北陸に足りない。名人・大田さんに学ぶ「褒める」技術と言葉と効果。

2020.06.19

No. 05

照れくさい相手は文字に書いて褒める。

取材と並行して行われた褒める技術のワークショップの様子。※ワークショップは新型コロナウイルス感染症の感染拡大の前に行われました。

――― いよいよ最後の章です。

 

リアクションの大事さ、褒められ上手になるコツ、褒めるポイントを今までに学んできました。

 

しかし、どれだけ学んでもなかなか褒められない相手っていますよね。夫だったり妻だったり自分の父親だったり母親だったり。最も近い関係にある人たちです。

 

大田:親しい人こそ一番褒めていない人は多いのではないでしょうか。しょっちゅう会っているし言わなくてもいいでしょと。

 

 

今こうして「褒める技術」などと偉そうに語っている私も同じです。

 

夫は大阪育ち。私は富山育ち。他の人には明るく褒められるのにだんなには照れがあって褒め言葉を言えていませんでした。

 

でも、だんなはきちんと褒めてくれる人でした。例えばこんなエピソードもあります。

 

結婚して1年目にだんなの家族が大阪から富山へ遊びに来て2泊3日で滞在してくれました。

 

その家族を見送った直後にだんなは姿勢を正して「ありがとう」と私に言ってくれました。

 

何を言っているのか最初はちんぷんかんぷんでした。なにしろ私の実家では誰もお母さんに感謝などしません。親戚の人とかが集まってもお母さんは働くのが当たり前でした。

 

そんな日常で育ったのでなぜ私に夫が感謝しているのか分からず、照れくささもあって上手にリアクションできませんでした。褒められ上手とは程遠い状態だったのですね。

 

いつもつれないリアクションを私はしていました。すると、先ほどの社長さんの例と一緒ですね。関西人で褒め上手だったはずの夫も自然に褒めなくなっていきました。

 

――― そのエピソードだけでもリアクションの大事さがあらためて分かりますよね。

 

大田:夫が褒めなくなってくると、なんだか関係もぎくしゃくし始めました。けんかしても意地を張って謝れない私が居ました。

 

そんなある日の出来事です。「夕方遅くなるよ」との電話がだんなからありました。その当時は、子育ての真っ最中でした。「また遅くなる!? 知らん!」と腹を立てて電話を切ってしまいました。

 

――― 自分にはまだ子どもが居ませんが、なんとなく気持ちは分かる気がします。

 

 

大田:その日の夜中に警察から電話がありました。

 

――― 警察から?

 

大田:はい。耳を疑うような言葉でした。

 

――― 何でしょう。

 

大田:交通事故で夫が亡くなったと。

 

――― ……。

 

大田:「また遅くなる!? 知らん!」が私たち夫婦の最後の会話になってしまいました。

 

浄土真宗の蓮如上人(れんにょしょうにん)が「朝には紅顔ありて、夕には白骨となれる身なり」との言葉を残しています。

 

「行ってきます」と元気に言って出掛けた人が骨になって帰ってくるなんて本当にあるんだと知りました。

 

だんなのいいところを誰よりも知っていたはずなのに一言も伝えてあげられませんでした。人生の中で一番の後悔です。

 

――― 悔やんでも悔やみきれないかもしれません。自分なら。

 

大田:恥ずかしくて身近な人を褒められないという人の気持ちも分かります。ですが、私のように後悔してほしくもありません。

 

だから「身近な人を褒める」を皆さん頑張ってみませんか? 今回のテーマに対する私なりの一番のメッセージです。

文字から始めたっていい。

ワークショップの様子。※参加者からは写真掲載の許諾を得ています。

大田:もちろん、すぐには伝えられないとも分かっています。今まで続いてきた関係がありますからね。

 

――― はい。関係性を変えるとなると本当に大変です。

 

大田:そんな人にお勧めな方法は文字に書いて褒めるです。

 

――― 文字に書いて褒める……。ごめんなさい。話の展開がちょっと急すぎてインタビューを続けられません。少し深呼吸していいですか。

 

大田:すみません。予告もせずにいきなりお伝えして失礼しました(笑)

 

――― いえいえ。はい。オッケーです。ええと、文字に書くですね。

 

 

大田:はい。夫とのけんかが続いたとき「交換日記すれば?」と友達が言ってくれたので始めてみました。

 

交換日記にするとなんだか感謝の気持ちも伝えやすいですし褒め言葉も書きやすくなります。

 

――― 自分の頭の中で考えを反すうしてから文字にしたためるので確かに言葉が柔らかくなりますよね。手書きの筆跡は感情が伝わりやすいですし形にも残ります。

 

大田:交換日記に限らずお手紙でもメモ書きでも何でも形は構いません。

 

――― 最も近しい人を褒める際のハードルは文字にして乗り越えてみようと。

 

大田:はい。何があっても後悔しないように。身近な人のいい面は一番近くに居る皆さんが一番知っているんですから。

 

――― そうですよね。

 

大田:一番近くに居る人が逆に自分を褒めてくれたら大きなリアクションと大坪さんの言う「あいうえお」の言葉を忘れないように、ですね。

 

自分から頑張って行動すれば、褒める・褒められるがあちこちで見られる、すてきな関係がスタートするはずです。

 

――― 今から自分も大切な人を褒めに行きたいと思います。そろそろ約束の時間が来てしまいました。

 

大田:冒頭で話題に出た「大田さんの会」の話、時間が足りませんでしたね(笑)

 

――― そうですね。また別の機会に詳しくお願いします。本日は本当にありがとうございました。

 

大田:ありがとうございました。

 

 

編集長のコメント:大切な誰かを今から褒めに行きましょう。おしまい。)

 

文:大坪史弥

写真:柴佳安(yslab)

編集:坂本正敬

編集協力:明石博之・博多玲子・中嶋麻衣

大田さんの「別の顔」であるウグイスに関係する会。LINEのグループチャットをつくって意見交換するなど支援を受けた議員たちと大田さんの交流は選挙後も続いている。その集いを「大田さんの会」と呼ぶ。ちなみに大田さんは豊富なキャリアからウグイスの養成レッスンも開講している。https://peachrosefool.wixsite.com/uguisu

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