片手間では済まされないので。THE「愛されるSNS」論。(後編)

2021.03.27

vol. 05

SNS担当者は役得なポジションだと思う。

 

大坪:ここまで、公式SNSの運用について、さまざまな議論を重ねてきました。

 

座談会もかなりの時間になってきたので、そろそろ締めに入りたいと思うのですが、SNSは多くの人に情報を届けられる反面、投稿の思わぬ部分で反感を買い、炎上する危険性もあります。

 

そこでSNSのリスクについても、やはり話しておきたいと思います。

 

日の出屋:確かに、ここまで話しておいて言うのもなんですけど、SNSってちょっと怖いですよね。

 

たくさんの人が見ていますし、投稿をどんな風に捉えられるかも分かりません。

 

大坪:そうですね、ちなみに、皆さん炎上した経験はあるんですか?

 

企業一同:ないですね。

 

大坪:そうですね。今まで話を聞いてきて、皆さんが炎上するイメージがわきません。

 

高橋さんは複数の企業アカウントを代行されています。その分だけ、単純に確率の問題で最もリスクにさらされていると思うのですが、炎上経験はありますか?

 

高橋:私もないですね。ただ炎上ではないんですが、トラブルは聞いたことがあります。

 

ある企業の公式アカウントが深夜1時にSNSで投稿して、労働局から調査が入ったという話です。フォロワーさんから労働局に連絡でも入ったんでしょうかね。

 

 

そうしたモラルには、念のため気を付けた方がいいのかなと思います。

 

大坪:なかなかレアケースですね(笑)タイミングも気にしないとですね。タイミングと言えば天災、人災があった時に自粛する企業も多いです。

 

チャンカレ:そうですね。もし、そうした状況になった場合、私は二択ですね。

 

 

もし弊社が何かしら関係している出来事であれば、いつものおちゃらけた感じではなく、誠心誠意をもって対応します。そうでなければ、その話題には触れません。

 

ハチコ:うちの場合、新型コロナウイルス感染症の影響は大きいです。

 

 

SNSに営業情報を投稿してしまうと、「お店に食べに来い」と受け取られてしまうんじゃないかと思い、怖くてなかなか発信できない時期がありました。

 

内容にはかなり気を遣って、ひたすらテイクアウトに関して投稿し続けていましたね。

 

それだけ配慮しても、やはり「こんな時期に店に来いと言うのか!」といったお怒りのコメントもありました。受け取り方は本当に人それぞれです。SNSに限らず、テレビCMもやはり気を遣いますね。

 

日の出屋:弊社も実店舗を運営していますし、皆さんと同じく「食」を扱います。投稿内容についても、事あるごとに衛生環境や感染対策について発信しますね。

辛らつな意見が辛いのなら、無理にSNS担当をやるべきじゃない。

 

大坪:たくさんの人が見ている中で、影響力のあるSNSを運用する皆さんだからこそ、神経をすり減らしたりする瞬間もあると分かりました。

 

ハチコさんに届いたおしかりの声のように、思わぬところで強い言葉が来る場合もあると思います。

 

そこで率直な質問なのですが、SNSを辞めたいと思った瞬間はありませんか?

 

チャンカレ:無いです。全く無いです。

 

ハチコ:私も無いです。

 

日の出:私もですね。

 

大坪:皆さん即答ですね。正直ちょっとくらいあるかと思いました。高橋さんもみーもぐさんもないですか?

 

高橋:うーん、私はクライアントさんのアカウントの成長が楽しいですし、プライベートは非公開アカウントなんで、特にはないですね。

 

大坪:質問を間違えたようですね。

 

 

みーもぐ:私は、ありますね……。

 

大坪:みーもぐさんあるのですか? それはどんな時だったのでしょうか? 差し支えない範囲で、教えてもらえますか?

 

みーもぐ:〈YouTube〉を始めた時ですね。YouTubeでは顔を出して、飲食店での「食レポ」動画をアップしています。

 

初期は動画にちょっと意地悪なコメントが付いたりしたんです。

 

容姿について言われたり、「食べる時に手をふけ!」と言われたり。手をふいてる部分はカットしているだけなんですけどね。

 

Instagramだけをやってた時はすごく平和だったので、こうしたコメントが付くのに慣れていなくて。

 

1日くらいで立ち直りましたが、SNS辞めようかなと思っちゃいましたね。

 

大坪:なるほど……。自分の意思でやっているとは言え、顔の見えない匿名の相手に辛らつな言葉を言われると、きついと思います。

 

企業の皆さんは会社としてSNSを運用されているので、みーもぐさんとは少し状況が違うかと思います。

 

ただ、皆さんもお客さまにとって、一番気軽に声を掛けやすいポジション、裏を返せばあらゆる意見が集中しやすいポジションかと思います。

 

もちろん集まる意見に、ネガティブなコメントが含まれている場合だってありますよね。

 

そうした時は、どのように気持ちを整理しているのですか?

 

 

チャンカレ:まぁ、ネガティブなコメントが個人的で理不尽なら、それはもう完全に無視ですよ。気にしてたらキリがありません。

 

高橋:強い(笑)

 

チャンカレ:例えばですね、私が「お前のところのカレーはどうしてターメリックライスを使わないんだ!なっとらん!」とフォロワーから怒られたとしましょう。

 

しかし、今のチャンピオンカレーにとって、すぐにライスは変えようがありません。ではターメリックライスを出すカレー屋に行ってください、というだけの話です。

 

一方で、こちらに落ち度がある場合や、商品の改善に関する意見は当然、誠実に対応します。むしろそうした機会はありがたいですからね。

 

SNS担当は意見が届きやすい場所です。もし、そうした辛らつな意見が辛いというのであれば、無理にSNS担当をやるべきじゃないと思います。

 

SNSは見たい人が、自分で判断して見たい情報を得る場所です。全ての意見にセンシティブになる必要はないと思います。

 

大坪:なるほど。お客さまの意見は大事ですが、全部が全部に敏感である必要はないですよね。

 

同じ飲食業界としてハチコさんはどう思いますか?

 

 

ハチコ:人によって口に合う、合わないはありますからね。「8番まずい」といった投稿も見掛けますし、直接コメントが届く場合もあります。しかし、仕方ないなと思います。

 

ただ、8番の場合、直接届くコメントって愛情があるんですよ。直接コメントを寄せてくれるような方って、大体8番らーめんに長年来てくれているお客さまなんです。愛があるからこそ、あえて言いたくない苦言を言ってくれている印象です。

 

だから私たちも当然、愛を持って返すべきだと思いますね。たまたまSNSというだけで、店舗での接客と本質は変わりません。

 

内容によっては関連部署に連絡したりしますが、お客さまには必ず私から返答します。皆さん8番らーめんのフォロワーですが、意識の上ではSNS担当である私の大事なフォロワーという思いでやっているので。

 

もし、返答するのが私じゃないとしたら「あのフォロワーさん、いつも塩バターにラー油たっぷりが好きなんだけど、わかってるかな」って心配になっちゃいますね(笑)

 

大坪:その言葉いいですね。ハチコさん一人で運用してきたからこそ言える言葉だと思います。

 

単なる悪口と愛のあるクレームを見分ける、支えてくれているフォロワーさんは誠実に対応する、この2点が大事な気がしました。

 

大坪:逆にSNSをやっていて良かったと思う瞬間はありますか?

 

日の出屋:そうですね。お客さまとの交流ももちろんなのですが、こうして他の企業さんとコラボする接点が生まれる時は、SNS担当をやっていて良かったなと思いますね。

 

以前、富山県高岡市にある靴下を製造・販売する助野株式会社さんとコラボキャンペーンさせてもらったんです。

 

 

もともと、会社同士でお付き合いはありましたが、弊社がSNSに取り組むようになって、新しい形で共同企画が実現しました。

 

大坪:確かに、他社との交流のしやすさはSNSの良さですよね。

 

「お世話になります」なんて、堅苦しいメールのやりとりより、フランクなSNSのコミュニケーションからの方がコラボレーションは生まれやすいように思います。

 

ハチコさんが「やっていて良かった」と思う瞬間は、どんな時でしょうか?

 

ハチコ:瞬間、というよりはほぼ毎日ですね。

 

商品を紹介する投稿をすると、フォロワーさんから「食べてきたよ」とか「おいしかったよ」といった感想がすぐに届くんです。

 

商品の写真や、レシートまで付けて送ってくれるんです。本当に心から感謝しています。

 

SNS担当ってすごく役得なポジションだと思うんです。こうしたうれしい反応をたくさん受け取って社内に渡せるので。

 

「こんなにいい思いを自分だけがしていいのかな?」とすら思います。

 

大坪:レシートまで付けて送ってくれるんですか(笑)

 

 

店舗ではなかなか言えない思いも、SNSなら伝えやすいですもんね。厳しい意見などもあるかもしれませんが、喜んでくれるお客さまの声を1番に受け取れる立場は、役得といえるかもしれません。

 

最後にチャンカレさんいかがでしょう?

 

 

チャンカレ:私も今ハチコさんが言った通りの思いです。お客さまからの「おいしかった」の投稿を見ると、やはりうれしいですね。

 

あと、商品だけじゃなく、日常的なやりとりでもSNS担当やっていて良かったとよく思います。

 

特に印象に残っているエピソードは、私がチャンピオンカレーに転職した時です。

 

前職は金沢市内の旅館〈川端の湯宿 滝亭〉に勤めていました。そこでもTwitter担当をやっていて、フォロワーさんとの交流も多かったんです。

 

そこからご縁あってチャンピオンカレーのTwitter担当として転職したのですが、勤務初日に「チャンカレに移籍しました」とツイートしたんです。サッカー選手の移籍みたいな感じですね。

 

チャンカレさんの転職を知らせるツイート。前職では「トニデキ」の愛称で親しまれていたそう。

その上で、チャンピオンカレーのTwitterで転職を知らせると、前職時代のフォロワーさんも、今の会社のフォロワーさんも、たくさん歓迎のコメントをいただきました。

 

あの時は、うれしかったですね。

 

大坪:めちゃくちゃいい話ですね。フォロワーさんもすてきですし、こうしたコミュニケーションを認めているチャンピオンカレーさんも滝亭さんも素晴らしいと思います。

 

両社の間でSNSの交流があるからできたのですよね。

良くも悪くもそこまでSNSを深く考えてない。

大坪:それでは、いよいよこれが最後の質問です。

 

北陸でSNS運用を担当している全ての「中の人」たちに向けて、ご自身が大切にしている「愛されるSNS」のポイントを教えてもらえますか?

 

 

高橋:実際のお店で接客するようにコミュニケーションするといいと思います。

 

SNSはオンラインでの「接客」だと考えています。トレンドやフォロワー数アップに必死になるのではなく、実際に店舗に来てくれるであろうお客さまの顔を思い浮かべて、その人に話し掛けるように投稿すると響くと思います。

 

 

チャンカレ:私は「楽しかったらええやん」くらいの精神ですかね。

 

私は良くも悪くもそこまでSNSを深く考えてないんですよ。投稿する方も見てる方もお互いに楽しければいいなと思っています。

 

SNSの目的を突き詰めると「自分を知ってもらいたい」と「相手に楽しんで欲しい」の2点に集約されると思うんです。

 

無理に頑張らず、お互いに楽しくコミュニケーションしていれば、その目的は自然に達成されるのかなと思います。

 

 

ハチコ:私は2点あって、1つは「自分が嫌なコミュニケーションはしない」です。自分がフォロワーだとして、タイムラインにゴリゴリのPR内容ばっかり流れてきたら嫌じゃないですか。なので、私も、おしゃべりするように投稿しています。

 

もう1つは「誰が読んでも同じように伝わる」です。「伝える」と「伝わる」って大きく違うと思います。自分が伝えたつもりでも、相手には違う意味で伝わる場合はよくあります。

 

なので投稿する前に時間をかけて推敲し、誰が読んでも同じように伝わるように心掛けています。せっかく頑張って伝えても理解してもらえないと意味が無いですからね。

 

 

日の出屋:私はSNSの投稿ボタンを押す前に一度、深呼吸して見直すようにしています。

 

もし家族や友人が見たときに、どう思うかを想像するんです。悪いノリや感情に任せて投稿すると、トラブルにつながるリスクもありますからね。

 

アカウントの人柄も大事だけれど、決して誰かを傷つけたり、嫌な思いをさせたりしてはいけない、そう思っています。

 

 

みーもぐ:私も先ほどのチャンカレさんと同じく、あえて「あまり深く考えない」を大事にしています。

 

フォロワーが増えると変に「こんな風に振る舞うべきor振る舞ってはいけない」みたいに考えてしまうのですが、一個人としてあまり考えすぎず、ありのままコミュニケーションを心掛けています。

 

その方が親近感もわくし、結果としていいのではと思ってます。

 

大坪:皆さん、数々の金言をありがとうございました。今からSNS運用を始める人も、すでに運用している人にとっても、参考になる話が多く聞けたと思います。

 

これからもこうやって北陸の「中の人」たちが集まって、コラボのきっかけが生まれる場がつくれるといいなと思います。

 

今はコロナで難しいですが、チャンカレさんの「チャンカレミートアップ」の北陸版が開催されるとうれしいなと思います。

 

まずはハッシュタグ「#なんでやろ」で、あるあるネタをつぶやきながらつながっていきましょう。

 

ハチコ:あ、それ本当にやるんですね(笑)

 

大坪:もちろんです。

 

(一同、笑う)

 

(編集長のコメント:いい会でしたね。読み終わって、率直に思いました。

 

〈HOKUROKU〉はウェブメディアですが、認知度の高いウェブメディアで数百万回クリックされるヒット記事を連発しても、現実の世界を何1つとして動かせていなかった私個人の苦い経験から、地に足の付いた、現実の世界と深いかかわりをもったメディアをつくりたいと思って、創刊しました。

 

座談会の様子を読んで、その理想にまたほんのちょっとだけ、今回の特集づくりで近付けるかもしれないと思いました。

 

座談会に参加してくれた皆さんのつながりも生まれたはずですし、前編を読んで「いい特集を組んでくれた」とお褒めの言葉を寄せてくれた他のSNS担当者も少なくなかったので。

 

企業のSNS担当者もインフルエンサーも一般の読者も、皆で面白がりながら協力して、「チャンカレミートアップ」の北陸版のようなすてきなイベントが、日常的に開かれる世の中を北陸につくっていきましょうね。)

 

文:大坪史弥

写真:武井靖

編集:坂本正敬

編集協力:明石博之、中嶋麻衣

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