下がりすぎる心配もないと思います。

 

コロナ禍で人数制限をかけて開催していた昨年のRENEWでも1社当たりの売上は過去最高になっていましたね。

オンラインの限界を感じました。

――― それはすごいですね。

 

「コロナ」をきっかけに映像配信などオンラインコンテンツに舵をきるイベントも多くありました。

 

RENEWや立山Craftでもオンラインのコンテンツをつくったり継続したりするつもりは今後もありますか?

 

佐藤:今年は、富山のブロガーさんに協力してもらってインスタライブで会場の様子を今年は配信したりしました。これはコロナがなければやらなかったのでいいきっかけになりました。

 

ただ対面開催に価値のあるイベントだと思っているので、今後も変わらずリアルなコンテンツ、現地での開催を続けていくつもりです。

 

新山:僕らもそうですね。配信などオンラインコンテンツを去年は頑張りましたが、今年は全部やめてしまいました。

 

運営スタッフが疲弊してしまったし、オンラインの限界を感じました。何より対面に価値があるイベントなので。

 

――― そうですね。私も幾つかオンラインのイベントに参加してみましたが、体験型のイベントはリアルにまだまだ及ばない部分があるなと感じました。

アウターブランディングとインナーブランディング。

写真提供:RENEW。

 

――― イベントの続け方について最後に聞かせてください。

 

イベントの立ち上げも大変ですが、続けていく方がもっと大変だと思います。

 

地域のイベントでは予算がない・来場者数が減る・立ち上げ時の主催者が不在になるなど、イベントが続かなくなるケースも多々あります。

 

7年間継続しているお2人から持続するイベントのポイントをお聞きしたいです。

 

RENEW2021のポスター。2021年(令和3年)10月開催が延期となり2022年(令和4年)3月11日(金)~13日(日)の開催となった。

 

新山:一言でまとめると、エンパワーメントですね。地域の熱量をどう醸成していくかがポイントで、僕らはそれにすごく時間をかけています。

 

持続可能なものづくりのまちを目指すというRENEWの大きなテーマは変わりません。

 

ただ開催ごとに目指す目標を決めていて、回を重ねるごとにハードルを上げているんです。

 

目標は、売上や工房の来場者数だったりします。毎年目標を決めると出店者さんの熱量やテンションが保てます。

 

目標を達成するために出店者向けにRENEW内でワークショップを開催したり、月に1回出店者同士が集まって各社の取り組みを共有する機会を設けたりしています。

 

一方で、来場者が減ってしまっても出店者の熱量が落ちてしまいます。先ほど言ったような来場者を増やす努力も地道に行っています。

 

県外のファンを増やすアウターブランディングと、地域の熱量を高めるインナーブランディング、この両輪を回すのが重要だと思います。

 

――― すごいですね。てっきり来場者が多ければ運営や出店者の熱量も勝手に保てるのかなと思っていました。

 

そこまでの取り組みを出店者に対してもしているとは知りませんでした。

 

新山:「鯖江を日本一の産業観光のまちにする」というビジョンを僕は今掲げているんです。そのための戦略を考えるワークショップを地域の企業と行ってもいます。

 

北陸新幹線の開通や関西万博の開催といったイベントも今後は控えているので、そこまでに目標値を定めてどんなアクションを起こすかを一緒に考えていくわけです。

 

そうした地域産業の底上げと未来につながる取り組みを〈谷口眼鏡〉の谷口さんやRENEWの運営メンバーと一緒にしています。

 

――― 佐藤さんはいかがでしょうか? 続けていくポイントがあれば教えてください。

 

佐藤:メンバーが、立山Craft自体を好きでいてくれる点、また広い意味で地域活性を望んでいる点、この2点が大きいです。

 

写真提供:立山クラフト舎。

 

普通に生活していたら接点がないであろうメンバーが一緒に動けている背景にはこの2点があるからこそだと思います。

 

また、一緒に食事する機会を意識して設けています。

 

――― そうですね。日常的なコミュニケーションがままならないのに一緒にプロジェクトを進めるなど困難だろうなと思います。

 

佐藤:出店者のモチベーションという意味では楽しい会場を心掛けています。

 

会場での生演奏の音楽は、スタッフも出店者さんもハッピーな気持ちにさせてくれます。

 

また立山Craftに来たいなと思える会場が理想ですね。

 

――― 立山Craftは去年も今年も僕は参加しました。

 

座れる場所が増えていたり、飲食の待ち時間が短くなっていたり、お世辞抜きで去年よりも快適な場だったなと感じました。次回も楽しみにしています。

誠実さと、お金は出してもらうけど口は出されない状況。

写真提供:立山クラフト舎。

 

――― ちょっと抽象的な質問を最後にさせてください。

 

地域で新たなイベントをこれから立ち上げる人にとって必要な資質はなんだと思いますか?

 

佐藤:「誠実さ」ですかね。

 

――― それは運営メンバーにとっても、出店者にとっても、地域での協力者にとってもですかね。

 

佐藤:はい、そのとおりです。

 

新山:僕はちょっと長くなりますが、「本質をつかみ、ビジョンを立ち上げ、仲間を増やしながら、小さく広げる」ですね。

 

イベント立ち上げってベンチャー企業に近いと思うんです。小さく始めて育てながら、みんなが乗っかりたくなる事業を展開するべきだと思うんですよ。

 

RENEWで新しく取り組む企画にあたって予算が足りなければ、県や市でも予算を付けるというか、投資を検討してくれる状況に実際今はなりつつあります。

 

RENEWにお金を付けておいた方が結果が残せるみたいな雰囲気です。

 

これって、ベンチャー企業が大企業に投資される状況に似てると思います。

 

自分たちの生み出す何かの価値を高めて投資を募り、自分たちが動きやすい環境をつくる。

 

お金は出してもらうけど口は出されない状況はとても重要です。

 

これからイベントを立ち上げる人たちは、自腹で企画をまずは立ち上げ、その価値を高めて、自分たちが主導権を持った状態で投資してもらえる流れをつくるといいと思います。

 

佐藤:確かに。立山Craftも最初から行政が絡んでいなかったのが良かったなと思っています。今でも自分たちでコントロールできる状況です。

 

坂本:イベントとは違いますが、HOKUROKUの今後の運営でも大いに参考にさせてもらいます。どうもありがとうございました。

 

――― もう時間となりましたので、最後に言い残したメッセージがあればお願いします。

 

新山:立山CraftにしてもRENEWにしてもそうですが、最初の当事者は作家さんや職人さんです。

 

イベントがスケールしてくると、そのうち違うジャンルの人たちが関わってくれると思います。

 

コンセプトがズレるなどといった理由でそれらを排除するのではなく、どんどん取り込んでいったらいいと僕は思います。

 

そうした人たちの関わりで新しい方向へのスケールが見えてきますし、関わってくれる人が増えれば最終的に地域へ利益が返ってくると思います。

 

佐藤:そうですね。イベントはいろんな人との縁をつないでくれます。

 

イベントの主催は大変ですが、新たな出会いや可能性を生んでくれるので、今から企画される方はぜひ頑張って欲しいです。

 

――― ありがとうございます。国内の「コロナ」の感染状況も落ち着きつつあります。

 

少しずつリアルなイベントも開催しやすくなってきました。

 

この特集を読んで新しい一歩を踏み出す人が増える日を願っています。

 

お2人とも今日はありがとうございました。

 

(編集長のコメント:イベントは、いろいろな人との縁をつないでくれるみたいです。当事者の人生にとってこれ以上の財産はないかもしれませんね。

 

思い切って何かを始めれば、今までの人生ではありえなかった人とのつながりが生まれる点は、きっと間違いありません。

 

絶対に見られなかった景色も見えてくるはず。なんだかよく分からない相談話も次々と持ち込まれ始めると思います。

 

そうした日々を粛々と歩みながら、コアの部分でぶれずに続けていれば、そのうち誰にも似ていない何者かになれるのかもしれませんね。例えば新山さんだとか、佐藤さんのような。

 

直近だとRENEWは年明けの3月に開催が控えています。

 

RENEWにまずは足を運んで、その後に来る立山Craftにも訪れて、新山さんや佐藤さんに会場で声を掛けてみてはいかがですか?

 

皆さんが予定しているイベント開催に向けて、きっと大きな刺激をもらえるはず。

 

北陸に暮らす人間として、北陸のウェブメディアHOKUROKUを運営する編集長として、読者の皆さんが開催する未来のイベントに足を運べる日を今から心待ちしています。

 

皆さんが主催するイベント会場で私も挨拶させてください。では、またその日まで。)

 

文:大坪史弥

写真:大坪史弥・坂本正敬・山本哲郎

編集:坂本正敬

編集協力:明石博之・武井靖

この記事を書いた人

Avatar

関連する記事

オプエド

この記事に対して、前向きで建設的な責任あるご意見・コメントをお待ちしております。 書き込みには、無料の会員登録、およびプロフィールの入力が必要です。